『孤狼の血』

~あらすじ~
昭和63年、広島の呉原では暴力団組織が街を牛耳り、新勢力である広島の巨大組織五十子会系「加古村組」と地元の「尾谷組」がにらみ合っていた。ある日、加古村組の関連企業の社員が行方不明になる。ベテラン刑事の刑事二課主任・大上章吾(役所広司)巡査部長は、そこに殺人事件の匂いをかぎ取り、新米の日岡秀一(松坂桃李)巡査と共に捜査に乗り出す。
(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆☆(85/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
日本エンタメ系映画界で、最も旬な存在
『彼女がその名を知らない鳥たち』や『日本で一番悪い奴ら』、『凶悪』やの白石和彌監督最新作!
「普通」から外れた人と「普通」の世界のズレが、躍動たっぷりに物語をうねらせていく。
一言で言うとこんなジャンルが、白石監督によって、新たな日本映画の定番になりつつある。
そのくらい、今日本映画界で大きなキーマンになりつつある監督です!
柚月裕子さんが2015年刊行の小説を原作に、W主演を務めるのは、日本映画界だ変えの効かない位置に達した役所広司と、その階段を怒涛の勢いで登りつつある松坂桃李。
二人とも大好きな俳優さんと言うこともあり、これだけで見る価値あり!と思っていた所...
その周りを固めるのは、真木よう子、遠藤憲一、江口洋介、ピエール瀧、石橋蓮司、中村倫也、音尾琢真、嶋田久作、阿部純子といった豪華な面々。
さすがかつての東映ブランド復活を掲げた実録物で、渋く濃い面々を集中させた『アウトレイジ』とはまた違う、個性豊かな面々が集まりました。
東映実録物といえば、『仁義なき戦い』を中心としま70年代~80年代の一大ブランド。
菅原文太や松方英樹、梅宮辰夫、渡哲也など数々のスターを生み出した訳ですが、そんな東映ブランドは90年代に一気に収束。
この手の硬派なジャンル映画は、現在では完全に韓国の物に...
ふざけるな!と。
そんな意気込みで、「東映の回帰」を目指した本作ですが、現代に通ずるテーマと映画の密度は遥かに過去の東映を上回る、見事な現代的再生に成功しています!
舞台は、極道映画全盛であり、極道が見た目で判別可能だった時代で、昭和末期の暴力団対策法施行以前の広島。
ヤクザ以上にヤクザな方法で騒動を抑えようとする大上と、
配属されたばかりの優等警察官の日岡
汚れた先輩と純潔な新人。
これは、白石監督自身の警官内汚職を描く『世界で一番悪い奴ら』や、対マフィアの傑作『トレーニングデイ』、職業は違えど『SCOOP!』のような、定型的な設定ですが、そこからの物語としての振り方は作品によって異なります。
では今作はというと、
ルックはど真ん中の極道映画である事は間違いありません。
次々に展開される出来事はどれも強烈で、パンチが効きすぎて笑っちゃうほど。
(俺の真珠が欲しいじゃろかー!?)
それでいて、そこに画面に熱量を込めるのが秀逸な白石監督の手腕が乗っかると...
熱量半端ない画面の力で、怒涛の勢いで転がっていく物語を前のめりで魅せきる、これぞ「白石監督の手腕ここにあり」な極道映画になっています。
一方で、ドラマとしては『トレーニングデイ』のようなハードボイルド警察物としての系譜。
バディを組む中で、正義とは何なのかを揺るがし、過去の時代を生きた者から今の時代を生きる者への継承の物語へと繋がっていきます。
過去の時代を生きる人=大上。
彼がが関与すると、スクリーンに必ず過激でパンチのあるシーンが映ります。
勿論それは物語上で意味も帯びているので、二重で引き込まれます。
そんな大上のやり方は、日岡目線では余りに横暴で法外で、黙認出来る物ではありません。
しかし、彼の「横暴さ」が、次第に「ある想い」の強調に見え始め...
牢獄とは?ロープとは?
詳しくは書きませんが、大上の理屈が、見る見られる関係の入れ替わりという純映画的な手法で明らかになった時、サブイボが止まりませんでした!
密度が素晴らしく濃ゆい映画になっているのは、勿論白石監督の手話だけでなく、役者陣の素晴らしさがあってこそ。
役所広司は相変わらずスクリーンとの相性抜群。
彼が映ってるだけで、映画を映画たる物にする力が加わっているとさえ感じてしまいます。
そして、何より松坂桃李
目の奥から感じる何か...表面上の感情とはまた別の意味合いをスクリーンに帯びさせてくれる間違いなく映画向きの俳優さんだと思ってます。
勿論、彼ら以外も端から端まで最高で、
江口洋介は相変わらず持っていくし、真木よう子の姐御っぷりは惚れるし、石橋蓮司の引き締める存在感も素晴らしい。
後は個人的には阿部純子が印象的で、ぶっちゃけ惚れました...!?
復活!?
いやいや、
邦画の最前線ここにあり!な傑作極道エンターテイメント。
是非劇場で!おススメ!!
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