シネマ・ジャンプストリート

劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

☆7『DUNE/デューン 砂の惑星』

『DUNE/デューン 砂の惑星』


~あらすじ~
人類が地球以外の惑星に移り住み宇宙帝国を築いた未来。皇帝の命により、抗老化作用のある秘薬「メランジ」が生産される砂の惑星デューンを統治することになったレト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は、妻ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)、息子ポール(ティモシー・シャラメ)と共にデューンに乗り込む。しかし、メランジの採掘権を持つ宿敵ハルコンネン家と皇帝がたくらむ陰謀により、アトレイデス公爵は殺害されてしまう。逃げ延びたポールは原住民フレメンの中に身を隠し、やがて帝国に対して革命を決意する。(シネマトゥデイ引用)




7/10★★★★★☆☆

以下 レビュー(ネタバレなしです!!)

【作品背景】

やってきました『DUNE』。

原作は1965年に発表されたフランク・ハーバートによるSF小説で、壮大な物語と世界観から一世風靡したシリーズです。

この小説の映画化が、なぜ話題になるのかというとその背景にあります。

当時、映像化不可能と言われていた世界観を、1970年代に『エル・トポ』などでカルト的な人気を誇るアレハンドロ・ホドロフスキー監督による映画化の企画が進行します。

彼が練り上げた壮大な構造と、人としての魅力に、新進気鋭のSF画家、アーティスト、特殊効果技師などのクリエーターが集まります。

彼らによって更に練られたプロットや絵コンテが一冊の本に纏められた、撮影に向けて出資してくれるスタジオを説得にまわったのですが、多大な予算と10時間にもわたる上映時間、そしてホドロフスキー監督の型破りな手腕にGOを出すスタジオは現れず頓挫しました。

しかしこの映画の構想は、二つの観点で、後世に大きな大きな影響を与えました。

一つは、DUNEの為に集まって解散したクリエイターが、この作品を通してインスパイアを受けて練り上げた構想を、その後の作品で遺憾無く発揮する事で映画のビジュアルを大きく変えた為です。

その代表例がリドリー・スコットの『エイリアン』で、DUNEの解散で行き場を見失ったクリエイターの多くがこの作品で再集合し、あのビジュアルと世界観を作り上げました。

そしてもう一つが、プロットや絵コンテが一冊の本の存在です。

この本はあらゆるスタジオに残された為、例えばその数年後に映像・デザイン革命を起こした『スターウォーズ』は、この本がら多くのシーンの着想を得たと言われています。

それらの作品や絵コンテ本の存在は、連鎖しながら影響を与え続けている為、ホドロフスキーが練り上げたDUNEは、未完成ながら大きな大きな影響を残したとして、伝説的扱いを受けている訳です。

そんな本作、実はその後に1度、映画化にこぎつけた作品があります。

それが、デヴィッド・リンチによる1984年の『砂の惑星』です。

しかし、この作品は大きなスケールの作品を一本にまとめた為、原作の良さを活かせているとは言えず、一般的には失敗作と言われてしまっていました。

そして2021年、ホドロフスキーの構想から40-50年経った今、『メッセージ』や『ブレードランナー2049』、『ボーダーライン』のドゥニ・ヴィルヌーブ監督によって映画化されるのが本作です。

壮大で抽象的な映像表現と、その抽象性を活かしたストーリーテリングが巧みなドゥニ・ヴィルヌーブ監督が、本作をどのように料理しているのか、非常に楽しみでした。

また、本作は2部構成の前編であり、本作で物語が完結する訳ではありません。


【レビュー、感想(ネタバレなし!)】

一つ前にレビューした『007』同様か、それ以上に賛否が割れていますね。

本作の抱えてるミッションって、非常にハードルが高いと思っています。

というのも、公開するはずであったホドロフスキーよDUNEの構想が、プロットやデザインという様々な観点で、今の映画の在り方に大きな影響を与えてしまった為、ブーメランで帰ってきた既視感を超える何かを提供しないと、「ありきたり」という感想になってしまう為です。

また、本作の壮大な物語を映画に落とし込むにあたって、映画の2時間30分という尺の中で、その面白さを表現できるのか?という観点もあります。

そのような観点でどうだったか...

