アルゼンチン発、6本構成の超ブラックコメディ!!
『人生スイッチ』

~あらすじ~
あることがきっかけで、つまずき始める。そして登場人物の一人が抑制から吹っ切れる事で、まるで悪い冗談のような災難につながっていく・・・、ごく平凡な人々の姿をブラックユーモアを交えて活写する。
<おかえし> <おもてなし> <エンスト> <ヒーローになる為に><愚息> <HAPPY WEDDING>
様々な手法で描かれ、それぞれにブラックすぎるオチをもたらす6話のオムニバス。
☆☆☆☆☆☆☆☆(80/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
~6本仕立てのオムニバス!~
アルゼンチンの新鋭監督ダミアン・ジフロンによる長編映画3作目。
アカデミー賞外国語作品賞にノミネートされた本作。
なんと、本国アルゼンチンでは、アナ雪の2倍以上の興行収入を記録し、歴代1位に。
この映画見た人なら、この気持ちわかると思うが・・・・
アルゼンチン人、大丈夫かな・・・・・
それはともかく、カンヌのコンペディションでも高評価を得て、
rotten tomatoesでは96%の満足度を記録。
それを受けて、日本でもこの手の作品としては異例の公開規模で上映している。
この映画は、6本の独立したストーリーから構成されている。
なにも知らずに驚きを持って見てほしいので、超簡単なあらすじと魅力部分のみ。
①<おかえし>
最も短い飛行機の中でのお話。音楽批評家の男が隣に座っていた女性に話しかけると、偶然にも共通の知り合いがいることに気づき・・・・
「ちょっとした過去の行いがいつの間にか・・・」
②<おもてなし>
寂れたレストランで働く女性。そこに政治家の男がやってくる。なんとその男は自分の家族を破滅させた男だった。すると
コックがある提案を・・・
「ちょっとした気の迷いが、他者に・・・」
③<エンスト>
アウディに乗る男。前方をノロノロと走り道を譲らない車を追い抜き、ののしる。ところが車がパンクし、ノロノロ車に喧嘩を売られて・・・
「切れてやり返すが・・・」
④<ヒーローになる為に>
ビルの解体に携わる男。ある日、路上に止めていた車を不当な理由でレッカー移動されてしまう。警察に抗議しても相手にされず・・・しかもその騒動であらゆる波紋が・・・
「切れてやり過ぎると・・・」
⑤<愚息>
裕福な家庭。息子はある晩、妊婦をひき殺してしまい、事故現場から逃げて帰宅する。それを知ると両親は、お手伝いの男に大金を払う代わりに罪をかぶってもらうことを計画が・・・
「もう目的が・・・」
⑥<HAPPY WEDDING>
二人は幸せな結婚式を迎えるはずだった。新郎が自分の浮気相手を結婚式に招待し、新婦が式の最中にそれに気づいてしまう・・・
「切れた事で逆に・・・」
個人的には、<エンスト>のエスカレートして収拾がつかなくなっていく感じと、
<愚息>のこいつら・・・・(笑)の感じが大好き。
<HAPPY WEDDING>は中盤の展開は他の話と比べて無理がありすぎる(止めろよ・・・)けど
終わり方がたまらない・・・
どれしもが、結構えげつない悲劇で、当人としては大真面目なんだが、
どれしもが、最後にはにやにやしてしまう喜劇になっている。
その上、「俺の人生も捨てたもんじゃないな・・・」という希望的な感想すら抱く事が出来る。
注意してほしいのは、決してゲラゲラ笑える映画ではないです。
もしかしたら、嫌な気持ちになる人もいるかもしれません。
~6本に共通する物~
この映画が、内容に反して、希望的な後味になる理由を考えてみると、
3つの共通点が見えてくる。
まず一つ目が、
どの作品も誰かが鬱憤がたまり、切れてしまうという点。
自分ないしは周囲の人物が、ある方向に向かって吹っ切れてしまう事で、
どんどん収拾がつかなくなり、それによって自分ないしは周囲の人物に
悲劇がもたらされる、
人が切れてしまう事自身が悲劇に見えるストーリーもあれば、
誰かが切れてしまう事で、2次災害的に自分に悲劇が訪れるストーリーもある。
手段であれ、目的であれ
人が大真面目におかしくなっていく様の客観視は、ブラック喜劇の王道である。
そして二つ目は
どれも、自分たちのちょっとした行動が、関与しているという点。
少なからず、「ざまあみろ」感があるわけだ。
わけわからず、理不尽に不幸に落ちていく話しでは、後味が良いわけがない。
そして、その行動は・・・
自分でも全然やりうる行動だから、余計複雑な笑いが残る。
最後、三つ目は、
実はどれもハッピーエンドにも見えるという点。
もちろん、客観視するとどれもバッドエンド、バッド展開で、
それが逆に喜劇になっているのだが、
より主観的に、「彼は切れてどういう感情だったのか」等に注目すると、
彼にとってはハッピーエンドだぞ・・・という内容や
よくよく考えると棚から牡丹餅的に・・・という内容が見えてくる。
そんな悲劇と言い切れない話だからこそ、ある種の心地よさが残る。
~日本版への不満~
タイトル及び、「押したら最後」という謳い文句からは、
ある行動で、あれよあれよと不条理に落ちていく話を想像してしまうが、
決してそんな話ではない。
まだ、タイトルに関しては解釈によっては、「不幸へ転び落ちるスイッチ」以外にも
「切れてしまうスイッチ」「普段から押してしまっているスイッチ」と解釈可能だし、
ポップで内容が気になるタイトルだから良いとして、
疎い文句は嘘では・・・・
また、各エピソードについてる日本語のタイトルもひどい。
元の映像にもない事から、
バカな日本人の為に分かりやすくしてくれてるのだろう・・・
しかもそのタイトルが的外れの事・・・・
特に、<エンスト><ヒーローになる為に><愚息>
はひどい。内容みてないだろ・・・
とはいえ、なかなか日本では巡り会えないタイプの良質な映画。
このブラックを是非劇場で体感してください!!
ランキング登録しました。
気に入っていただけた方は、下記クリックをお願いします^ ^

にほんブログ村

映画ランキングへ

