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70『モリのいる場所に』力の抜けた至極の秀作!

確かな監督×確かな役者=確かな空気

『モリのいる場所』



~あらすじ~
画家の守一(山崎努)は、草木が生え、いろいろな種類の生きものが住み着く自宅の庭を眺めることを30年以上日課にしていた。妻と暮らす守一の家には、守一の写真を撮る若い写真家の藤田、看板を描いてもらおうとする温泉旅館の主人、隣人の夫婦など、来客がひっきりなしだった。
(シネマトゥデイ引用)







☆☆☆☆☆☆(70/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)

傑作青春映画の『横道世之介』や、『南極料理人』、『滝を見にいく』の沖田修一監督の最新作。

本当は大きな物語なんだけと、その中の非常にミニマムな部分をユーモア交えて切り取って、そこにある空気までを共感させてくれる...
大好きな監督さんの一人です!

そんな沖田作品には二度目の登場となる名優山崎努が昭和の名画家・熊谷守一を演じ、これまた名優樹木希林がその妻を演じます。
文学座の先輩後輩であるこの二人は始めての共演で、しかも監督が沖田修一なんだから、観ないわけには行きません!




今作の主人公となるのは、熊谷守一ことモリ。
明治から昭和にかけて活躍した画家で、
特に晩年の彼の絵は、昭和天皇に「何歳が書いた絵だ?」と言われた程、極めてシンプルに物事を描くと独特の画風が有名です。

「仙人」のような風貌と行動。

「30年自宅を出たことがない」!?


本作は、そんな驚きの晩年を過ごしたモリの、94歳になった家での妻との何気ない1日を描く、非常にミニマムな作品になってます。



冒頭から、余りに馴染みすぎて凄いのが、モリを演じる御歳81歳の山崎努の怪演っぷり。

そもそも、山崎努は熊谷守一さんの絵画に魅せられた一人で、本作も彼が沖田修一監督に記念館を紹介した事がキッカケとのこと。

そして、企画が上がったと同時に、モリ役に立候補する程ですから、81歳とは思えぬ気合の入りよう。

そんな名優山崎努に名画家熊谷守一が乗り移ったような...
モリがスクリーンに生きている感覚が、99分に渡って堪能出来ます。




色々言い伝えのあるモリの逸話ですが、本作はそんな逸話を無理なく一日に閉じ込めます。

彼の行動範囲を語る導入に始まり、
寝そべってアリを数時間観察したり、
名誉ある賞を、めんどくさいと辞退したり...


悟り世代ど真ん中のカメラマンが、モリの家を取材する中で驚きを目にしていくのですが、
そんな彼の目線で、我々も山崎努に乗り移ったモリの行動の面白さを、堪能する事が出来ます。

そんな彼の仙人間にどんどん魅力される中で、
彼にとっての宇宙である庭で、彼の視界に映る世界、そこに住む生き物を含めた自然の秒単位の変化までが魅力的に見える不思議。

ミニマムな環境で魅せられるモリの行動を通じて、我々が住む世界の豊かさまで追体験させてくれるんです!




それにしても、沖田監督の作品は温かい。

人は物体が全てではなく、空気にこそ形跡が投影されていて、そんな感覚が本当に心地よい。

劇中で何も起こっていなくても、彼らの存在が、劇場全体の空気に染み渡ってくるんだよなー



もちろん、樹木希林も『万引き家族』とは違ったり角度で素晴らしいです。

宇宙人エピソードは、少し唐突でしたが...

沖田修一監督プロデュースの山崎努×樹木希林
少なくとも、今この瞬間にしかお目にかかれない、奇跡のような空気が作品に流れている...

そんなリアルタイムに奇跡の空気を、是非劇場で浴びて下さい!!




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