『ライトハウス』
~あらすじ~1890年代、アメリカ・ニューイングランドの孤島に灯台守としてベテランのトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)と経験のない若者イーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)がやって来る。彼らは4週間にわたって灯台と島の管理を任されていたが、相性が悪く初日からぶつかり合っていた。険悪な空気が漂う中、嵐がやってきて二人は島から出ることができなくなってしまう。外部から隔絶された状況で過ごすうちに、二人は狂気と幻覚にとらわれていく。
(シネマトゥデイ引用)
8/10★★★★★☆☆☆以下 レビュー(核心のネタバレなし)『ムーンライト』『ミッドサマー』などで知られるスタジオ・A24が制作した本作。
『ウィッチ』などのロバート・エガース監督がメガホンをとり、ウィリアム・デフォーとロバート・パティンソンが共演する、背景だけでもあらゆる角度から掘り下げたくなる、スリラーであり、ホラーであり、サスペンスであるモノクロ映画です。
まず大注目なのが、A24制作という点。2012年設立の若い映画制作会社なんですが、その4年後にマイノリティの男性の恋愛を美しくかつ残酷に描いた『ムーンライト』でアカデミー作品賞に受賞します。それ以外にも上げるとキリがないんですけど、監禁映画の傑作『ルーム』、新時代のSF映画『エスク・マキナ』、本国で絶賛の嵐だった青春映画『レディ・バード』、一部で社会現象化した新型ホラーの『ミッドサマー』...他にも『スイス・アーミーマン』、『ヘレディタリー』、『複製された男』、『聖なる鹿殺し』、『mid90s』など、どれも
小規模ながら「攻めてて面白い」映画を連発しています。
背景としてその根底には、
若い映画監督の発掘と、その監督が輝く領域に尖らせた作品をマッチングさせる所が巧みで、どんどん新しい才能の窓口になっています。そんな中で、本作『ライトハウス』。お披露目されたのは2019年のカンヌ国際映画祭で絶賛された作品で、かなり話題になっていたのですが、モノクロ映画でしかも相当尖っているということもあって、中々日本公開されなかったのですが...この度万を辞しての劇場公開です。
本作の舞台は孤島の灯台。
ベテラン灯台守のウィリアム・デフォー演じるトーマス・ウェイ、そこにロバート・パティンソン演じる新人灯台守ウィンズローがやってる。
外界と連絡が取れず、荒れ狂う海と閉鎖された環境の中で不可解な出来事が起こり始める...という展開を、あくまで
新人灯台守ウィンズローの目線で描かれていきます。
最大の魅力の一つが、観ている我々を引き込む
映画としてのルックのパワーが桁外れに凄い。閉鎖的なストーリーに対して、その閉塞感を際立たせるように画面が作り込まれていて、モノクロである事は一つの要素に過ぎず、画角をほぼ正方形に限定したり、一つのカットを取っても意味ありげな印象に残るような画面作りをしていて、デヴィッド・リンチ的な画面力が感じられます。
ただルックというのは映像だけでなく、音の影響も凄く大きく、
不協和音や環境音の使い方が抜群で、あらゆる観点から五感に対し閉塞感と一種の狂気を訴えかけてきます。そんな中で展開されるストーリーも、狂っています。
新人灯台守ウィンズローは先輩灯台守のトーマスから、完全パワハラな理不尽な要求をされます。理不尽なだけであれば良いのですが、どんどん不可解に。加えて外界から遮断される環境が重なって、彼自身追い込まれていくと同時に、映画のリアリティラインがどんどん狂っていきます。
映画自体が抽象化していく中で、見せる力引き込む力が抜群だからこそ、狂っている内容にグイグイ引き込まていきます。
加えて、
ウィリアム・デフォーとロバート・パティンソンの演技合戦が凄まじい。
ほぼ二人しか登場しないのですが、2人の演技合戦にめちゃくちゃ引き込まれていきました。
正直、モノクロ映画、しかも抽象的なストーリーと、個人的には余り得意ではないんですが...本作に関してはめちゃくちゃ引き込まれてました。
狂ってる映画が好きな方は、是非是非観ていただきたい、オススメな一方です!
