昨年のカンヌ国際映画祭 最高賞パルムドール受賞作
『雪の轍』

~あらすじ~
カッパドキアのホテル・オセロのオーナーで元俳優のアイドゥン(ハルク・ビルギナー)。彼は、慈善活動をしている若く美しい妻ニハル(メリサ・ソゼン)と暮らしながら時おり地元紙にエッセーを書いきながら暮らしている。そしてそこにほ妹ネジラ(デメット・アクバ)が夫と別れて戻ってきている。
ある日、アイドゥンが車で出かけていると、家賃を滞納している家の少年から車の窓に石を投げられる。この事件をきっかけに、アイドゥン、妻、妹、隣人、友人のそれぞれの内面が次第に明らかになっていく・・・
☆☆☆☆☆☆☆☆(80/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
~パルムドール受賞作~
今作は2014年のカンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールを受賞。
個人的には、パルムドール受賞作は合わないことが多く、
重苦しかったり、芸術性が高かったりするのだろうと不安が多い中での鑑賞だったが・・・
ごめんなさい。スリリングで、熱量に溢れ、めちゃくちゃ面白かった!!
さて、今作はトルコの世界遺産、カッパドキアが舞台。
哀愁に満ちたカッパドキアの季節の風景の変化が、作品に味わいをもたらす。
特に、作品終盤の人物達がもがく様子と、雪で覆われた岩石遺跡群の風景のマッチングは
心に深く沁み込んでくる。
そして、監督はヌリ・ビケル・ジャイラン
カンヌ国際映画祭をはじめ、ヨーロッパのあらゆる映画祭で名前が挙がる監督。
トルコ映画史上最も高い評価を得た作品と言われる、『冬の街』をはじめ、
『スリー・モンキーズ』『昔々、アナトリアで』等ヒット作を連発しているが、
実は今作『雪の轍』が日本では劇場初公開になる。
~正論と間違えが混沌とした人物関係~
間違いを持っていても、決して非難をできない。
正論を並べていても、決して正しいとは言えない。
今作では、そんなあらゆる立場の人物が登場する。
自らの尊厳の為に、分かったフリをし哲学的な言葉を並べるアイドゥン。
心の穴を埋めるために、正しいことをしようとするニハル。
自分にない事を批判対象とし、自らの失敗から逃げるネジラ。
現実を受け入れながらも貧乏で不器用で、他者に当たるイスマイル。
そんな彼らの言葉は、
間違えだらけでも同情を禁じ得なかったり・・・
自己擁護の為の正論を並べていたりするだけだったり・・・
自らの尊厳の為の表面的な優しさであったり・・・
とにかく、セリフと感情がまったく一致せず、
その表面的なセリフが一つ一つが刃物となって、突きつけあったりする。
かと思えば、決して重苦しい展開ばかりではなく、
悲劇が喜劇に代わる瞬間も存在する。
熱量に溢れたこの映画を、どう説明するべきか分からないが・・・・
人間の弱さを突きつける3時間16分
一切退屈することなく、会話という一つの手段によって
人間の深みを広げ続ける。
見ていて一向に飽きが来ないどころか、時間が経過するごとに面白味がインフレしていく。
スリリングな会話劇と、情緒あふれる風景。
エンターテイメントとしても抜群に面白ので、是非見ておくれ!!
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