『十二人の死にたい子どもたち』

~あらすじ~
それぞれの理由で安楽死を望み、廃病院の密室に集まった12人の少年少女は、そこで死体を見つける。死体が何者で自殺なのか他殺なのか、集まった12人の中に殺人犯がいるのか。やがて、12人の死にたい理由が明らかになっていく。
(シネマトゥデイ引用)
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️☆(65/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
○まずは作品について
「天地明察」や「マルドゥック・スクランブル」シリーズの人気作家、冲方丁による2015年刊行の同盟小説の映像化。
SF作家としても知られ、最近は「攻殻機動隊」シリーズなどのアニメ映画の脚本を担当する事が多かったのですが、実写映画としては「天地明察」以来の冲方丁原作の映画になります!
冲方丁さんの原作小説は勉強不足なんですが、その「天地明察」が中々の良作だったので、本作も楽しみにしています。
そんな本作の監督を務めるのは、「TRICK」シリーズや「人形の眠る家」なとの堤幸彦監督。
年1本以上のペースで、アクション・サスペンス・ドラマまであらゆるジャンルの大作を量産するヒットメーカーです。
あくまで個人的な印象としては、面白くなくはないけども、いわゆる作家性が弱く、どの映画も心の奥底にまでは入ってこない...平均点な映画が多いと感じています。
肝心の十二人の子供たちを演じる十二人のですが、これがまた豪華で若手俳優の見本市になっています。
杉咲花、新田真剣佑、北村匠海、高杉真宙など...
楽しみな面々が揃っています!
○ここから感想(ネタバレなし)
12人全員が同意したら、自殺が決行される。
そんな何ともめんどくさいルールで集まった自殺願望のある12人ですが、いつの間に謎の13人目の死体が!?
これからどんなサイコスリラーな展開が!?
と思いきや、その手の映画になっていく事はなく、寧ろ非常に丁寧な人間ドラマが展開されていきます。
12人いれば、それぞれ死にたい理由が異なる。
そんな中に謎の死体が出た事によって「直ぐには死ねなくなった人」 と「早く死ぬ必要が出てきた人」という両極の死への想いが、映画を動かし始めます。
死ぬという一つのベクトルに向かっていたはずの12人が、その理由の違いと一つの死体により生まれ始めた亀裂。
じゃあ、それぞれのベクトルが全く別かと言われるとそんな事はなく、ある人物の死にたい理由の告白が、その反発として別の人物の死にたい理由の告白を呼び起こす。
そんな状況があぶり出されていく過程と、そこから十二人十二様の社会に対する若者の叫びが響き渡る転換は脚本の妙が効いて、非常にエキサイティングでした。
この多様な思考の故のぶつかりと反論が、一つの真理を浮かび上がらせる会話劇の魅力は、『12人の怒れる男』や『12人の優しい日本人』のソレに近く、非常に期待が膨らむものでした。
しかしエンターテイメントを重視した映像化するにあたって、この映画の大きなウエイトを稚拙なトリックを素人学生が明らかにするというサスペンス側によってしまっています。
またそもそも、この題材の決定的にノイズになる要素なのが、「そんなに早く死にたいなら、一人で死ねば良いのに」というツッコミをせずにいられない点です。
たしかに、上手くそのツッコミを回避する「死にたい理由」を持つ人物も何人かいるのですが、そうでない人もチラホラ。
(このストレスを原作は如何に回避してるのか...興味があります。)
そんな全面に出た稚拙なサスペンスと、そもそもの題材の致命的ストレスが、多様な思考の故のぶつかりが一つの真理を浮かび上がらせる旨味に対して、ノイズにずっとなっているのが残念でした。
そんなノイズを凌駕しうるのが、役者陣の素晴らしさ。
役者陣は、スクリーンに映える役者さんばかりで、素晴らしかったです!!
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