感情と映像がリンクするピクサーの新たなチャレンジ
『インサイド・ヘッド』

~あらすじ~
ライリーの頭の中には5つの感情がいる。「ヨロコビ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」そして「カナシミ」
ライリーの誕生や成長と共に産まれた彼らは、彼女を守り、幸せにする為に日々奮闘している。しかし11歳になったある日、父親の都合で生まれ育ったミネソタから、大都会のサンフランシスコに引っ越しをする事に。ライリーを前向きな気持ちにする為に、「ヨロコビ」を中心に、良い思い出を思い出させたり、希望を感じさせたりする等、感情をコントロールしていたが、「カナシミ」が喜びに満ちた大切な思い出のボールに触ってしまった事をきっかけに、「カナシミ」と「ヨロコビ」は司令部から飛ばされてしまう。
二つの感情をコントロールできなくなったライリーは、心が次第に壊れていく・・・・
☆☆☆☆☆☆☆☆(80/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
~天才集団ピクサーズ~
ピクサー・アニメーション・スタジオといえば、傑作シリーズ「トイストーリー」に始まり、
「モンスターズ・インク」「ファインディング・ニモ」「WALL・E」「カールじいさんの空飛ぶ家」など、
大人も子供も楽しめる、完成度のめちゃくちゃ高いアニメ映画を連発。
ピクサーは、世界中から集められた天才アニメーターの集まりであり、
映画の作り方も独特である。
・独断体制はとらない。脚本は10人以上に担当を分け、練り込みに2~3年掛ける。
(この手法は最近ディズニー本体でも取り入れられている。)
・CGアニメーションの進化に作品毎に挑戦し、キャラクターの感情を巧みに操る。
天才アニメーターが独断ではなく知恵を技術を寄せ集めて創りこむ。
「トイストーリ」に代表されるよう、
とんでもない世界観を映像で表現し、
毎回破綻なく脚本を作りこんだ上で、
現実社会の自分たちの胸の中をえぐってくる。
そんな彼らが、「脳内を映像で表現し、それが現実のキャラクターとリンクする」
こんな映画を創って、面白くない訳がない!!!
~感情を操るキャラクター~
脳内にいるキャラクターにはそれぞれライリーを守るための役割がある。
そしてそれぞれのキャラクターの性格も、役割とリンクしている。
ライリーを守るため!と思って行動しても、
それぞれにも性格があるので、必ずしもライリーの為になっていない事は多々ある。
「ヨロコビ」は、言葉通り、喜びを与え、幸せな気持ちにする。
「イカリ」は、時には他人に向いてしまうが、自分を鼓舞して、奮い立たせる。
「ムカムカ」は、害になるかも・・・なものを回避する。
「ビビリ」は、危険を察知して行動を抑制する。
「カナシミ」は・・・・不幸な気持ちにする??
今作の脚本は、心理学者を招いた事もあり、
感情が持つ役割・行動には、なるほど!!!と思う事ばかりだ。
感情キャラクターを利用した、笑える描写も多々。
父と母の会話と脳内キャラクターの行動や、ラストの様々な人?の脳内キャラクターの行動は爆笑必死。
~ライリーと感情が・・・~
冒頭から、この世界観を物語の必然として説明するように
小気味よくライリーの成長と脳内の感情の構成されていく様子を同時に映し出す。
そして、11歳のライリーの引っ越し時に感情たちがあたふたしている中、
「カナシミ」と「ヨロコビ」が司令部から飛ばされる事をきっかけに、物語が動き出す・・・
悲しみに満ちたキャラクターの「カナシミ」と、喜びに満ちたキャラクターの「ヨロコビ」は、
司令部に戻るために、ライリーの脳内のあらゆる部分を探検する。
記憶が集められている領域、夢を作り出す領域、創造の源となる領域。
それぞれの場所で、その場所場所特有のトラブルに巻き込まれていき、
内容がライリーの過去や夢とリンクしてたりする。
これが映像的にも、構成的にもフレッシュで最高に楽しい。
もちろん司令部でも残されたキャラクターがあたふたしている。
現実にありえない脳内キャラクターの行動を、ロジカルに現実のライリーの感情とリンクさせるように組み立てられた気持ちよさ。
この感情がないと・・・やばいぞ急げ!!というハラハラ要素があり、
感情を欠いたライリーの引っ越し後の行動は、現実的にも共感でき、
感情自身の成長や戻ってきた後のライリーの変化が巧みに交差しており、
感情の意義を最後に突きつけてくる
構図の巧みさ、穴の無さに、ぐうの音も出ない・・・すげえよピクサー。
~カナシミの意義(ここだけネタバレ注意)~
予告でも押し出している事だが、
この作品には「悲しみがある意味とは?」が常に付きまとう。
感情キャラクターレベルでも、「なぜ君がいるんだ」という扱いをされ続ける。
しかし・・・
悲しみがいるから、人の気持ちを汲めるし救えるし助けになることができる。
傷つくからこそ、傷つけない事が出来る。
このレベルの着地は、作品前から予想が出来た。
しかし・・・この作品はここでは決して収まらない。
思い出は、意味があって残っている。楽しい思い出も、悲しい思い出も。
カナシイ思いをした思い出が、今ではヨロコビの思い出になったりする。
イカリの感情を表現できた相手だから、ヨロコビの関係を築ける。
どんな感情にも意味がある。そしてそれらは一つでは完結しない。
一つの感情だけにとどまらい思い出が増え、複数の感情を持って行動する。
これが「成長」なのではないだろうか。
それと同時に、司令室もバージョンアップし、思い出の色が混色になっているなっているのも見逃せない。
心の打たれ具合という意味では、
他のピクサー傑作と比べていまいちとか、あるギャグがくどいとか僅かな(贅沢な)不満はあるけど・・・
こんなにもチャレンジ精神に溢れてて、
設定だけで決して終わらせない、素晴らしいフレッシュな映画、
大人こそが、劇場で味わうべき!!
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