不完全な人間こそを、愛でようではないか。
アカデミー賞大本命!
『スリー・ビルボード』
~あらすじ~ミズーリ州の田舎町。7か月ほど前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。彼女は、警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬する彼の部下や町の人々に脅されても、決して屈しなかった。やがて事態は思わぬ方へ動き始め……。
(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆☆(85/100)以下 レビュー(核心のネタバレなし) 賞レースの封切りとなるトロント国際映画祭で最高賞の観客賞、ゴールデングローブ賞のドラマ部門で作品賞、混戦の今年度アカデミー賞において堂々と本命と言われているのがこの作品。
監督を務めるのは、『セブン・サイコパス』のマーティン・マクドナーさん。
これから何度も耳にするであろう、マーティン・マクドナーという名を是非覚えておいて下さい!
出演陣も通好みで、娘を失った母をオスカー女優のフランシス・マクドーマンドが演じ、ウディ・ハレルソンやサム・ロックウェルらが共演します。
オスカー最有力は伊達じゃない!!!レイプ殺人により殺された娘の母ミルドレッド。
彼女は大通り沿いの3つの看板に、捜査を進展させない警察、更には警察署長を名指しする過激な抗議文を設置します。
残虐に殺された娘の母とあって、観客は彼女に容易に同情しそうな所ですが...
そんな予感はあっさりと彼方へ。
導入から数分で、既に
彼女の欠落した何かがボロボロと見えて行きます。
対する事態を一向に進展させない警察署長は、冒頭から嫌悪の対象になりそうな所、彼の人格者っぷり、更には同情せざる得ない”ある事実”が浮かび上がってきます。
では彼の部下の差別主義者ディクソンこそが敵になっていくのかというと、そんな安直な結末も決して迎えません。
彼ら
正義と悪が入り乱れた一筋縄では行かない登場人物が、映画を静かにかつ驚きの向きに動かしていきます。では誰が娘を犯して殺した犯人なのか...
何度もそんなミステリーになりそうになるのですが、やはり決してそんな生易しい展開には終始しません。
登場人物それぞれ(もちろん観ている我々も!)は自分の目線しか持たず、
一人称でしか世界を語れない。
そんな人間の不完全さが、ボタンを掛け違えたよに...観ている者や劇中の人物すらも思ってもいない残酷な方向へと物語をスライドさせていきます。「おいおい、この先一体どうなっていくのか...」
悲劇と僅かなブラックコメディ的なバランスも見事で、横滑りをするストーリーにおいて、観る者の興味をグイグイと引っ張っていきます。そんな人間の不完全さによる悲劇、軋轢がピークに達した時...
非常に強烈な名シーンにおいて、この映画は見事な転調を見せます。人の不完全な性が、取り返しのつかない悲劇を生むのであれば、
それらから悔い学び這い上がらせるのも人の性だったりする。
不完全さこそを愛でるこの映画、身終えた後に濃密な余韻が残りました。
アメリカ南部という土地柄も活きており、本当どいつもこいつも三者三様に保守顔なんですが、その南部感が映画を面白く、より深く、そして生き物にしてる事は確かです。
アカデミー主演女優賞有力のフランシス・マクドーマンドの静かで怒りに満ちた複雑の演技は勿論素晴らしいのですが、印象に残るのは差別主義者の警察官を演じるサム・ロックウェル。
クソ野郎だけども、それだけではない多層的なキャラクターを、非常に印象的に演じています。
彼の助演男優賞も文句なし。
人間の性を描き濃密でありつつ、しっかり面白い。
アカデミー賞最有力作品を是非劇場で!!!
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こ
テーマ:映画感想 - ジャンル:映画
- 2018/02/13(火) 23:35:04|
- 2018年公開映画
-
| トラックバック:12
-
| コメント:1
こんばんは。純粋に暴力を描きながら、それが正しいか悪いかは、その場で決まるもので、その行動に力を持たせようとする、ミルドレッドの剛腕にねじ伏せられて、それでも、彼女に付いて行きたくなる不思議な映画でした。
ラストはとても印象的でしたが、そんな恐いミルドレッドを恐れない事から、彼女との愛は始まるものだという事でしょう。犯人捜しは途上なれど、ハッピーエンドでしたね。
- 2018/03/11(日) 18:22:03 |
- URL |
- 隆 #vGaKzaDM
- [ 編集 ]
『スリー・ビルボード』 を鑑賞しました。
TOHOシネマズ上野はまだ新しい匂いがしていた。
本来なら11月1日に行っていたはずであるが・・・今頃になってしまった。
【ストーリー】
ミズーリ州の田舎町。7か月ほど前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。彼女は、警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬...
