シネマ・ジャンプストリート

劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

☆7『ガンズ・アキンボ』面白い面白い面白い

「クソリプ」だめ!巻き込まれ殺人ゲーム映画!

『ガンズ・アキンボ』



~あらすじ~
街で人々に殺し合いをさせ、その様子を視聴する闇サイト「スキズム」。そこへ攻撃的なコメントを書き込んでは仕事の憂さを晴らしていたゲーム会社プログラマーのマイルズ(ダニエル・ラドクリフ)は、彼の度を超えた荒らしぶりからサイトを管理する裏組織を率いるリクターを激怒させてしまう。リクターはマイルズの住所を特定して麻酔で眠らせ、両手にボルトで拳銃を固定した上に元恋人を拉致。目覚めて驚がくするマイルズにリクターは、スキズムで最強の殺し屋とされるニックスに勝利すれば元恋人を解放すると告げる。
(シネマトゥデイ)

7/10★★★★★☆☆

以下 レビュー(核心のネタバレなし)
本作の監督は、長年VFXアーティストとして活躍し、これが『デビルズ・メタル』に次ぐ長編映画監督二作目となるジェイソン・レイ・ハウデン。主演は『ハリー・ポッター』でお馴染みダニエル・ラドクリフ。A24製作の『スイス・アーミー・マン』など近年は癖のあるキャラクターを熱演してます。また、netflixオリジナル傑作『ザ・ベイビーシッター』のサマラ・ウィーヴィングスが共演します。

インターネット上で匿名なのを良い事に、誹謗中傷しては優越感にひたる主人公のマイルズが、闇サイト「スキムズ」のサイトを荒らした為、目が覚めると手に銃が固定され、殺し合いゲームに強制参加させられる...
そんなぶっ飛んだ過激ジャンル映画なんだけど、巻き込まれ殺人ゲーム物!?として驚くべきかな非常に良くできている。音楽やテンポ感などはまるでゲーム世界のように全体的にイケイケどんどんで進んでいくのに対し、主人公の間抜けで惨めっぷりがそれと相反する形でハマっていてめちゃくちゃ面白い。巻き込まれ感全開で終始テンパってて、両手を自由に使えない不憫さに始まり、街中をパジャマのまま走り回る間抜けさ、思わぬ人に自殺阻止された時のかっこ悪さとか、本当最高です。

更に、この映画の魅力のかなり大きい所を占めるのが、主人公マイルズと殺し合うイカれた殺人鬼のニックス。いわゆるハーレー・クイン的な役回りで、クレージーでサイコパスなキャラクターとかっこよすぎるアクションの立ち回り、そして時折りが垣間見える過去のトラウマ...めちゃくちゃ魅力的。演じるのはサマラ・ウィーヴィング、みんな大好きな『ザ・ベビーシッター』のあの人ですね!惚れちゃってます。
ダニエル・ラドクリフも勿論最高。この人、最近クレージーな役ばっかで、言っちゃ悪いけど、めちゃくちゃしっくりきてます。

ただダメな所もはっきりあって、邪魔でしかない夢パートとか、ラストバトルの既視感失速感が何とか出来ていれば...

でもまさかまさかの続編!?は絶対観るぞ!くらいには好きです!!!

オススメです!!!


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  1. 2021/03/14(日) 00:29:50|
  2. 2021年公開映画
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☆8『あのこは貴族』そういう風に育ってきたから

連発する傑作邦画の中で、最も隙なし!

『あのこは貴族』



~あらすじ~
都会に生まれ、結婚こそが幸せという価値観を抱く20代後半の榛原華子(門脇麦)は、結婚を意識していた恋人に振られてしまう。名門女子校時代の同級生たちの結婚や出産を知って焦る彼女は相手探しに奔走し、良家出身で容姿端麗な弁護士・青木との結婚が決まる。一方の時岡美紀(水原希子)は富山から上京して慶應大学に進むものの中退、働いていてもやりがいを感じられず、恋人もおらず、東京で暮らす理由を見いだせずにいた。全く異なる生き方をしていた2人の人生が、思わぬ形で交わっていく。(シネマトゥデイ引用)

