新境地だけども、是枝ワールド。
『三度目の殺人』
~あらすじ~勝つことを第一目標に掲げる弁護士の重盛(福山雅治)は、殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を渋々引き受ける。クビになった工場の社長を手にかけ、さらに死体に火を付けた容疑で起訴され犯行も自供しており、ほぼ死刑が確定しているような裁判だった。しかし、三隅と顔を合わせるうちに重盛の考えは変化していく。三隅の犯行動機への疑念を一つ一つひもとく重盛だったが……。
(シネトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆☆(80/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし) 是枝作品に外れなし。名実共に日本を代表する映画監督、是枝裕和最新作!
2016年6月に当ブログで扱った超傑作
『海よりもまだ深く』(リンク先レビュー)からまだ1年と少し。
このスパンで安定超良質な日本映画を観れるありがたさを実感しています。
ドキュメンタリーのような撮り方で、日常に転がる普遍的な何かを浮かび上がらせる天才。
それでいて、しっかり面白さは持続させる。
見終えた後の余韻に感じる作家性とか、役者の魅力を引き出すのが上手いとか、子供の演技を引き出す是枝マジックとか...
褒め出すとキリがない、是枝監督の長編12作目はなんとなんと法廷サスペンスで新境地!?主演は『そして父になる』以来、二度目のタッグとなる国民的スターでマルチローラーの福山雅治。
共演するのが、是枝監督が「日本で一番演技の上手い俳優」と讃える役所広司、『海街diary』で是枝マジックの演出を受けた広瀬すず。
他にも、今話題の斉藤由貴や、満島真之介、吉田鋼太郎が魅力を引き出されております。
普通に生活をしていると特別意識する事はない何か。
しかし、確実に私たちの生活に密接している。
上記からすぐに連想される「家族」を描く事が多い是枝監督ですが、今作で監督が注目したのは「司法」です。
福山雅治演じる弁護士の重盛。
彼は、被告を勝たせる事が全てで、真実は重要ではないと考えています。
一見傲慢に見える彼の姿勢ですが、弁護士は司法制度の中では唯一被告の味方であり、ある意味では司法制度が弁護士のあるべき姿をそのように求めていると言っていいのかもしれません。
実際に何が事実かではなく、
「何を事実にするか」こそが裁判の全てだという論理は、劇中の是枝監督お得意のドキュメンタリチックな演出で納得させられていきます。
しかし、今回弁護する被告は訳が違います。
役所広司演じる三隅は、首になった職場の工場長を殺害。
計画的な殺意はなかったという「事実」で裁判を戦おうとする重盛ですが...
供述を二転三転させる役所広司演じる三隅によって翻弄されます。
それにより、
「真実にたどり着く事」を必要としない裁判制度の中で、「真実を作る事」すらも揺るがされていく...本来あった司法制度の危うさに対して、更に一石を投じて非常にサスペンスフルな状況に追い込んでいきます。
そんな中で見えてきた「真実」のような何か。
しかし!?ラスト近くで更に転換する状況。
語らなさ、わからなさによって、見ている物は願望を込めて真実を作っていく。私達が普段
真実と思っている物すらも、裁判の中で作られていく真実と違いなく、それも「作られた真実」なのかもしれない...何が三度目なのか。犯人はだれなのか。
オープンエンドな結末。
是枝監督すらも「わからない」という真相。
それでも惹きつける。
いや、
それこそが真実の真理だからなのか...!?と感じた時、震えが止まりませんでした。
この余韻...やっぱり是枝監督の映画そのものでした。
超絶脚本と演出だけでなく、この映画を語るのに欠かせないのが
役者陣の熱演です。
特に福山雅治と役所広司の面会室での、言葉による殴り合い、ボクシング。
二人の熱のこもった演技が、この作品の格を一段も二段も引き上げています。
もちろん、広瀬すずや満島真之介、吉田鋼太郎らの演技も素晴らしいです。
今回本当嬉しいのが、内容はもちろんながら、実際に大ヒットを記録している事。
ここに来るまでキャスティングやプロモーションなど多少の折れはあっただろうけど、
自らの作家性を貫いた結果、名と実が両立した稀代の映画監督になったという、この事実が本当価値ある事だなと感じています。
やっぱり是枝監督、大好きだなぁとしみじみ感じました。
日本が世界に誇る映画、是非見てください!
オススメです!!
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画
- 2017/09/26(火) 18:39:25|
- 2017年公開映画
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| トラックバック:19
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| コメント:0
【出演】
福山 雅治
役所 広司
広瀬 すず
【ストーリー】
勝つことを第一目標に掲げる弁護士の重盛は、殺人の前科がある三隅の弁護を渋々引き受ける。クビになった工場の社長を手にかけ、さらに死体に火を付けた容疑で起訴され犯行も自供しており、ほぼ死刑が確定...
- 2017/09/26(火) 22:21:00 |
- 西京極 紫の館
タコ、ニモ、カナリア、ウサギ、ゾウと会話に動物は出てくるが、映像はない・・・
- 2017/09/26(火) 22:21:44 |
- ネタバレ映画館
他人の命を奪う。自分に嘘をつく。そして見て見ぬふりをする。どれも「人」を殺めること。
家族ドラマでお馴染みの是枝裕和監督がオリジナル脚本で挑んだ法廷サスペンス。しかしこれは法廷サスペンスとして最後まで走り切れず、無意識のうちに十八番の人間ドラマを重視し...