- 2018/02/14(水) 22:42:25 |
- 気ままな映画生活 -適当なコメントですが、よければどうぞ!-
監督・脚本のマーティン・マクドナーは演劇の世界ではすでにかなり評価されている人とのこと。長編映画としては『ヒットマンズ・レクイエム』『セブン・サイコパス』がある。
原題は「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri」。
舞台は米ミズーリ州の架空の田舎町エビング。その町外れに3つの広告が掲げられる。そこにはレイプ殺人の犯人が未だに捕...
- 2018/02/14(水) 22:49:39 |
- 映画批評的妄想覚え書き/日々是口実
映画『スリー・ビルボード』は、フランシス・マクド-マンドが主演でアメリカの田舎が
- 2018/02/14(水) 23:20:09 |
- 大江戸時夫の東京温度
「スリー・ビルボード」 TOHOシネマズシャンテ米ミズーリ州の田舎町で、7ヶ月前に娘を殺された主婦のミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)が、進展しない犯人探しに業を煮
- 2018/02/14(水) 23:26:40 |
- Spice -映画・本・美術の日記-
映画 『スリー・ビルボード(日本語字幕版)』(公式)を本日、劇場鑑賞。採点は、★★★★☆(最高5つ星で、4つ)。100点満点なら80点にします。
ディレクター目線のざっくりストーリー
ミズーリ州の田舎町で、数か月前に何者かに娘を殺された女性ミルドレッドは、犯人は捕まらず警察の捜査も一向に進展しないことに腹を立て、さびれた道路に3枚の看板...
- 2018/02/15(木) 09:50:24 |
- ディレクターの目線blog@FC2
「ファーゴ」のフランシス・マクドーマンドが娘を殺された母親の怒りと悲しみを体現して絶賛された衝撃のサスペンス・ドラマ。アメリカの田舎町を舞台に、主人公がいつまでも犯人を捕まえられない警察に怒りの看板広告を掲げたことをきっかけに、町の住人それぞれが抱える怒りや葛藤が剥き出しになっていくさまを、ダークなユーモアを織り交ぜつつ、予測不能のストーリー展開でスリリングに描き出す。共演はウディ・ハレルソ...
- 2018/02/15(木) 17:27:14 |
- 映画に夢中
怒りを、燃やし尽くせ。
期待に違わぬ面白さ!
アメリカ中西部、ミズーリ州の片田舎で展開する、珠玉の人間ドラマだ。
何者かに娘を殺された母親が、遅々として進まぬ捜査に苛立ち、街外れに立つ三枚のビルボードに警察署長を批判する広告を出す。
この行動が波紋を呼び、やがて小さな街に予期せぬ嵐が巻き起こるのである。
ネタ集めのため本物のサイコパスを募集した脚本家が、創作に現実を侵食され...
- 2018/02/15(木) 20:21:09 |
- ノラネコの呑んで観るシネマ
Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
2017年/イギリス・アメリカ (監)マーティン・マクドナー
(演)フランシス・マクドーマンド ウディ・ハレルソン サム・ロックウエル アビー・コーニッシュ ジョン・ホークス ピーター・ディンクレイジ ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
☆☆☆★★★
- 2018/02/17(土) 23:59:18 |
- ごみつ通信
アメリカ・ミズーリ州の田舎町エビング。 さびれた道路沿いの広告看板に、地元警察の署長ウィルビーを批判するメッセージが表示される。 それは、7ヶ月前に娘を殺された母親ミルドレッドが、進展しない捜査に腹を立てて出した広告だった。 人望あるウィルビーを攻撃したことで、ミルドレッドは非難を浴びることに…。 クライム・サスペンス。
- 2018/02/19(月) 09:16:42 |
- 象のロケット
何しろ脚本が面白い!
何が起こるか、話がどうなっていくのか、予測もつかない方向へ、そして思いつきもしなかった結末へ。
しかも憤怒のかたまりでしかなかった母親が、後悔と苦悩の姿を垣間見せる中盤から、まさかずっと涙することになるとは思ってもみなくて…
- 2018/02/19(月) 14:50:05 |
- ノルウェー暮らし・イン・原宿