8/10★★★★★☆☆☆

以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『グッド・ストライプス』の岨手由貴子が、山内マリコの同名小説を映画化。門脇麦を主演に迎え、水原希子と高良健吾が傍を固める。

本作の中心となる2人の女性、華子と美紀。前者は東京の上流階級家庭で育ったお嬢様で、後者は田舎の中流階級家庭で育ち東京で暮らす今どきの女性。作中の言葉を引用するなら、「異なる階級の人同士は決して出会わぬようになっている街」東京で、超絶良家の生まれである幸一郎を通し、瞬間的に交差する2人の女性の人生を切り取った映画です。
対比される女性2人、共に「女性としてかくあらん」という保守的なレールで育った共通点がありつつ、育ってきた階級と生活圏、人間関係、更には苦しみまで異なっており、似ているけど違うって距離感が絶妙で、東京で育ちと地方で育ち、上流階級と中流階級で、見ている世界の違いを本当に丁寧に汲み取っていくんです。

そしてこの2人が邂逅するとき...幸一郎を挟みドロドロした展開になっていくのかと思いきや...
それって男社会が決めたレールであり、枠組みであり、分断の構図なんだよねってのが、思い知らさせる、ちょっと予想していなかった展開になっていきます。
階級社会とか、はたまた男女の役割とか、それによる分断の構図とか...この映画全体を通して、既存の作られた社会構図に対する冷たくも否定できない視点が印象的で、男社会で形作られた人生のレールに乗せられた事で、悩んだり抗ったりする人々を切り取っています。

そんな人生のレールを象徴する存在なのが高良健吾演じる幸一郎です。
一見、余裕と品性のある良い男なんだけど、それはある意味女性を役割として見ているからというのが徐々に感じ取れていきます。でもそんな立場の幸一郎もまた、既定のレールの上で苦しみ諦めているのが窺え、映画の奥行きになっているんです。

セリフも本当に印象に残るものが多い。
「その日あったことを話せる相手がいるだけで とりあえず充分じゃない?」
この一言が印象的で、美紀が上京後ずっと求めていた物であり、華子が結婚後失っていく物として、言い当ててたりする。

形作られた人生のレールに乗せられた共通項がありつつ、異った立場の人々の見ている世界の違いを丁寧に映し出す傑作。

おすすめです!!

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  1. 2021/03/09(火) 23:36:00|
  2. 2021年公開映画
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☆9『すばらしき世界』彼はJOKERか。それとも

今年の邦画、豊作過ぎじゃね?

『すばらしき世界』



~あらすじ~
下町で暮らす短気な性格の三上(役所広司)は、強面の外見とは裏腹に、困っている人を放っておけない優しい一面も持っていた。過去に殺人を犯し、人生のほとんどを刑務所の中で過ごしてきた彼は、何とかまっとうに生きようともがき苦しむ。そんな三上に目をつけた、テレビマンの津乃田(仲野太賀)とプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)は、彼に取り入って彼をネタにしようと考えていた。(シネマトゥデイ引用)

9/10★★★★★☆☆☆☆

以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『ゆれる』『永い言い訳』など、ワールドワイドで日本を代表する映画監督の1人、西川美和が監督を手掛ける本作。佐木隆三の小説「身分帳」を原案に、さまざまな映画監督からNO1と讃えられる俳優、役所広司が主演を務めます。本作はシカゴ国際映画祭で観客賞と最優秀演技賞を受賞するなど、世界的にも絶賛されており、楽しみにしてました!

あらゆる角度から掘り下げを許す大傑作!