- 2021/07/19(月) 12:36:13|
- 2021年公開映画
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スパイ映画であり、ヒーロー映画。
『ブラック・ウィドウ』
~あらすじ~孤高の暗殺者ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)の前に、ある日突然「妹」のエレーナ(フローレンス・ピュー)が現れる。二人は自分たちを暗殺者に仕立て上げたスパイ組織レッドルームの秘密を知ってしまったため、組織から命を狙われていた。姉妹が頼れるのは、かつて組織によって作られた偽りの家族しかなかったが、レッドルームの陰謀はこの「家族」の再会に仕組まれていた。(シネマトゥデイ引用)
7/10★★★★★☆☆以下 レビュー(核心のネタバレなし)マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の24作目(多!?)であり、インフィニティ・サーガと言われる一連のストーリーが完結後、
新たに始動するフェーズ4の一作目になる本作。
フェーズ1から登場していた世界最高のスパイ、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフの、初の単独作品であり、最後の登場になると予想される作品になります。
監督を務めるのは、『さよなら、アドルフ』などのケイト・ショートランド。主演のナターシャを演じるのは、これまでの作品群同様にスカーレット・ヨハンソン。『ミッドサマー』のフローレンス・ピュー、『女王陛下のお気に入り』のレイチェル・ワイズ、『ヘルボーイ』のデヴィッド・ハーバーなどが共演します。
本作の時系列的には『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の直後であり、ソコヴィア協定を破り、孤立するナターシャが、彼女の過去に関わる事件に関与する事になります。
彼女が少女時代に隠れ蓑として過ごした擬似家族が関与し、自らも在籍していたスパイ組織「レッドルーム」に立ち向かうという、大きな話の流れになります。
MCU作品といえば、作品毎に違うチューニングが巧みなのですが、本作は世界最高のスパイであるブラック・ウィドウの物語だから当然とばかりに、完全にスパイ映画として作られています。
キーアイテムの争奪戦をベースに、追いかけっこ、カーチェイス、屋根の上のアクション、ヘリコプターを使ったアクション、そして成りすましと潜入。
スパイ映画として楽しい要素が分断に詰められ、それがストーリーを推進する為、MCU初心者でも楽しめる作品になっています。その中でスパイ映画と大きく違う所があります。
助けるという事を最優先に行動し、時には敵である存在にも救うという行動を取る彼女を見ていると、
彼女はスパイではなく、「人を救う」アベンジャーズ のヒーローなんだという事が、ふと感じ取れるシーンが多々あるのが凄く良かったです。
そんな、一見さんにも楽しめる映画になっているのですが、キャラクターの内面を掘り下げようとして見た時、過去のMCU作品を知ってるか知らないかで、見え方が変わってきます。
彼女がアベンジャーズたる理由とは、そして何故『エンドゲーム』であの行動を取ったのか...そこに繋がる彼女の本質は、彼女自身ですらもこの映画前の時点では気が付けていません。
「プロフェッショナルなスパイ」でありつつ、「アベンジャーズ =家族」と捉えていた彼女と、幼少期にいた
擬似家族との接点を通して、「プロ(仕事)と家族の天秤」がテーマに浮かび上がってきます。彼女自身もその接点を通して自分自身を理解すると共に、彼女の言動と変化から、見ている我々もナターシャへの理解が深まっていく、そんな映画になっています。
そんなナターシャと対比する立ち位置で、喰いそうな勢いで存在感が際立っているのが、ナターシャと幼少期に擬似家族を形成していたフローレンス・ピュー演じるのエレーナです。
ナターシャが、スパイではなくヒーローである事、そして自身の本質に気が付けていない事を、対照的な存在である彼女が強調してくれています。
それだけでなく彼女自身、
生意気妹感のキャラクターがめちゃくちゃ立っていて、肉感とあるアクションも最高で、間違いなくあると思われる今後の登場に期待したいです。
他にも、ブラック・ウィドウのアクションはやっぱり大好きですし、クライマックスアクションもCG駆使した見た事ないアクションで見応え十分でした。
ただ、2点ほどマイナスポイントを...
1つが、後半に入って冗長に感じてしまう所があるなと。特に前半はスパイアクション映画として駆け抜けていくのですが、「家族」の濃度を強めるタイミングで、話が止まって見えちゃう所が残念でした。
もう1つが、作品は関係ないのですが...タイミングが悪すぎる。
フェーズ3を振り返りつつ、フェーズ4が始動するポジションにいる作品なのですが、余りにフェーズ3から時間が空いてしまって感情を乗せづらい所があるのと、ディズニー+で公開中のドラマシリーズが世界観を拡張させる方向の作品が多い為、今作はインパクトがなく地味に感じてしまうのが、勿体ないし残念ですね。
とはいえ、スパイ映画として万人が楽しめつつ、ブラック・ウィドウの本質の輪郭がはっきりする作品になってて...
オススメです!!
- 2021/07/11(日) 15:03:38|
- 2021年公開映画
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