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劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

○75 『バケモノの子』 師弟、そして親子の物語へ

君となら・・・強くなれる。

待ってました!!細田守監督最新作
『バケモノの子』

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~あらすじ~
母親を事故で無くした9歳の少年・蓮。父親とは既に縁を切っていたため、親戚の家に引き取られる所、家を飛び出し、人間界・渋谷をあてもなく歩いていた。
父も母も知らずに育ったバケモノ・熊鉄。彼はバケモノ界・渋天街の次期「宗師」候補の一人と言われるほどの力を持ちながら、子供も弟子を持たず、悪友のバケモノ多々良と百秋坊と、粗暴に暮らしていた。
少年は、人間界に来ていた熊鉄と遭遇、追いかけているうちにバケモノ界に紛れ込んでしまう。異世界の風景、バケモノたちに驚く蓮であったが、再び熊鉄が目の前に現れる。蓮は熊鉄の弟子になる事を決意、「九太」という名が与えられる事に。二人はぶつかり合いながらも徐々に信頼し合っていくが・・・・
一人ぼっちの人間と、ひとりぼっちにバケモノが出会い、子弟、そして親子の物語が始まる。










☆☆☆☆☆☆☆(75/100

以下 レビュー(核心のネタバレなし)

~緻密に組み込まれた映像美~
間もなく公開される『インサイド・ヘッド』のピクサーに対抗できる
唯一の日本人アニメクリエーターと言っても良いかもしれない
『おおかみこどもの雨と雪』や、『サマーウォーズ』、『時をかける少女』の
細田守大先生の最新作。

待ってました!!!!

構図を客観視させる引きのショットと、
躍動感を与える寄りのショットを効果的にちりばめ、
映像によって観客の感情の変化を巧みに操作する。
『おおかみこどもの雨と雪』では、泣きすぎて目がもげた。
今作も成長描写等を定点カメラのように観察させたかと思えば、
ググッと顔に寄って、こちらの感情を爆発させるシーンなんかもある。

更に、細部までこだわりぬいた映像美も凄い
今作も、物語の背景となる渋谷の街並みと 渋天街がいちいちリンクしてたり
とにかく画面の中に情報量や意味合いを詰め込む。
その中で、物語のキモとなる部分は、しっかりと画面の真ん中に配置。
情報量やテーマがあふれている中でも、
決して散らばらせ過ぎる事はない。


そして何より、アニメーションでしか出せない画面の気持ち良さ。
後述するが、前半の文字通り画面上でムクムクと人物が変化していく様子は、
テーマとリンクして、気持ちよく泣かせてくれるし、
後半のSF的な描写も、気持ちよく高ぶらせてくれる。
どちらもアニメーションでしか出せない、特有の気持ちよさを味わえる。


~似たもの通しの二人~
九太は、父と母が大好きだった。しかし、両親の離婚で父は離れていき、母は事故で急に亡くなる。
親戚は言う。「事故だから仕方ないね・・・」「父親は赤の他人だから会えないの。」
「皆キライだ」「皆キライだ」「皆キライだ」「皆キライだ」

熊鉄は、自分一人の力で大きくなり、強くなった。
もう一人の「宗師」候補の猪王山は正反対に、二人の子供(一郎彦と次郎丸)と大勢の弟子がおり、人望も厚い。
自分は粗暴に見えるかもしれないが、この方法しか知らない。

似たもの通しの二人。
最初から周りを憎んでいる九太。
弟子に対してどう接していいか分からない熊鉄。
当然のように、二人は出会い、師弟になった頃から終始いがみ合う。

しかし、久太がある行動を始める事で、状況は次第に変わり始める・・・・
師匠の背中をみて、弟子は育つ。
弟子に教える事で、師匠も教わる。


その関係性は、師弟のそれにとどまらない。
互いに必要とし合い、かけがえのない存在へと変化していく。
父の背中をみて、子は育つ。
子に教える事で、父も教わる。


文字通り肉体的にムクムクと成長していくのと同時に、
依存とも取れる信頼関係が深まっていく様子を
映像の変化という手段だけで訴えかけてくる。
気持ち良く心に突き刺さり、中盤のこの時点で涙ボロボロ。

また、このムクムク成長描写は別の所でも意味を持つ。
「いつのまに・・・・こんなに大きく・・・」
子の成長の早さに戸惑う親の気持ちを体感させ、
またまた号泣・・・・



~心の闇~
今作は2部構成のような作りになっている。
偶然、久しぶりに人間界に帰ってきた九太は、女子高生の楓と出会う。
彼女と話しているうちに、人間らしい感情、「知的好奇心」と「恋心」を持つように。
バケモノ界で育った自分と、人間の自分。そんな中、実の父が現れ・・・・
一方、熊鉄は百秋坊との次期「宗師」を決める戦いが迫るが・・・

思えば、九太の心の中には小さい頃から穴があった。
「皆キライだ」
周囲を嫌ったり、憎んだり、ねたんだりするのは、人間特有の感情かもしれない。
そしてそれは時に自分や他人を傷つける。
しかし、穴に埋まった闇を取り出せるのは、これも人間特有の感情だけなのかもしれない。
愛を知る、全人類に捧ぐ。ってこういう事なのね。

序盤で熊鉄が九太への修行中に言う、
「心の剣を掴め」
この時点では、熊鉄の教え下手描写としての意味合いを持つ。
しかし、終盤にもう一度このセリフが登場するとき、
感情を鷲掴みにされる・・・・
その使い方はずるい・・・・


~取り囲む人物たち~
今作は、様々なバケモノが登場する。
最初は冷たく、口の悪いバケモノ。
支えとなり、度々助言をくれるバケモノ。
喧嘩を売ってくるが、後に親友になるバケモノ。

「俺がいるのは、あんた達のおかげだ。」
自分を形成していくのは、決して親の影響だけではない。
あらゆる人や環境があって、人は自分を創っていく。

そんな細田監督のメッセージが垣間見られる。


~わずかな不満~
様々なテーマが詰め込まれている中で、
後半から、特に終盤にかけて一気にSF寄りに印象を変えるのが違和感。
良い意味でも、悪い意味でも映像の気持ちよさで、無理やり乗り切っている印象。
言いたい事、テーマはわかるのだが...
少しテーマを奥に隠して、前半に後半の展開へのフリをもう少しあっても良かったのかなと感じる。

しかし、
チコが母の転生説や
バックに映る街並みの引用元の面白さや
白鯨の持つも物語中の意味など
他にも、まだまだ書き足りない事がある、膨大な情報量やテーマの中で、
散らばりすぎないギリギリのバランスを確保しているのはやはり流石!!

アニメーション独特の気持ちよさで、
感情を揺さぶられる体験を是非劇場で!!!





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  1. 2015/07/16(木) 23:56:27|
  2. 2015年公開映画
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