
~あらすじ~
1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒を務めるトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、クラブの改装が終わるまでの間、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手として働くことになる。シャーリーは人種差別が根強く残る南部への演奏ツアーを計画していて、二人は黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに旅立つ。出自も性格も違う彼らは衝突を繰り返すが、少しずつ打ち解けていく。
(シネマトゥデイ引用)
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐️
(85/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
○まずは作品について
祝、アカデミー作品賞受賞!!
先日のアカデミー賞にて『ROMA』との一騎打ちを制し、見事作品賞を受賞した本作。
監督は、『メリーに首ったけ』など、がっつりコメディ畑なピーター・ファレリー。
正直、初めはこの監督の作品がオスカー候補!?なんて思っちゃってましたが...ごめんなさい!
主演のガサツなイタリア系白人の用心棒トニーを務めるのは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『始まりへの旅』のヴィゴ・モーテンセン。
彼が護衛する天才ピアニスト、ドクター・シャーリーを演じるのが、マハーラシャ・アリ。
アカデミー主演男優賞を獲得した『ムーンライト』に続き、一年空けての助演男優賞受賞... 新たなアイコンとして彼の演技には今後も大注目です!
○ここから感想(ネタバレなし)
白人と黒人の交流、友情...
本作はそんな、一言で片付けられない、いや「片付けてはいけない」というメッセージが滲み出る映画になっています。
その原点にあるのは、複雑で豊かな人間描写です。
白人であるトニーが貧困層で、
黒人のシャーリーが富裕層。
我々が持つ60年代の一般的なイメージとして、どのカテゴライズにも完全には当てはまらないキャラクター像が非常に興味深く、キャラクターの深みを生んでいきます。
黒人に対して差別的行動をとる反面、彼自身がイタリア系の移民であったり、情の熱さは人一倍ある用心棒のトニー。
一方、自身も白人や貧困層に偏見を持ち、黒人に対しても距離を取っているピアニストのシャーリー。
複雑でカテゴライズ出来ない彼らですが、自らする側としても、周囲からされる側としても、カテゴライズによって人生を窮屈にしてしまっています。
特にシャーリーは、人種による差別だけではなく、次第にその構図から外れた者としての差別も受けている事がわかり、「居場所のない」彼の出生に胸が締め付けられました。
そんな多面的に抑圧された人物造形ですが、二人の旅路は非常にユーモアに溢れています。
道中のユーモアや現地の差別へ対応を通して、次第に二人の距離感の変化、お互いが気づき、理解していく過程を極めて豊かに描いくのです。
初めは相手に対してカテゴライズしていた二人が、いつの間にか一人の人間同士として助け補い合い...最終的に助けを求め合える関係になっている様子に、涙が止まりませんでした。
カテゴリー分けなんて、何の意味もない。
人と人の交流の豊かさや可能性が、心に染み渡りました。
俳優陣も素晴らしい!
アカデミー助演男優賞を受賞したマハーラシャ・アリの品と孤独と実在感を両立させた演技は言わずもがな素晴らしい。
それ以上に個人的には、ヴィゴ・モーテンセンの粗暴なんだけど悪い人じゃない演技が大好きでした。
アカデミー作品賞も大納得の、心の奥底に染み渡る素晴らしい作品。
ぜひ映画館で見てください!!超オススメ!!!