- 2017/09/26(火) 23:00:36 |
- こねたみっくす
内容、台詞、ラストに触れています。『三度目の殺人』THE THIRD MURDER 監督 : 是枝裕和出演 : 福山雅治、役所広司、広瀬すず、吉田鋼太郎、斉藤由貴、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、
- 2017/09/26(火) 23:06:35 |
- 映画雑記・COLOR of CINEMA
『そして父になる』などの是枝裕和監督の最新作。
主演は『そして父になる』以来のタッグとなる福山雅治。
弁護士の重盛(福山雅治)は友人の摂津(吉田鋼太郎)に頼まれ、殺人の前科を持つ男・三隅(役所広司)の弁護を引き受ける。三隅は解雇された工場の社長を殺し、死体に火をつけたことを認めている。勝ちにこだわる重盛にとっては、この事件に関わることは気が進まない。接見を重ねるたびに三...
- 2017/09/26(火) 23:13:10 |
- 映画批評的妄想覚え書き/日々是口実
『三度目の殺人』を、TOHOシネマズ渋谷で見ました。
(1)是枝監督の作品ということで映画館に行ってきました。
本作(注1)の冒頭では、夜間、二人の男が河原を歩いています。
突然、後ろに歩いている三隅(役所広司)が、前を歩いている男の頭を手にしていたスパ...
- 2017/09/27(水) 05:40:27 |
- 映画的・絵画的・音楽的
日本 サスペンス 監督:是枝裕和 出演:福山雅治 役所広司
- 2017/09/27(水) 13:05:22 |
- 風情☭の不安多事な冒険 Part.5
第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作『そして父になる』の福山雅治と是枝裕和監督が再び組んだ法廷サスペンス。死刑が確実視されている殺人犯の弁護を引き受けた弁護士が、犯人と交流するうちに動機に疑念を抱くようになり、真実を知ろうとするさまを描く。弁護士や検事...
- 2017/09/27(水) 13:31:45 |
- パピとママ映画のblog
映画『三度目の殺人』は、かなりの曲者。東宝の、福山雅治/役所広司・広瀬すず主演の
- 2017/09/27(水) 13:43:07 |
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□作品オフィシャルサイト 「三度目の殺人」□監督・脚本 是枝裕和□キャスト 福山雅治、役所広司、広瀬すず、満島真之介、市川実日子■鑑賞日 9月10日(日)■劇 場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想>
その「器}とは・・・?役所福...
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- 京の昼寝~♪
“真実”の正体とは。
てっきり原作ものだと思っていたら、オリジナルだとは。
二度目の強盗殺人で逮捕され、すぐに自供するもコロコロと供述を変える容疑者・三隅と、彼に振り回される敏腕弁護士・重森。
最初から死刑確実、「負け」が決まった単純な裁判のはずが、事件の背景を調査するうちに、重森の中で少しずつ有罪の確信が揺らいでゆく。
なぜ三隅は殺したのか?彼は本当に犯人なのか?なぜ供述をか...
- 2017/09/27(水) 21:26:56 |
- ノラネコの呑んで観るシネマ
是枝裕和監督最新作『三度目の殺人』、ロードショウで鑑賞しました。
近作は『海よりもまだ深く』『海街diary』と心温まるヒューマンドラマが続いていた同監督。
最新作は、殺人事件を中心した法廷ミステリー。
前置きは簡潔に、さて、映画。
- 2017/09/27(水) 21:56:57 |
- キネマのマ ~ りゃんひさ 映画レビューなどなど
2017年・日本/フジテレビ=アミューズ=ギャガ配給:東宝、ギャガ 監督:是枝裕和 原案:是枝裕和 脚本:是枝裕和 撮影:瀧本幹也 製作:小川晋一、原田知明、依田巽 殺人犯の弁護を引き受けた弁護士が主
- 2017/09/28(木) 23:54:25 |
- お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法
殺人の前科のある男・三隅による殺人。弁護士・重盛にとってはありふれた事件のはずであったが、事件を調べていくうちに、事件の持つ闇に深まり、次第に重盛は自信を失っていく。
『そして父になる』『海街diary』でヒューマンドラマを描いてきた是枝裕和監督が描いたサ...
- 2017/09/29(金) 08:18:51 |
- 勝手に映画評
推測される真実はあるけれど、真相は闇の中。闇の中、というより、もがきながらその場所で生き続ける人の心の中。是枝裕和監督作品。扱っている題材は決してマイルドなものではないのに、少しマイルドな気がした。何故そう感じたのだろうか?一部ネタバレがあります。30年間殺人罪で刑期を務めた男が、娑婆で慎ましやかな暮らしを送る中、又しても殺人を犯した。解雇された勤務先の工場長を殺害し、死体に火を放ったのだ。...
- 2017/09/29(金) 12:58:04 |
- ここなつ映画レビュー
これは事件の真相を暴く推理ものでもなく、法廷劇でもない。
そのほとんどが接見室で繰り広げられる心理劇。
勝った負けたの先にある弁護士・重盛の「弁護士から人間へ」変化していく心の動きを見事に描き切った物語なのだ。
- 2017/09/29(金) 13:37:47 |
- ノルウェー暮らし・イン・原宿
殺人の前科がある男・三隅が、解雇された工場の社長を殺し火をつけた容疑で起訴された。 犯行も自供し死刑はほぼ確実だったが、弁護士・重盛は何とか無期懲役に持ち込もうと調査を始める。 ところが、三隅の供述は会うたびに変わり、動機も二転三転。 さらに三隅と被害者の家族との接点も浮かび上がった。 そして、ある秘密に辿り着く…。 法廷ドラマ。
- 2017/09/29(金) 23:13:42 |
- 象のロケット
☆☆☆☆- (10段階評価で 8)
9月9日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター8にて 16:10の回を鑑賞。
- 2017/10/02(月) 14:12:32 |
- みはいる・BのB