まず、ドゥニ・ヴィルヌーブ的な色彩感を落とした壮大な映像描写とハンス・ジマーによる音響、それらによって演出される世界観は、素晴らしかったです。

そして、そこに主人公の暗示的で抽象的な心象描写が重なる事で、全貌が見えないスケール感のある問題と、パーソナルな問題が並走していきます。

これが作品の良い意味で掴みきれない世界観を作っていて、ドゥニ・ヴィルヌーブの作品だなと思いました。

『メッセージ』に関しても同じ構成で出来ていて、最終的にその抽象的な「マクロ視点」と「ミクロ視点」が化学反応を起こして、全体像をクリアにする鳥肌物の傑作でした。

そういうた意味で、本作は2部構成のうちの序章に過ぎず、掴みきれない世界観の提示という所だけで物語が終始しています。

その世界観に関して、前述したように確かに素晴らしいのですが、ブーメランで帰ってきた既視感を超えるインパクトには至ってないし、2時間半のあいだずっとその要素の強調だけが前に出てくる為、個人的にはクドくて、とっつきにくさだけが過度に残る作品に観じてしまいました。

二部構成なので、二作目を見るとまた評価が変わる可能性はありますが、直ぐに公開されるどころか、まだ製作が決まっている訳でもないそうです。

そういった意味でも、一作だけでも楽しめる映画になっていて欲しかったのですが、「ブーメラン的な既視感」と「壮大な物語に対する映画の尺」という観点から、そのハードルをクリアする事は失敗に終わったと言って良いのかなと思います。

とはいえ、絶賛してる人は絶賛してますし、世界観の提示が素晴らしいって所に否定は出来ないので、是非見て頂いて、色んな意見を聞かせて頂きたいです。

  1. 2021/10/21(木) 16:47:17|
  2. 2021年公開映画
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☆7『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』



~あらすじ~
諜報(ちょうほう)員の仕事から離れて、リタイア後の生活の場をジャマイカに移した007ことジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、平穏な毎日を過ごしていた。ある日、旧友のCIAエージェント、フェリックス・ライターが訪ねてくる。彼から誘拐された科学者の救出を頼まれたボンドは、そのミッションを引き受ける。(シネマトゥデイ引用)




7/10★★★★★☆☆

以下 レビュー(ネタバレなしです!!)

【作品背景】

約6年ぶりに帰ってきた「007」!!

英国秘密情報部のエージェント ジェームズ・ボンドを描くシリーズで、1962年の『007/ドクター・ノオ』から始まり、実に本作で25作目になります。

そんな25作の中で、6代目ジェームズ・ボンドを務めるのがダニエル・クレイグ

彼がボンドを演じるのは、2006年『カジノ・ロワイヤル』、2008年『慰めの報酬』、2012年『スカイフォール』、2015年『スペクター』に次いで5作目であり、その前とは全くストーリーが繋がらない為、実質この5作品でダニエル・クレイグ版007は閉じていると言って良いと思います。

本作が、そんなダニエル・クレイグ版シリーズの最後の作品になっています。

2006年の抜擢当初は、「金髪」「筋肉質で背の低い体型」や「青い目」など、外見的な面でこれまでのボンド像とかけ離れていた為、かなり非難されていたのですが、今ではすっかり定着、そのシリーズが終わりを迎えるのは、かなり感慨深いです...


監督を務めるのが、『ジェーン・エア』やnetflixドラマ『マニアック』などの日系アメリカ人のキャリー・ジョージ・フクナガ。

大抜擢って言って良いですよね。


ただ、この映画制作過程で紆余曲折あって、当初は『トレインスポッティング』や『スラムドッグ&ミリオネア』のダニー・ボイルが監督予定でしたが、制作側と意見が降板し、キャリー・ジョージ・フクナガ監督が登板する事に。

また、それ以外にも呪われていて、撮影中にダニエル・クレイグが大怪我をしたり、スタジオで爆発事故が起こったり、挙げ句の果てにはコロナで公開が延期になったり...

