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85『LION ライオン 25年目のただいま』奇跡で苦しめられ、奇跡で救われ

複雑な感情が入り乱れる、実話ベースの傑作!

『LION ライオン 25年目のただいま』




~あらすじ~
インドのスラム街。5歳のサルーは、兄と遊んでいる最中に停車していた電車内に潜り込んで眠ってしまい、そのまま遠くの見知らぬ地へと運ばれて迷子になる。やがて彼は、オーストラリアへ養子に出され、その後25年が経過する。ポッカリと人生に穴があいているような感覚を抱いてきた彼は、それを埋めるためにも本当の自分の家を捜そうと決意。わずかな記憶を手掛かりに、Google Earth を駆使して捜索すると……。
(シネマトゥデイ引用)








☆☆☆☆☆☆☆☆(85/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
幼少時にインドの田舎町で迷子になり、その後何故かオーストラリアで育った青年がGoogle Earthで自分の家を見つける。
そんな驚くべき実話の映画化。
監督を務めるのは、ガース・デイヴィス。
是非この監督の名前を覚えておいて欲しい。
今作が監督デビュー作にして、アカデミー賞で作品賞を含む6部門ノミネートに導いた、間違いなく数年以内にオスカーを手にするであろう監督さんです。
『スラムドッグ$ミリオネア』のデヴ・パテルが大人になった主人公を、天才子役サニー・パワーが幼少期の主人公を演じ、ルーニー・マーラやニコール・キッドマンらが脇を固めます。


過去の記憶を、現在の物語の中で思い出す。
昨今の映画は、随所に過去の映像をフラッシュバックしながら、主人公と一緒に過去を知っていく(思い出す)という構図が多い中、
今作は真正面から二部構成に分け、幼少時代と大人になってからどちらも現在進行の物語として、二つの奇跡が語られます。

前半で描かれるのが、インドで暮らす家族とはぐれる悲劇、そして新たな両親と出会うまでの奇跡です。
5歳のサルーは、決して裕福とは言えない家庭で暮らしていますが、そこには盲目の母、少年ながら家族を支えようとする大好きな兄を含めた、かけがえのない居場所があります。
しかし、ある日を兄待つ中、回送電車で寝てしまった事で、何千キロ離れた街まで運ばれてしまいます...
インドは毎年何万人もの子供が命を落とす国。
飢餓や人身売買の手が迫る。
そんな国で、家との絶望的な距離や、迫り来る大人の思惑など、何も知らない5歳の少年が、ただ一人取り残される。
「もう、どうしようもないだろ...」
そんな中で、生き残り、オーストラリアの夫妻に養子としてもらわれる奇跡。
これは彼にとっても奇跡なのかは複雑ですが、物語を繋ぐオーストラリアでの成長パートの演出が秀逸で、もう見ている我々は安堵し、「良かった!!本日良かった!!」と確信に変わっていきます。


Google Earthで自分の家を見つける。
「事実は小説より奇なり。」
後半は、この言葉が、主人公サルーの為にあると言って良いくらいの、奇跡の物語が展開されます。
その物語だけでドラマチックなのは間違いないのですが、決して奇跡の物語だけを語るわけではありません。
自分にとっての家族とは?
自分の居場所は?
そもそも自分とは一体?
かすかに鳴りつづける居心地の悪い不協和音と、小刻みに入る過去の映像。
前半パートの奇跡が、今度は彼を苦しめていきます。
本日2度目の「もう、どうしようもないだろ...」
奇跡の物語ではなく、それ故の彼や周囲の余りにも複雑な感情に焦点が当てられているのが、この映画の傑作たる所以です。

そんな物語が集結していく先で明らかになる、隠されたタイトルLIONの意味。
悩み続けた、自分という人間のありかを、文字通り手に入れる展開に、涙が溢れてきました。


実話ベースですが、テンポが非常に良く、どんどん作品に引き込んで行きます。
デニー・パワー君の演技も圧巻。

一つの奇跡で苦しめれ、もう一つの奇跡で救われる。
そんな奇跡の傑作を是非劇場で!







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  1. 2017/04/23(日) 15:29:36|
  2. 2017年公開映画
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