トム・フォード監督最新作!
『ノクターナル・アニマルズ』

~あらすじ~
アートギャラリーの経営者スーザン(エイミー・アダムス)は、夫ハットン(アーミー・ハマー)と裕福な生活をしていたが、心は空っぽだった。ある日彼女のもとに、20年前に離婚した元夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書いた「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」という小説が届く。
☆☆☆☆☆☆☆(70/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
グッチやイヴ・サンローランで活躍後、自らのファッションブランドを手がける世界的ファッションデザイナーのトム・フォード。
映画のブログで何故ファッション!?となりますが、ファッションデザイナーの彼が映画監督として手がけるのが、今作『ノクターナル・アニマルズ』。
『シングルマン』で鮮烈な監督デビューを果たした彼が、7年ぶりに満を持して挑む最新作は、オースティン・ライトの小説「ミステリ原稿」を基にしたミステリーで、見事ヴェネツィア国際映画祭審査員大賞を受賞しています。
天は二物を与えますな...
主演は『メッセージ』や『アメリカン・ハッスル』等のエイミー・アダムス。
成功を手にするも心が満たされない女性スーザンを演じます。
彼女の元夫であるエドワードを、『ナイト・クローラー』や『ブロークバック・マウンテン』の我らがジェイク・ギレンホールが演じます。
冒頭のクセ!
観た者全て、頭から離れない冒頭。
こんな事言っていいのかわからないが、生理的に拒絶してしまう映像が、芸術として描かれます。
そこに心ここにあらずな表情でたたずむスーザン。
芸術とは?成功とは?
スーザンの内心を非常にシニカルに印象づける冒頭から、心鷲掴みにされます。
今作の構成は、成功を得ながらも空虚な生活を送る原題パートを中心に、
「過去に何かがあった」元夫から送られてきた小説の世界を描く劇中劇の二層構成で進行します。
この小説の目的とは?過去に何があったのか?
こんな謎を出し引きしながらも、劇中劇のあまりの不条理さに圧倒。
現実パートの謎と劇中劇の不条理が重層的に積み上がっていきます。
画面に映る配色から構図を含めて映像と、そこに被さる音楽。
そして上で記した語り口の巧みさ。
「只ならぬ予感」を作り出し、ぐいぐいと関心を引いていきます。
アート的な映像なんだけで、面白さが堪える事がない。
デビッド・リンチを彷彿とさせる、監督トム・フォードのセンスに脱帽です。
そして、この映画で触れないといけないのはラストの解釈ですよね。
核心には避けますが、一部ネタバレも含まれるので注意してください。
私は以下3つの解釈が存在すると思っています。
まず、一つ目が
「ハットンは自らが失くした物を小説を利用してスーザンに突きつけ思い知らせた上、ラストの行動で失望させるという、復讐をしていた。」という最もシンプルな解釈です。
ノクターナル・アニマルズという劇中小説のタイトルは現実ではスーザンの事ですが、劇中劇では野蛮な男達の事ですよね...
そして二つ目は、更に掘り下げます。
「ハットンは劇中劇の主人公含む様々な登場人物をスーザンに被せて書いており、それにより彼女を試した」という事です。
スーザンは劇中劇で主人公をハットンに写し変えていましたが、それは間違いという事ですね。
内容を表面的に捉えるスーザンは勘違いをし、実は成功を重視しているスーザンは才能を見せたハットンに飛びついた。
「何も変わっていないどころか、あなたが嫌悪した母に似ていってるよ」という事を思い知らせたという事になります。
ちなみに原作の原題はTony and Susan。劇中劇の男性と現実のスーザンが何故か対比されています。
そして三つ目はぶっ飛びます。
「小説はハットンの作品ではなく、二重人格?夜行性のスーザン自身が手がけた作品である」という事です。
実際に現実パートでなぜかハットンは登場しません。
スーザンの寝不足は精神的な物ではなく創作活動によるもので、ノクターナル・アニマルズとは自己表現が唯一出来る夜のスーザンを意味するのかもしれません。
利己的な昼のスーザン自身は、自己表現をする夜の自分を認識しておらず、過去の旦那からの物だと自分の中ででっち上げて、その内容を持って贖罪をしているのでしょうか。
ラストで彼女は夜のスーザン、つまり自己表現が出来る本来の姿になったという事でしょう。
正直、正解は様々なレビューを見ても、結論は出てません。
むしろそれが面白いのかもしれません。
議論したい!!
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