シネマ・ジャンプストリート

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☆7『死刑にいたる病』

『死刑にいたる病』



~あらすじ~
理想とはかけ離れた大学生活で悶々とした日々を過ごす筧井雅也(岡田健史)のもとに、ある日1通の手紙が届く。それは大勢の若者を殺害し、そのうち9件の事件で死刑判決を受けている凶悪犯・榛村大和(阿部サダヲ)からのもので、「罪は認めるが最後の事件は冤罪(えんざい)だ。犯人はほかにいることを証明してほしい」と記されていた。かつて筧井の地元でパン屋を営んでいた旧知の榛村の願いに応えるべく、筧井は事件の真相を独自に調べ始める。
(シネマトゥデイ引用)




7/10★★★★★☆☆

以下 レビュー(ネタバレなしです!!)

【作品背景】

『孤狼の血』や『彼女がその名を知らない鳥たち』、『凶悪』の白石和彌監督の最新作。

『ホーンテッド・キャンパス』シリーズなどで知られる櫛木理宇さんが2017年に刊行した同盟小説を原作に、『そこのみにて光り輝く』や『君はいい子』『さがす』などの高田亮さんが脚本を書き下ろした本作。

熱量とパンチの効いた良作を連発する白石和彌監督と、ノワールやサスペンスの脚本に定評のある高田亮さんのタッグと言う事で、公開前から盛大に楽しみにしていた作品です!

また24件もの連続殺人を犯し、死刑判決を受けた連続殺人犯を阿部サダヲさんが、そんな殺人犯からもらった一通の手紙により、鬱屈した日々の中から巻き込まれていく大学生を岡田健史さんが演じます。

特に阿部サダヲさん演じる連続殺人犯のビジュアルがポスターから既に最高で、どのようなキャラクターとして描かれているのか非常にワクワクして鑑賞しました。




【感想(ネタバレなし)】


白石監督の作品と言う事で、ある程度期待していたんですが、思っていた以上に...激ヤバ映画でした。

本作どんな映画か...一言で表現すると、
「サイコパスに踊らされサスペンス」

阿部サダヲ演じる連続殺人犯は、「起訴された複数の殺人のうち、一件は自分じゃない」と主張する。

それを、過去に一時的に知り合いになり打ち解けてした、岡田健史さん演じる大学生に、立証して欲しいと依頼します。

彼は次第に殺人犯に翻弄され、しまいには影響を受ける...という要素が大きな軸になっているんですが、我々はその大学生の視点で、その様子を追体験させる事に特化した映画になっています。

噛み砕いて言うと、「残忍冷酷な凶悪犯なのに、親しみを感じる」、更に言うと「憧れさえ抱きそうになる」、そんな二律背反な感覚をもたらしてくれます。

この映画の一つ一つが、そこに繋がるように作られていて、
殺人拷問シーンが兎に角残酷で、殺人犯の残忍さを真っ向から描いたと思えば、「街のパン屋さん」にピッタリな包み込むように優しい表情を見せるシーンが多かったり、その両方が納得出来る演技、佇まいを説得力を持って体現する阿部サダヲさんが本当に素晴らしい。

他にも岡田健史さん演じる大学生の境遇描写の上手さであったり、面会室での「映画的な」演出であったり、怖さと温かさ、両方の感覚を持って殺人犯に翻弄され、取り込まれていくような、そんな映画になっています。

一方でこの映画、サスペンスでもあるんですよね。

「否認する一件の殺人の真相は?」
これが一本のサスペンス軸として入っている中で、なぜこの大学生が選ばれたのかとか、二人以外のキャラクターに感じる違和感とか、そういう諸々の引っかかる所が、この軸を飲み込む形でサスペンスとして機能して回収されていく構造は、素直によく出来てるなと思いました。


ただ、拷問シーンが個人的な感覚で言うと、必要以上に痛くグロすぎたかなと感じます。
観る人を選ぶと思いますし、見終えた後はその印象が残り過ぎて、本質的な面白さがぼやけてしまってるようにも思えました。
  1. 2022/05/11(水) 19:15:22|
  2. 2022年公開映画
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