観れるだけ感謝ですね!


また、新たな敵役に『ボヘミアン・ラプソディ』のレミ・マレックや、前作に引き続きレア・セドゥ、新たなボンドガール候補にアナ・デ・アルマス、加えてお馴染みのQベン・ウィショー、Mレイフ・ファインズ、更に新たなエージェントとしてラッシャー・リンチらが出演。
ビリー・アイリッシュが主題歌を担当する事でも話題になっています。



【レビュー、感想(ネタバレなし!)】

めちゃくちゃ、賛否が割れていますね。

個人的には割れる気持ちは分かりつつも...「良く出来た作品でも無ければ、貶す作品でもなくない?」という感情です。


まず、ダニエル・クレイグ版007を振り返りつつ、本作の感想レビューに入っていきたいと思います。

このシリーズの最大の特徴って何だろうって考えた時に、現代をベースにリセットした時代設定で、そこにマッチしたジェームズ・ボンドを再定義した所にあると思っています。

これまでジェームズ・ボンドは、男性の憧れであり、シンボル的な存在として描かれ、荒唐無稽な敵のキャラクター、アクション、ガジェットや、セクシーシンボルとして利用されるボンドガール女性の扱いが中心にありました。

ダニエル版としては、それらは今の時代で描くにはノイズが多くなってしまう事も踏まえて、シリアスでリアルで身を削りながら戦うアクション、共闘する存在としてのボンドガールの描き方など、007のコンテンツのキャッチーさを随所に残しながらも現代の価値観にアップデートさせてきました。

一作目の『カジノ・ロワイヤル』は、そんな新しい造形と、カジノという舞台の活かし方、哀愁漂うクライマックスの切れ味含め、大傑作で完全に批判を払拭した訳ですが。

そんな中で『ダークナイト』の影響をもろに受け、破壊的想像という観点で行くともまで行き着く哀愁に「ファンタジー的な映像美」が足し合わされた3作目『スカイフォール』は大絶賛の嵐で、このダニエル・クレイグ版が伝説のシリーズになっていった訳です。

そして前作の『スペクター』、ダニエル・クレイグ版で全てに共通して描かれた大ボス的な存在との決着が描かれ、スパイ映画の物語としては一通り結末を迎えます。


そんな中での5作目本作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』

前作で完結していた筈、何故必要だったのか??

このダニエル・クレイグ版007の特徴の一つに、長年続くシリーズで初めて、作品を跨いでボンドという1人の人生を捉えた構成になっています。

そんなシリーズだからこそ、敵対構造ではなくて、ボンドという人間の生き様を描ききる為に撮られたのが本作で、それが如実に前に出た作りになっています。

賛否両論の中に、物語と閉じ方に批判が集まっている部分もあるのですが、個人的には全然そこは批判ポイントにないです。

ダニエル・クレイグ版ボンドの「愛と哀愁」といアイデンティティにこの展開はめちゃくちゃハマっていて、シリーズ最高にエモくて号泣しちゃいました。


ただし...だからこその批判ポイントがあります。

そんな「ボンドの物語」を描こうとした結果、一つのスパイ映画としてはめちゃくちゃ歪でモヤる所が多々出てしまってるのです。

一番大きいのは、メインの敵キャラでレミ・マレック演じるサフィンの造形にあります。

たしかに彼のお面や、日本の宗教的な本拠地の描かれ方、佇まいの雰囲気なんかはめちゃくちゃ怖いし、何より彼の「武器」の残酷さは、エモさの最大の要因になったりしています。

ただ、ボンドや、レア・セドゥ演じるマドレーヌへの執着は、バックボーン含めかなり伝わってくるのですが、彼のテロ行為への目的がめちゃくちゃ遠くの方にしか見えないんですよね。