かつて反社に在籍した者が、10年の時を経て出所する。非寛容な社会において、悪戦苦闘する男を描く...これだけを見ると、現在公開中の傑作『ヤクザと家族』と重なるテーマ性ですが、本作は更にその先を多層的に描き出します。
非寛容な社会を一方通行で「原因」にする訳ではなく、本作において役所広司演じる「不器用で愚直」な男 三上から受け取る印象は、「可哀想」と感じる瞬間もあれば「キレやすくやばい奴」と感じる瞬間もあり、それが行ったり来たりするわけです。
決して悪い奴では無い。むしろ正義感が強い。けれどキレやすく、現代を生きるに必要な思慮深さがない。観ている我々はそんな彼が「頼むから極道の世界に戻るな」という感情で見ることになります。ある意味で日本版の『ジョーカー(2019)』の構図であるこの映画は、三上自身がJOKERに成りかねないバランスで終始していきます。

また、彼を支え応援する作家志望の津乃田(中野大賀)がこの映画を見る我々の視点と重なっていきます。行ったり来たりする三上の印象の変化は、書き手である彼が感じるそれと同期しているあたりうまい描き方をされているなーと。

三上を極道の世界に引き戻そうとする要因、それは非寛容な社会の問題なのか、それとも人間性の問題なのか...
本作では決してどっちにも寄らずに描かれるように感じます。少なくとも社会の協力と忍耐、そして周囲の人々の優しさが必要で、「社会は冷たくても人々は必ずしもそうではない」という本作での温かさに、涙が止まりませんでした。

そんな中で、衝撃なのがラストの「普通」になる事へのカウンターパンチ。凄まじき西川監督。震え上がりました。「普通」を強調する事によって、「普通」にたいする「おかしさ」の提示。そんな「普通」を受け入れられるか、起点を効かせる事が出来る人間だけが生きられる世界なわけで、本作のラストにはまたまた涙が...止まりません!!

ラストのタイトルコールのタイミングも抜群で、余韻が半端ない作品、ぜひ劇場で見てください!!

西川美和監督、役所広司、凄まじき!!


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  1. 2021/03/08(月) 16:52:24|
  2. 2021年公開映画
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☆8『あの夜、マイアミで』同じ黒人といっても...

同じ黒人といっても立場はそれぞれ。

『あの夜、マイアミで』



~あらすじ~
1964年2月、プロボクサーのカシアス・クレイ(後にモハメド・アリと改名)はヘビー級の世界王者となった。そんなカシアスを祝うために、友人たち(マルコムX、ジム・ブラウン、サム・クック)はマイアミに集まった。4人は純粋に酒を楽しむつもりだったが、話題が公民権運動に及ぶにつれ、「自分たちは差別に苦しむ同胞たちに何ができるのか、また、何をすべきなのか」という問題に向き合っていく。(Wikipedia引用)


8/10★★★★★☆☆☆

以下 レビュー(核心のネタバレなし)
アマゾンオリジナル作品、Prime Video配信作品。『ビール・ストリートの恋人達』やテレビドラマで活躍するレジーナ・キングの映画監督デビュー作。昨年のトロント国際映画祭で最高賞(ノマドランド)に次ぐ次点を獲得し、批評家からも彼女の映画監督としての才能を絶賛する声が相次ぐなど、アカデミー賞への賞レースでも注文されている作品ですね。

伝説のボクサー モハメド・アリ(当時の名はカシアス・クレイ)、伝説のアメフト選手 ジム・ブラウン、伝説のミュージシャン サム・クック、かの黒人解放指導者 マルコムX。実際に友人でもあった4人が、これまた実際にマイアミの黒人専用モーテルに集まった1964年2月25日、その一室で"起こったであろう"会話劇がデフォルメされ展開される...その段階でもうただ事じゃない。

最初は和やかな会話が展開されるのですが、次第に話は「黒人としてのあるべき立ち振る舞い」という論点に。当時は今以上に人種差別が当然のように存在し、黒人解放運動の最重要期にあたるのですが、その中心人物であったマルコムXを中心に、影響力のある彼らの取るべき行動という観点で議論が展開されていきます。
この部屋で起こった出来事は、本来は「誰も知らない」はずなのですが、各人のキャラクターがその議論に反映されていて、それがめちゃくちゃ面白い、尚且つめちゃくちゃ勉強になる。当然ながら、同じ黒人といえども社会的立場と守るべき者の対象や価値観は違う訳で、そこに更に人間味のある弱さや傲慢さまで会話の中に込められていて、会話劇の面白さを通して、人種問題の根深さまで透けて見える強烈作品になっています。

本作で、映画監督デビューとなるレジーナ・キングですが、「これは凄いセンスだ」というのが、冒頭の4人それぞれの登場紹介シーケンスから既に伝わります。特にジム・ブラウンの登場よ。温厚でリベラルっぽい白人との、和む会話が展開されるのですが、「白人から見る黒人への優しさが、如何に歪で絶望的なのか」が一発の描写で表現されているのが、もう本当素晴らしかったです。レジーナ・キングの監督作品はこれからも要注意です!

