『あの夜、マイアミで』

~あらすじ~
1964年2月、プロボクサーのカシアス・クレイ(後にモハメド・アリと改名)はヘビー級の世界王者となった。そんなカシアスを祝うために、友人たち(マルコムX、ジム・ブラウン、サム・クック)はマイアミに集まった。4人は純粋に酒を楽しむつもりだったが、話題が公民権運動に及ぶにつれ、「自分たちは差別に苦しむ同胞たちに何ができるのか、また、何をすべきなのか」という問題に向き合っていく。(Wikipedia引用)
8/10★★★★★☆☆☆
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
アマゾンオリジナル作品、Prime Video配信作品。『ビール・ストリートの恋人達』やテレビドラマで活躍するレジーナ・キングの映画監督デビュー作。昨年のトロント国際映画祭で最高賞(ノマドランド)に次ぐ次点を獲得し、批評家からも彼女の映画監督としての才能を絶賛する声が相次ぐなど、アカデミー賞への賞レースでも注文されている作品ですね。
伝説のボクサー モハメド・アリ(当時の名はカシアス・クレイ)、伝説のアメフト選手 ジム・ブラウン、伝説のミュージシャン サム・クック、かの黒人解放指導者 マルコムX。実際に友人でもあった4人が、これまた実際にマイアミの黒人専用モーテルに集まった1964年2月25日、その一室で"起こったであろう"会話劇がデフォルメされ展開される...その段階でもうただ事じゃない。
最初は和やかな会話が展開されるのですが、次第に話は「黒人としてのあるべき立ち振る舞い」という論点に。当時は今以上に人種差別が当然のように存在し、黒人解放運動の最重要期にあたるのですが、その中心人物であったマルコムXを中心に、影響力のある彼らの取るべき行動という観点で議論が展開されていきます。
この部屋で起こった出来事は、本来は「誰も知らない」はずなのですが、各人のキャラクターがその議論に反映されていて、それがめちゃくちゃ面白い、尚且つめちゃくちゃ勉強になる。当然ながら、同じ黒人といえども社会的立場と守るべき者の対象や価値観は違う訳で、そこに更に人間味のある弱さや傲慢さまで会話の中に込められていて、会話劇の面白さを通して、人種問題の根深さまで透けて見える強烈作品になっています。
本作で、映画監督デビューとなるレジーナ・キングですが、「これは凄いセンスだ」というのが、冒頭の4人それぞれの登場紹介シーケンスから既に伝わります。特にジム・ブラウンの登場よ。温厚でリベラルっぽい白人との、和む会話が展開されるのですが、「白人から見る黒人への優しさが、如何に歪で絶望的なのか」が一発の描写で表現されているのが、もう本当素晴らしかったです。レジーナ・キングの監督作品はこれからも要注意です!
人種問題という切り口の中で、同一人種の中での立場の違いを会話劇の面白さに繋げ、今まであまり無かった視点で根深さを考えさせられる、素晴らしい作品です!
オススメ!!
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