彼の不気味さを強調する為って意見があったりもするのですが、ストーリー自体がそのテロ行為をベースの進む為、特にラストの攻防では「結局こいつは何したいの?」ってボンドが辿る展開を演出する為に都合良く動いてるように見えちゃってるんです。

他にも、真エージェントの活かし方(ていうか活かせなさ)や、英国諜報部との関係性も、ボンドのストーリーを演出する為に動いてて、肝心のスパイ映画のストーリーが、めちゃくちゃボヤけてしまっていたのが残念です。


なんですが...じゃあ面白くなかったかと言われると、163分飽きない程度には面白かったんですよね。

案の定ボンドの物語には泣いちゃってるし、アクション映画として見所の多さや作り方の旨さは特出すべきだと思います。

冒頭の、クラクラさせられる長回しアクションも最高ですし、過去作のオマージュ含めて時折クスって笑わされる所も流石です。

また、本作に登場する女性2人の存在感。

レア・セドゥ演じるマドレーヌの、ボンドとの関係性や、彼女のうちに秘めたる強さが垣間見えて最高でした。

そしてアナ・デ・アルマス。彼女のアクションや佇まいが魅力的過ぎる。ただ、彼女のポジションが彼女である必要、存在意義が不透明で、サービスとしての存在になってるのは残念ですね。

後は新たなエージェントのラッシャー・リンチは、彼女があの立ち位置を与えられたのであれば、相応にもっと活きて欲しかった...


そんな感じで、この映画が完全に賛否両論極端に分かれるというのもよく分からないし、モヤモヤする所はあるけど、十二分に楽しめる映画なのではと思っています。

間違いなくシリーズ映画としてマスターピースであるダニエル・クレイグ版007の最後の映画、映画館で観る価値は充分あると思いますので、迷ってる方は是非!



  1. 2021/10/10(日) 12:00:00|
  2. 2021年公開映画
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☆9『空白』この噛み合わなさ...つらい

『空白』



~あらすじ~
スーパーの化粧品売り場で万引きしようとした女子中学生は、現場を店長の青柳直人(松坂桃李)に見られたため思わず逃げ出し、そのまま国道に飛び出してトラックと乗用車にひかれて死亡してしまう。しかし、娘の父親(古田新太)はわが子の無実を信じて疑わなかった。娘の死に納得できず不信感を募らせた父親は、事故の関係者たちを次第に追い詰めていく。(シネマトゥデイ引用)




9/10★★★★★☆☆☆☆

以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『ヒメアノ~ル』や『さんかく』、今年公開された『BLUE/ブルー』の吉田恵輔監督の最新作で、古田新太と松坂桃李が共演する「かなりエグい話」という事で、公開前から話題になっていた作品です。

個人的に吉田恵輔監督の作品って所で、日本人映画監督の中でも一二を争うくらい好きな映画監督なんですが、この監督のどういった作家性が好きなのか...

一つは人間関係の曖昧さや危うさみたいなのが描くのが凄い上手いんです。「主観」のぶつかり合いで形成される人間関係の中で、相手の「主観」を100%理解する事は到底出来ない。なんだけど、映画の観客という立場ではお互いの「主観」が見える。つまり、その噛み合わなさが明確に見えるのが映画であって、その噛み合わない危うさや気まずさを見せるのが吉田恵輔監督は抜群に上手い。そんな噛み合わなさを、「サイコスリラー」や「ラブコメ」で、悲劇とコメディの絶妙バランスで見せてきたのフィルモグラフィーになっています。

そしてもう一つの特徴が、「一見平凡そうに見える日常の中で、見えてなかった何かが見える事で、映画の中盤で物語の見え方が大きく変わる」所にあるのかなと思います。その見えなかった何かというのが、「誰かの主観」であったり、新たな存在であったりするのですが、それによってジャンルが飛び越えるレベルで、映画の見え方が一変するという所も、この監督の面白い所になります。

それに対して本作は...
吉田恵輔監督の作家性を、シリアス方面にチューニングされた大傑作でした!

