『あのこは貴族』

~あらすじ~
都会に生まれ、結婚こそが幸せという価値観を抱く20代後半の榛原華子(門脇麦)は、結婚を意識していた恋人に振られてしまう。名門女子校時代の同級生たちの結婚や出産を知って焦る彼女は相手探しに奔走し、良家出身で容姿端麗な弁護士・青木との結婚が決まる。一方の時岡美紀(水原希子)は富山から上京して慶應大学に進むものの中退、働いていてもやりがいを感じられず、恋人もおらず、東京で暮らす理由を見いだせずにいた。全く異なる生き方をしていた2人の人生が、思わぬ形で交わっていく。(シネマトゥデイ引用)
8/10★★★★★☆☆☆
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『グッド・ストライプス』の岨手由貴子が、山内マリコの同名小説を映画化。門脇麦を主演に迎え、水原希子と高良健吾が傍を固める。
本作の中心となる2人の女性、華子と美紀。前者は東京の上流階級家庭で育ったお嬢様で、後者は田舎の中流階級家庭で育ち東京で暮らす今どきの女性。作中の言葉を引用するなら、「異なる階級の人同士は決して出会わぬようになっている街」東京で、超絶良家の生まれである幸一郎を通し、瞬間的に交差する2人の女性の人生を切り取った映画です。
対比される女性2人、共に「女性としてかくあらん」という保守的なレールで育った共通点がありつつ、育ってきた階級と生活圏、人間関係、更には苦しみまで異なっており、似ているけど違うって距離感が絶妙で、東京で育ちと地方で育ち、上流階級と中流階級で、見ている世界の違いを本当に丁寧に汲み取っていくんです。
そしてこの2人が邂逅するとき...幸一郎を挟みドロドロした展開になっていくのかと思いきや...
それって男社会が決めたレールであり、枠組みであり、分断の構図なんだよねってのが、思い知らさせる、ちょっと予想していなかった展開になっていきます。
階級社会とか、はたまた男女の役割とか、それによる分断の構図とか...この映画全体を通して、既存の作られた社会構図に対する冷たくも否定できない視点が印象的で、男社会で形作られた人生のレールに乗せられた事で、悩んだり抗ったりする人々を切り取っています。
そんな人生のレールを象徴する存在なのが高良健吾演じる幸一郎です。
一見、余裕と品性のある良い男なんだけど、それはある意味女性を役割として見ているからというのが徐々に感じ取れていきます。でもそんな立場の幸一郎もまた、既定のレールの上で苦しみ諦めているのが窺え、映画の奥行きになっているんです。
セリフも本当に印象に残るものが多い。
「その日あったことを話せる相手がいるだけで とりあえず充分じゃない?」
この一言が印象的で、美紀が上京後ずっと求めていた物であり、華子が結婚後失っていく物として、言い当ててたりする。
形作られた人生のレールに乗せられた共通項がありつつ、異った立場の人々の見ている世界の違いを丁寧に映し出す傑作。
おすすめです!!
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