シネマ・ジャンプストリート

劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

☆9『すばらしき世界』彼はJOKERか。それとも

今年の邦画、豊作過ぎじゃね?

『すばらしき世界』



~あらすじ~
下町で暮らす短気な性格の三上(役所広司)は、強面の外見とは裏腹に、困っている人を放っておけない優しい一面も持っていた。過去に殺人を犯し、人生のほとんどを刑務所の中で過ごしてきた彼は、何とかまっとうに生きようともがき苦しむ。そんな三上に目をつけた、テレビマンの津乃田(仲野太賀)とプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)は、彼に取り入って彼をネタにしようと考えていた。(シネマトゥデイ引用)

9/10★★★★★☆☆☆☆

以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『ゆれる』『永い言い訳』など、ワールドワイドで日本を代表する映画監督の1人、西川美和が監督を手掛ける本作。佐木隆三の小説「身分帳」を原案に、さまざまな映画監督からNO1と讃えられる俳優、役所広司が主演を務めます。本作はシカゴ国際映画祭で観客賞と最優秀演技賞を受賞するなど、世界的にも絶賛されており、楽しみにしてました!

あらゆる角度から掘り下げを許す大傑作!

かつて反社に在籍した者が、10年の時を経て出所する。非寛容な社会において、悪戦苦闘する男を描く...これだけを見ると、現在公開中の傑作『ヤクザと家族』と重なるテーマ性ですが、本作は更にその先を多層的に描き出します。
非寛容な社会を一方通行で「原因」にする訳ではなく、本作において役所広司演じる「不器用で愚直」な男 三上から受け取る印象は、「可哀想」と感じる瞬間もあれば「キレやすくやばい奴」と感じる瞬間もあり、それが行ったり来たりするわけです。
決して悪い奴では無い。むしろ正義感が強い。けれどキレやすく、現代を生きるに必要な思慮深さがない。観ている我々はそんな彼が「頼むから極道の世界に戻るな」という感情で見ることになります。ある意味で日本版の『ジョーカー(2019)』の構図であるこの映画は、三上自身がJOKERに成りかねないバランスで終始していきます。

また、彼を支え応援する作家志望の津乃田(中野大賀)がこの映画を見る我々の視点と重なっていきます。行ったり来たりする三上の印象の変化は、書き手である彼が感じるそれと同期しているあたりうまい描き方をされているなーと。

三上を極道の世界に引き戻そうとする要因、それは非寛容な社会の問題なのか、それとも人間性の問題なのか...
本作では決してどっちにも寄らずに描かれるように感じます。少なくとも社会の協力と忍耐、そして周囲の人々の優しさが必要で、「社会は冷たくても人々は必ずしもそうではない」という本作での温かさに、涙が止まりませんでした。

そんな中で、衝撃なのがラストの「普通」になる事へのカウンターパンチ。凄まじき西川監督。震え上がりました。「普通」を強調する事によって、「普通」にたいする「おかしさ」の提示。そんな「普通」を受け入れられるか、起点を効かせる事が出来る人間だけが生きられる世界なわけで、本作のラストにはまたまた涙が...止まりません!!

ラストのタイトルコールのタイミングも抜群で、余韻が半端ない作品、ぜひ劇場で見てください!!

西川美和監督、役所広司、凄まじき!!


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