本作でメインとなる2人。古田新太演じる粗暴で昭和気質な父親は、突如事故によって娘を亡くしてしまいます。その事故のきっかけを作ったのが松坂桃李演じるスーパーの店員で、彼女が万引きをしている現場を見かけ彼女を追っかけた結果、事故に繋がってしまいます。
事故の原因をスーパー側の過失を執拗に調べる父親と、精神的に追い込まれていくスーパーの店長。
この2人の主観とその噛み合わなさの描き方が絶妙で、父親の横暴さと不寛容、スーパー店長の罪悪感、それらの裏には自己防衛的な不完全で人間味のある感情も見え隠れしていて、それぞれにめちゃくちゃ共感出来てしまうんです。

そしてそんな2人の噛み合わなさが、次第に周りにも波及していきます。
事故とその後の展開に巻き込まれた人達も、群像劇的に描かれていくのですが、「店長を懸命にサポートするパート」、「不運に事故の運転手になった女性とその母」、「暴走する父親を近くで観る部下」、そして「亡くなった女の子の学校の担任」、それぞれに弱さと人間味、共感できる主観の視点が入っていて、全員の物語が感じ取れるようになっています。

メインの2人に限らず、登場人物それぞれによって異なる見えている物、目的、想い。本当の意味でみんな理解しえない、だからこそ言葉の刃を刺し合い、事態がコントロールが効かない状況下で深刻化していく。
まるで日本版の『スリー・ビルボード』で、不完全な人間だからこその噛み合わなさと負の連鎖が、終始ヒリヒリさせる。本当辛かったです...(もちろん褒めてます!)

ただ、本作でも「不条理さ」と同列に「救い」も描くんですよね。「救い」に感しても、「コントロール下にない状況」で訪れる描き方がめちゃくちゃさり気なくて、大号泣ですよ。3回くらいポジティブな意味で泣いちゃいました。
この辺り、吉田恵輔監督の信念なのかなと思うんですが、楽観的にも悲観的にもならず、「人生は辛いし温かい」って視点が見て取れます。

また、本作出てきた役者陣、全員最高でしたね。
古田新太の演技は「視野がどんどん狭くなっていく父親」が憑依していたし、松坂桃李は『あの頃。』『孤狼の血』からの振れ幅で全く違和感ないのは驚愕。「店長をサポートするパート」の寺島しのぶは噛み合わない「主観」の痛々しさが最高でしたし、古田新太の部下役の藤原季節は粗暴な古田新太への共感を後押しするのに絶妙に効いていたいました。そして何より片岡玲子さん!本作随一の名シーンがあるんですが、彼女の熱演無ければ本作のラスト30分は成り立たないくらい素晴らしかったです。

不完全な人間だからこその噛み合わなさ。
「不条理」な負の連鎖にヒリヒリさせられ、「救い」に涙する大傑作...
超オススメです!!
  1. 2021/09/27(月) 23:09:24|
  2. 2021年公開映画
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☆8 『シャン・チー/テン・リングスの伝説』新しく推しのヒーローが出来た

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』



~あらすじ~
犯罪組織を率いる父親(トニー・レオン)に幼いころから鍛え上げられ、最強の力を持ったシャン・チー(シム・リウ)は、組織の後継者とみなされていた。だが、彼は自らの力を封印し、過去の自分と決別してサンフランシスコでホテルマンとして平凡に暮らそうとする。だが、伝説の腕輪"テン・リングス"を操る父親が世界を恐怖に陥れようとしたため、シャン・チーはついに封印していた力を解き放つ。
(シネマトゥデイ引用)



