ウェス・アンダーソン監督から日本へのラブレター
『犬ヶ島』

~あらすじ~
近未来の日本で、伝染病の犬インフルエンザが大流行し、犬たちは「犬ヶ島」に隔離される。12歳の少年アタリは、捕らわれた愛犬スポッツを捜すため、メガ崎市からたった一人で小型飛行機を操縦し犬ヶ島へと降り立つ。島で出会った5匹の犬とアタリは、心の距離を少しずつ縮めていき……。
(シネマトゥデイ引用)
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(70/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『グランド・ブタペスト・ホテル』や『ムーンライト・キングダム』のウェス・アンダーソン監督最新作!
「オモチャ箱をひっくり返したような作品」なんて例えられる程、族に言う「お洒落」な作品を撮る、世界で唯一無二な映画監督。
独特の色彩感覚と几帳面が過ぎる左右対称な美術、そして基本垂直移動なカメラワーク。
そんな監督の技術の集大成となったのが前作『グランド・ブタペスト・ホテル』でした。
今作は、『ファンタスティック Mr.FOX』以来のストップモーションアニメーションです!
出演はもちろん、犬、犬、犬...
なんですが、アテレコをする俳優女優は豪華絢爛。
ビル・マーレイ、エドワード・ノートン、ティルダ・スウィントン、スカーレット・ヨハンソン、グレタ・ガーウィグ、ブライアン・クランストン、ヨーコ・オノなどなど。
よくもまぁ集めたなと。
今作はストップモーションアニメ、いわゆる人形劇ですが、同じく日本を舞台とした『KUBO』のような緻密さではなく、人形の手触りや荒さを前面に残しています。
そんなアナログ感こそウェス・アンダーソン印で、今作も「よくも、まぁ」と溜め息が出るほどお洒落に映像が展開していきます。
このアナログ感たっぷりなアニメーションの中に、ウェス・アンダーソンによるオリジナルな日本要素がふんだんに混ぜ込まれています。
日本の下町描写、桃太郎的物語感覚、太鼓にふんどし、相撲シーン、明治初期的な時代感覚、黒澤明的な人物造形...
随所に散りばめられた日本語の使い方も含めて、物語上の使い方は余りにいびつも、一つ一つの表現には嘘はありません。
オモチャ箱として例えられる彼の作品ですが、日本人には出来ないカット&ペーストな日本描写により、本作はオモチャ=日本のカルチャーな遊び心がひっくり返された作品になっています!
そしてもう一つ加えるなら、非常に抽象的なストーリテリングにも特徴があります。
物語の展開、人物のフェードイン/アウトのさせ方など...
突っ込みどころは満載で、普通の映画に比べると凄く不自然な所も多い。
なのに、 前述した映像表現にも計算され尽くした歪さがあるからこそ、物語の歪さが不思議と魅力的に見えてきます。
だけども...
その歪さが、人を選ぶ映画にしているのかなと。
少なくとも、『グランドブタペストホテル』に比べると、個人的には今作はイマイチ乗れず。
主人公の造形が自分にはダメで、生物的な感情や変化が感じられず、「彼自体が物語を動かす人形と化してる」とすら感じてしまいました。
だから、途中から非常に単調な映画に感じてしまったのでしょうか...
後、こちらはより個人的な見方ですが、ラストに向かって収束していく動物への倫理観、ペットに対する考え方は、全然納得いかないです。
しかし、途方もなく凄い作品なのは、間違いなし。
日本へのリスペクトをひっくり返した作品!
是非、劇場にて!
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