エドガーライト監督最新作!
『ベイビー・ドライバー』

~あらすじ~
幼い時の事故の後遺症によって耳鳴りに悩まされながら、完璧なプレイリストをセットしたiPodで音楽を聴くことで驚異のドライビングテクニックを発揮するベイビー(アンセル・エルゴート)。その腕を買われて犯罪組織の逃がし屋として活躍するが、デボラ(リリー・ジェームズ)という女性と恋に落ちる。それを機に裏社会の仕事から手を引こうと考えるが、ベイビーを手放したくない組織のボス(ケヴィン・スペイシー)は、デボラを脅しの材料にして強盗に協力するように迫る。
(シネマトゥデイ)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆(95/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
なんだよこれ、超絶面白いじゃねぇかよ
名作ゾンビ映画を元にした『ショーン・オブ・ザ・デッド』、数多くの刑事アクション物を活用した『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』等の信頼できる映画監督、エドガー・ライト監督の最新作!
元々、自他共に認める映画オタクであったエドガー・ライト。
そんな彼を有名にしたのは、一足先に超売れっ子となった盟友サイモン・ペッグと組んだ、先述2作に『ワールズ・エンド』を含めた「コルネット3部作」(アイスクリームのコルネットが登場することから)。
監督と脚本を務めたこれらの作品で、名作を独自のテンポで引用し、全く新しいコメディ映画に作り変える、エドガー・ライト節を完全に印象付けました。
とくに『ホット・ファズ』は最高だったな...
そんなエドガー・ライトが遂にハリウッド進出!
実は今作の前に、MCU『アントマン』を手がける予定だったみたいですが、マーベル側と意見が合わず降板。
エドガー・ライト版アントマンはマーベル史上最高の脚本だったという噂が聞こえてくる今となれば、やっぱりエドガー・ライト版も見たかった...
(もちろん引き継いだペイトン・リード版アントマンも最高でしたが!)
そんな大作降板の直後に、制作が発表されたのが今回の『ベイビー・ドライバー』。
主演には、『きっと、星のせいじゃない。』で脆くもキュートな難病を抱える少年を演じた、アンセル・エルゴートが抜擢されました。
この映画の何がそんなにクレイジーなのか...
ベイビーフェイスなイケメン、アンセル・エルゴートが演じる通称BABY。
彼は、子供時代に両親を亡くす事故に襲われます。
その事故の後遺症により、彼は耳鳴りが止まなくなってしまうのですが、唯一「音楽」だけがその耳鳴りから解放してくれるのです。
事故がきっかけで狂い始めた彼の人生は散々で、今は借金を返す為に強盗等の犯罪者専用ドライバー「逃がし屋」を請け負っています。
『ザ・ドライバー』や、『ドライヴ』など名作映画で登場する職業ですが、今作の「逃がし屋」は一味違います。
先述した「音楽」が、天才的なドライブテクニックを発揮するスイッチとなります。
今作ではそれらベイビーが耳にする音楽が、劇中歌として全編BGMとなっています。
ここまでであれば、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『オデッセイ』を筆頭とする近年の流行りの延長線上なんですが...
今作がその一連のムーブメントからずば抜けているのは、作中全てのカーアクションにガンアクション、些細な行動までもがベイビーの聴く音楽と一体化している点。
全ての行動がベイビーの聴く音楽のビートを刻んでるかのように流れていくのです。
小手先の技でなく、アイデア段階から落とし込む的確なビジョン、それを実現する為の細部まで徹底された演出、キレッキレに全体コーディネートされてるからこそ、驚くほどフレッシュな映画になっています!
驚くべき事にエドガー・ライト監督、今作のアイデアは21歳であった1994年の段階から持っていたようで、Mint Royaleの“Blue Song”のミュージックビデオで見る事ができます。
また、『ショーン・オブ・ザ・デッド』の一部にも使われていますね。
そもそも、映画全体を通してリズムを刻むようなテンポアップ描写というのは、以前からエドガー・ライト監督らしさを感じる要素でもあったなと改めて思い出しました。
そんな素晴らしき音楽とアクションの融合。
この映画を大好きになった理由は、そこだけではありません。
まず一つが、キレッキレにコーディネートされた描写を手段に語られる、非常に純度の高い愛の物語そのものです。
両親の死以来、現実感のないベイビーが生きる世界。
ベイビーにとってそんな無色な現実からの「逃避」に必要なのが、「音楽」による現実への色付け。
つまり、「音楽」は耳鳴り対策や天才ドライバーとしてのスイッチだけでなく、どうしようもないこの世界での「逃避」手段として機能しており、
この映画が見せる音楽でコーディネートされた世界は、ベイビー目線での逃避世界なのです。
そんな音楽を込めないと直視できない現実の中、デボラとの出会いが無色な世界に、初めて色を付けてくれます。
運命的な出会いと同時に始まる、避けられない逃避行への道。
特に前代未聞にロマンチックに仕上げたコインランドリーでのデートシーンは最高でした。
「逃避」という観点に着目してすると、見えてくる関係性もあります。
男性ホルモン全開ジョン・ハム演じるバディは、最愛の恋人ダーリンと登場から一貫してイチャつきっぱなしです。
しかし、彼は唯一ベイビーの音楽に対して共感する犯罪者であり、唯一ベイビーが笑顔を見せる相手です。
それだけでなく途中人間的な弱さも垣間見せ、その弱さが実はベイビーと同期しているという事が暗示させます。
だからこそバディを襲う悲劇、そして彼のとるある狂気の纏った行動に対して共感しっぱなしで...何なら途中泣いてしまいました。
もちろんジェイミー・フォックス演じる'狂人'バッツや、ケヴィン・スペイシー演じる'いるだけで悪人'ドク等、それ以外のキャラクターも最高でした。
そして極めつけはラストに対する衝撃。
この手の映画の終わらせ方からは想像出来ないケジメの付け方、正しすぎる作品の終わらせ方に鳥肌が止まらず...
何だよエドガー・ライト!面白いだけでなく、正しいって、どれ程完璧なんだよ!
他にもマイケル・マンを彷彿とさせる超重厚ガンアクションや、途轍もなく幅の広い音楽のチョイスなど、もっともっと褒めたい!
映画のネタ切れ?黙らんしゃい。
オリジナル作品でも、ここまで面白い作品が出来るんだぞ!と叫びたくなる大傑作。
超オススメです!
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