是枝監督の集大成。
『万引き家族』

~あらすじ~
治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は万引きを終えた帰り道で、寒さに震えるじゅり(佐々木みゆ)を見掛け家に連れて帰る。見ず知らずの子供と帰ってきた夫に困惑する信代(安藤サクラ)は、傷だらけの彼女を見て世話をすることにする。信代の妹の亜紀(松岡茉優)を含めた一家は、初枝(樹木希林)の年金を頼りに生活していたが……。
(シネマトゥデイ引用)
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(85/100)
『そして父になる』『海街diary』『誰も知らない』などの是枝監督最新作!
何よりまず、触れないと行けないのがコレ!
先日行われていた世界最大の映画祭、カンヌ国際映画祭。
これまで是枝監督は、『そして父になる』での審査員特別賞や、『誰も知らない』での史上最年少での最優秀男優賞など、カンヌ国際映画祭の常連として地位を築いてきた訳ですが...
遂に!長い歴史の中で、日本人としては3人目の最高賞、パルム・ドール受賞です!!
これまでも最も世界で評価されてる現役日本人監督でしたが、遂に名実ともに世界トップの映画監督の仲間入りです。
同じ日本人として、本当に誇らしい。
是枝監督、おめでとうございます!そして、ありがとうございます!!!
さてと、映画に戻ると...
非常にフラットに登場人物を描く為に、はっきりとした主人公のいない本作において、主演的な立場にいるのは是枝組のリリー・フランキー演じる"父"。
"母"を演じる安藤サクラや、"祖母"の樹木希林、"娘"の松岡茉優など、実力派の役者が集合。
加えて、子役のピカイチ演技を引き出す「台本を直前に渡す」という独特の是枝演出の標的となるのは、主役級の活躍を見せる"息子"の城桧吏と、オーディションで選ばれた"新たな家族"の佐々木みゆ。
もう先に言っちゃいますけど、大人も子供も、ナチュラルかつ鮮明に脳裏に焼きつく、化け物級の演技を披露してくれています!
東京のど真ん中、それでいて日の当たらない隙間のような家。
それが、社会的には決して「正しくない」彼ら家族の暮らす場所です。
"父"治は小学校の低学年程の"息子"翔太を連れて万引き、"母"信代はパート先で従業員の持ち物を盗み...
そんな物を売っては、"祖母"初代の年金??と合わせて、生活をしていきます。
決して広くも綺麗とも言えない、居心地の悪そうな家でのギリギリの暮らしは、犯罪に対して同情の余地を生み得るのかもしれまさん...
しかし、強く言っておかないと行けないのが、本作は決して「社会的に苦しい立場だから」という受動的弱者の目線で描かれる事はありません。
彼らの置かれた立場には、行動や考え方など、自業自得の側面が非常に大きい所があります。
社会で暮らす人間として擁護できない最低な側面と、目の前の人間に対する不思議な暖かさ。
一人一人の人間性に対しては肯定も否定もしない、そんな絶妙のバランスで家族をカメラが捉え続けます。
そんな彼らを、この世界と地繋ぎの愛すべきキャラクターへと昇華させるのは、映像作家としての是枝監督の手腕、その語り口にあるのでしょう。
一つ一つの会話や映像の切り取りが、少しずつ彼らの過去や、歪んだ関係性と苦しみを、大きな空白として暗示していきます。
今に至る経緯は?
彼らが抱える過去の出来事とは?
一人一人の関係性はどうなんだろうか?
それらは、全て語られる訳ではなく、絶妙な余白を残していきます。
そんな無数の余白を探れば探るほど、彼らの罪と苦しみの両面が見え隠れし、心が揺さぶられる...
シーンが空白を作り、空白がキャラクターの背景を広げ、作品全体に途轍もなく大きな奥行きを生んでいきます。
そしてこの映画の真髄はここから。
起承転結の転の部分で、大きな展開。
この映画を観ていて、唯一信じたくなる"彼ら家族の絆"さえも、非常に生々しく綻びを見せてしまいます。
家族とは??絆とは??
血縁、愛、優しさ、お金、居場所、利害関係...
ポジティブな側面だけが家族を成り立たせる訳でもなく、ネガティブな面が家族を否定するするわけではなく。
家族というのは、正負両面の複雑な計算式で、辛うじて成り立っていけるモノなのかとしれません。
そしてその計算式は、時間と共に変化する。
家族とはこれだ!の解なんてないんだと。
そして、それこそが家族なんかなと。
ラストの凛の表情を見た時、 「確かに家族であったんだ」と、一途的でしか成り立ち得ない家族の眩しさ、瞬間の尊さが思い起こされて、心に突き刺さりました...
更に極め付けは、この後も彼らの人生が繋がっていく事を匂わせる、ラストシーン。
この余韻が、是枝作品独特で好きなんだよなぁ
最初にも書きましたが、役者陣も本当素晴らしいです。
樹木希林の愛情と老獪さ、リリーフランキーの優しさの奥にあるダメさ、松岡茉優の家族への想いと暗闇、城桧吏の逞しさと葛藤...
どのキャラクターにも奥行きを感じさせる中、特に圧巻なのは安藤さくらの怪演!
彼女の母性による変化。
でも...その中てのどうしようもなさ...
そしてラストの涙...
カンヌで助演女優賞とってもおかしくなかったのでは!?
『誰も知らない』の舞台の中で、『海街diary』と『そして父になる』の更にその先を描く。
家族の形をさらに突き詰めて結果、家族に対する窓口が広がる、そんな是枝監督の集大成的作品。
是非、劇場で見てください!!!
オススメです!!!
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