8/10★★★★★☆☆☆

以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『アベンジャーズ』シリーズなどマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の25作目。久しぶりの新たなヒーローの誕生譚を描く作品であり、シリーズ初めてメインでアジア人ヒーローを描く作品でもあります。
監督を務めるのは『黒い司法 0%からの奇跡』『ショート・ターム』などのデスティン・ダニエル・クレットン。ポジティブな面とネガティブな面の背反二律的な側面をもつ主人公が、ヒーロー的行動を取るドラマ作品を撮る監督で、そんな主人公の側面を物語上で表現するのに長けた監督なのかなと思います。
また、主人公には中国系カナダ人で、ホームコメディドラマなどに出ていたシム・リウを大抜擢。脇を固める面子が豪華で、『インファナル・アフェア』『HERO』などのトニー・レオン、『クレイジー・リッチ!』などのミシェル・ヨー、『フェアウェル』などのオークワフィナが共演します。

MCU作品の中で最大級に好き!

まず何が素晴らしかったって、MCU作品の中でも頭抜けるんじゃないかと思うアクションシーン。
基本的には中国武術を魅せる方向に進化させた武侠映画、いわゆるカンフー映画の系譜にあるアクションがベースなんですが、そのアクションの中でも様々なベクトルでの現代アップデート版をしっかり見せてくれています。
少林拳に代表される剛拳と、太極拳に代表される柔拳がしっかり分けて描かれていたり、もろにジャッキーアクション的なドタバタアクションがあったと思えば、チャウ・シンチーの『カンフーハッスル』やチャン・イーモウ『HERO』のようなカンフーアクションをVFXによってファンタジーに拡張したアクションがあったり、いわゆるカンフーアクション映画のあらゆる旨みをアップデートしてくれています。

更にそのアクション自体が楽しいってのもありつつ、それを決してサービスとして展開してるのではなく、ストーリー上の必然として多様性が必然的に発生しているように描かれてるのが、本当に素晴らしい。しかも、それが派手になっていく方向にドライブしていく為、テンションもずっと上がって行く方向に動くんですよね。
人物造形や配置、そこから展開されるストーリーが、盛り上がる順番でカンフーアクションの歴史をオマージュしながら回収していく...そりゃ面白いわ!

そんな中に出てくるのが、「テン・リングス」という武器。
いやまじ、この武器の使い方考えた人天才!?
この武器の登場頻度が、カンフーアクションのドライブしていく感じと重なって、テンション爆上げ。使い方が使う人によって変わるって言うのも、フレッシュさが持続するって意味でも、キャラクター性を強めるって意味でも、抜群に効いています。

そんなアクションに燃えながらも、実は今作で最も心が揺れたのが、ドラマと内面描写なんですよね。

本作は「家族」を描いた話で、その中で「ヒーローサイド」と「ヴィランサイド」に分かれてしまうって所が、物語背景になっているんですが、どちらサイドも凄い納得できる様な描き方をされているんです。何故「ヴィランサイド」の彼が盲信するのかも、その理由が凄い納得できるんでよすね。
そこには、キャラクター造形の描き方が秀逸だってのがあるんですが、序盤はあえて表面上の事しかわからなかったって所から、絶妙なタイミングで次第に過去を含めて背景が紐解かれて行く事で、ヒーローとヴィラン全方位的に共感を隠し得ない。
クライマックスはアクションのドライブと重なって、全員の目線で感情が入っちゃって、思わず泣いてしまいました。

後は、シャン・チー自身もキャラクター性もすごい良くて、「自己顕示欲」などの社会的欲求は全く無く、「善」と「悪」の要素を自分の中に持ってる事を認識している...真の強さを持つ等身大な人物造形が大好き。
新しく推しのヒーローが出てきましたよ。

そんなキャラクター性による、オフビートな抜けた展開も好きだし、トニーレオンやミシェル・ヨーはめちゃくちゃカッコ良く、オークワフィナのシャンチーとの掛け合いも最高。

これからのMCUが更に楽しみになりました!
オススメ!!



