シネマ・ジャンプストリート

劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

60『メアリと魔女の花』中身があればきっと...

スタジオジブリの名を捨てて...

米林監督の最新作!
『メアリと魔女の花』



~あらすじ~
無邪気で不器用な少女メアリは、森で7年に1度しか咲かない不思議な花“夜間飛行”を見つける。この花は、魔女の国から盗み出された禁断の花だった。一夜限りの不思議な力を得たメアリは、魔法大学“エンドア”への入学を許されるが、あるうそをついたことから大事件に発展してしまい……。
(シネマトゥデイ引用)






☆☆☆☆☆☆(60/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『借りぐらしのアリエッティ』や『思い出のマーニー』の米林宏昌監督の最新作。
一時、制作部門が打ち切られたスタジオジブリを飛び出し、同じくジブリ畑出身の西村プロデューサーが新設したスタジオボノックでの長編第1作。
将来のジブリを担うと言われた二人が、『思い出のマーニー』以来、志同じく再度タッグを組んだ作品です!
「宮崎駿監督、高畑勲監督、そして鈴木敏夫プロデューサーのスタジオジブリ」という頼もしい看板と半端ない重荷を下ろした事が、はてさてどのような影響を与えるのか...


まず文句付けようがなく素晴らしいのが、冒頭の映像と音楽の格好良さ!
小さな若い魔女が、何かを組織から盗み、見た事のないルックの追手から箒一本で逃げる...
画の美しさは完全にジブリのそれで、加えてある地点からジブリの中ではストップしていた画面全体からにじみ出る躍動感が全開。
ジブリを支えたアニメーター米林さんの真骨頂が前面に出た掴みは、本当に最高。
この後のストーリーに只ならぬ期待を抱いてしまいます。


「何者かになりたい」
今作はそんな想いを持つ少女メアリの物語です。
好奇心から何にでも考えなしで飛びついては、失敗を繰り返す彼女は、特異な見た目も重なって、「自分には何もない」という劣等感を持っています。
そんな彼女のバックグラウンドを周囲との交流を通して描きながら、「夜間飛行」という強力な力を宿す花との出会い、そして勘違い!?による魔法学校への入学へと展開していきます。


魔法学校で出会った校長や教授から、これまでは劣等感の源ですらあった彼女の見た目や、偶然手に入れた才能が、
「天才の証」としてもてはやされ、メアリは最高に有頂天になります。
しかしそれら賛美対象は、あくまで表面上の物でしかありません。
彼女への賛美や、魔法や科学技術に対する執着から、私達は次第に圧倒的な違和感を感じ始めます...


メアリが手に入れた魔法。
それは、いずれは消えてしまう、儚い偽物です。
そしてそんな魔法そのものも、科学技術同様に手段でしかありません。

人は魔法や科学技術という見せかけに、魅了されたり、呪われたり、囚われたりする...
しかし大切なのは、何を成すかという中身です。
想い(中身)を伴わせながら、一時の魔法(外身)を利用し、劣等感(外身)を乗り越えていくメアリの姿が
ジブリといういつかは溶ける魔法を利用しながらも、最も大切な中身を見失わずに、ジブリの呪いを超えていこうとするボノックの姿に重なります。


このように、宮崎駿の代表作の一つである「魔女」の土俵で、スタジオボノック自らの姿を描こうとした点は評価すべきなんだと思います。

しかし残念ながら...
今作の姿勢とは反対に、面白さや出来ばえという作品としての中身が伴っていないように感じました。
(好意的な意見の方、すみません!!)

1番気になったのは、作品のリアリティラインに対しての「それってどうなの??」なミスマッチの多さです。
メアリの脳筋な行動にくらべて、動物が異常に賢かったり。
校長凄いはずのに、間抜けすぎたり。
一人能天気な狸おじさんがいたり。
学校でのその他大勢感が凄かったり。
ウェルダンな話だからこそ、重箱の隅が大切なのですが....
このせいで、物語が非常に薄っぺらくなってしまっています。

また、上記でメアリの姿がスタジオボノックと重なると記載しましたが、それが物語の描くべきテーマより前に出ているのも問題です。
魔法の力は借りる。
だけど本筋(中身)は見失わない。
この両面性自体はボノックと重なって良いのですが、そこにメリハリなく終始しているせいで、何が言いたいのかテーマが全く見えなくなってしまっていました。

これら全体コーディネートが素晴らしかった初期宮崎駿作品に対し、今作はどうしても「アニメーションと世界観(のようなもの)」だけがジブリっぽい...
厳しく言うならば「中身」が大切と歌いながらも「外身」だけの作品になってしまっているように感じました。




ともあれ、今作もアニメーションは問答無用で素晴らしいですし、作品自体良い所も多く有ります。

ここまで批判的に言ってしまうのは期待しているからなんです!
純日本産ジブリの魂を受け継ぎながら、新しい物を作ろうとしている事だけでも、本当はありがたい。
米林宏昌監督の作家性が発揮される次回作を、楽しみにしています!!
絶対に再び見に行きます!


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