人種問題という切り口の中で、同一人種の中での立場の違いを会話劇の面白さに繋げ、今まであまり無かった視点で根深さを考えさせられる、素晴らしい作品です!

オススメ!!

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  1. 2021/03/02(火) 23:51:33|
  2. 2021年公開映画
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☆8『この茫漠たる荒野で』これは沁みるぅ!

前進するためには思い出す。

『この茫漠たる荒野で』



~あらすじ~
南北戦争が終結して5年。退役軍人のジェファソン・カイル・キッド(トム・ハンクス)は、各地を転々としながら世界中のニュースを読み伝える仕事をしていた。その道中で出会った10歳の少女ジョハンナ(ヘレナ・ゼンゲル)は、ネイティブアメリカンにさらわれ育てられた過去があり、英語も分からず見知らぬ外の世界に戸惑っていた。見かねたキッドは、彼女を親族の元へ送り届けることを引き受ける。彼らはさまざまな試練に遭遇しながら、荒野を進んでいく。(シネマトゥデイ引用)

8/10★★★★★☆☆☆

以下 レビュー(核心のネタバレなし)
Netflixオリジナル作品。
ポーレット・ジルズのベストセラー小説を原作に、『キャプテン・フィリップス』や『ボーン・スプレマシー』などのポール・グリーングラスが監督。大好きな監督です!
グリーングラス監督と『キャプテン・フィリップス』に次ぎ2度目のタッグとなる、トム・ハンクスが主演。共に旅する少女をヘレナ・ゼンゲルが演じます。

五臓六腑に沁み渡る~

時代は南北戦争から5年後のアメリカ。「新聞の読み手」として各地を転々とする退役軍人と、先住民に囚われ英語の話せない訳あり少女が、多民族が混在し混沌とした大地で、大きな傷を背負いながら前へと歩き始めるロードムービーです。

先住民に移民、そして奴隷黒人...
南北戦争を経たこの時代は、「人種のるつぼ」たるアメリカが、今の在り方に向けて進み出し始めた頃なんですが、この時代のアメリカならでは要素が2人の人物造形、苦悩、そして襲いかかる苦難に紐付いていきます。
現代では表現が難しい程に明確に線引きされた2人が、互いを理解していく様は、「人種」の線引きを超え、あくまで人と人である事を強く印象に残していきます。

「前進するためには思い出す。」
この言葉が、彼ら2人が前進する為のキーワードになるのですが、今まさしく分断が進むアメリカにおいて、この映画にある多民族国家としてのアメリカの背景を今こそ思い出すべきではないかというメッセージとして重なっていきます。

そもそもこの2人の人物造形が抜群です。トムハンクス演じる退役軍人の職業が「新聞の読み手」ってのが、そもそもフレッシュだし、映画のストーリーにも上手く作用している上、「言葉」が通じない少女に対し、その連続体である「物語」をあえて真ん中に据える事で、2人の距離感が測れて面白いんです。

また、本作のカメラ割りのメリハリが印象的でした。グリーングラス監督といえば、臨場感を持たせるのが極めて上手くて、超絶細かいカットを繋ぐのが十八番なんだけど、本作は要素要素の緊迫感あるシーンでのみ活用しています。逆にそういったシーンとの対比で静かなシーンも多く、それが全体として広大で美しいけど未完成で危険な大地って雰囲気が凄い印象に残る画作りになっていました。

今の時代にこそ、心に沁みる一作。勉強にもなってオススメです!!

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  1. 2021/03/01(月) 23:40:14|
  2. 2021年公開映画
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