  1. 2021/09/17(金) 13:57:47|
  2. 2021年公開映画
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☆9『オールド』全方位的に絶賛です。

一級品のタイムリミットスリラー

『オールド』



~あらすじ~
バカンスを過ごすため美しいビーチを訪れ、それぞれに楽しいひと時を過ごすキャパ一家。そのうち息子のトレントの姿が見えなくなり、捜してみると彼は6歳の子供から青年(アレックス・ウルフ)へと成長した姿で現れ、11歳の娘マドックスも大人の女性(トーマシン・マッケンジー)に変貌していた。不可解な事態に困惑する一家は、それぞれが急速に年老いていることに気付く。しかしビーチから逃げようとすると意識を失なってしまい、彼らは謎めいた空間から脱出できなくなる。




9/10★★★★★☆☆☆☆

以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『シックス・センス』『スプリット』などのM・ナイト・シャマラン監督によるサバイバルスリラー。
世の中を斜に構えた世界観とそれを活かした捻りの効いたストーリー、強烈なキャラクター、独特の演出スタイルと、個性的な作風が特徴の監督。どうしても「どんでん返し」のイメージが先行しがちですが、あくまでこの監督がよく使う手段でして、あくまで捻れた世界観の面白さと、その中だからこその人間模様やドラマが特徴の監督だと思います。
そんなシャマラン監督が、グラフィックノベルの原作を元に、自ら映画用に脚本を書いたのが、本作になります。ポスタービジュアルから、傑作の予感がプンプンしていました。

忘れられない映画体験

まず本作で強調しいのが、宣伝で推されるような「サスペンス」や「謎解き」、もっと言えばシャマラン映画で安直に想像しそうな「どんでん返し」みたいな所が、面白い映画ではありません。あくまで本作ではその要素はおまけや蛇足に過ぎず、その過程で展開される内容にこそ面白さが凝縮された映画な為、期待するものによっては拍子抜けするかもしれません。

バカンスに来た家族とその他一向が、脱出できないプライベートビーチという閉鎖空間の中で、急速に年老いていくタイムリミットスリラーが展開される...

この映画最大の特徴は、そんな限定空間×タイムリミットの中に、社会の縮図を圧縮する事によって引き起こす、混沌と混乱、カオスな状況が五月雨式に襲いかかる所にあります。
具体的な内容は是非劇場で体験して頂きたいのでさご、時間が進んでいくに連れて生じる焦り、あらわになっている本性、加齢とともに見え始める肉体的な変化...それらが連鎖反応を起こす事によって、「あっ!?」「まじか...」「最悪...なんだけど最高...」って展開が文字通り絶え間なく次から次へと襲いかかってくる、そんな目を離せない映画になっています。

その混沌とした状況を表現するのに、あらゆる要素が有機的に機能していて、特に印象的なのが独特のカメラワークです。普通の映画じゃとり得ないような、飛び飛びのカメラワークをしていて、それが全体の空間認識を難しくしていて混沌を言い当てていたり、見せそうで見せないで「嫌な予感」を引っ張る撮り方もめちゃくちゃハマってると感じました。

さらに、複数の人物が登場する中で、人物造形の描き方、置き方もめちゃくちゃハマっています。パニックを連鎖的に引き起こす為に人物造形が凄い有機的に機能している為、取ってつけた展開ではなく、しっかり必然的に結末に向かって行ったように思わせてくれるようになってます。更にそんな人物造形が、この映画の全貌の真相に繋がってたりする隙のなさで。失礼ながら本当にシャマランの映画?とすら思ってしまいました。

この映画の作りとして、「有限の時間」や「限定的な空間」の中に、「社会の構図を詰め込んだ限定的な人々」が閉じ込めらて、「時間を圧縮して人々が変化して行く」という構成が、映画そのものの特性を言い当てています。つまり、「普段映画を見ている立場の人達が、映画の中に閉じ込められて、映画のルールで物語が進んでいく」という、メタ的な感覚を感じる映画になっているんですよね。映画の時間のマジックの特性を拡大利用してタイムスリラーとして機能させたシャマランマジックが、唯一無二の映画体験を味あわせてくれました。

めちゃくちゃオススメです!!


  1. 2021/09/07(火) 15:24:49|
  2. 2021年公開映画
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