シネマ・ジャンプストリート

劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

☆7『ミナリ』家族で生きていくという事

家族で生きていくという事

『ミナリ』



~あらすじ~
1980年代、農業で成功したいと意気込む韓国系移民のジェイコブ(スティーヴン・ユァン)は、アメリカ・アーカンソー州に家族と共に移住。広大な荒地とおんぼろのトレーラーハウスを見た妻は、夫の無謀な冒険に危うさを感じる。一方、しっかり者の長女アンと好奇心豊かな弟デビッドは新天地に希望を見いだし、デビッドは口の悪い破天荒な祖母とも風変わりな絆を育む。しかし、干ばつなどのために窮地に立たされた一家をさらなる試練が襲う。(シネマトゥデイ引用)


7/10★★★★★☆☆

以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『君の名は。』実写版監督予定で注目の韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョンが監督を務める本作。『バーニング』のスティーヴン・ユァンが一家の父親を演じ、ハン・イェリ、ユン・ヨジョンが家族の一員として脇を固めます。
また、話題の映画スタジオA24とブラッド・ピットの制作会社プランBがタッグを組み、賞レースでも『ノマドランド』の対抗馬として多くの賞を受賞するなど、注目の作品です!

1980年代のアメリカを舞台に、韓国系の移民家族が、都会部から田舎へ引っ越してくる所から映画が始まります。半ば強引に農業での成功を夢見て家族を連れてきた父と、家族を支える母、そして韓国から助けに来た祖母を、終始子供の目線で捉え続けるのが非常に印象的です。
というのも、この映画は監督自身の経験を元に描いており、その視線が作中の少年の視点に重なって撮られていく訳ですが、同じく監督者自らの経験を元にした映画『ROMA』のように、登場人物達に寄り添うようや味わいがあります。そしてそんな少年目線での寄り添い方が、アメリカという国の成り立ちを考えた時に、韓国語の映画であるのに関わらず、近しい背景を持つ多くのアメリカ人にとってのパーソナルな映画になっています。

寄り添いの視点で写される家族の中、中心にいるのが父親とお婆ちゃんになります。まずこの父親、自分の夢に家族を巻き込んでいく迷惑なタイプの父親で、最初は強気に家族に夢を語っているのですが、農業での歯車が狂いだし、次第に引くに引けなくなっていく...そんな居た堪れなさが本作の一つの魅力になっています。
そして、何よりお婆ちゃんのキャラクター。アメリカの都会で育った子供達にとっては、韓国の田舎からやってきたお婆ちゃんの行動は、余りに不可解です。そんな子供達の目線同様、奇妙とお茶目の絶妙なラインで写さるお婆ちゃんは、めちゃくちゃ魅力的で、映画の推進力になっていきます。

このお婆ちゃんと子供達とのカルチャーギャップが、結果的に物語を大きく動かしていく事になります。
一見すると、お婆ちゃんの「ある行動」が家族にとって最悪の事態を引き起こしたように思えるのですが...見方を変え、「家族の物語」として捉えた時には、決してそうではありません。
お婆ちゃんがもたらす結末は、同じくお婆ちゃんが持ち込んだ『ミナリ』(=セリ)と重なり、どんな場所でも逞しく生きるであろう、この移民家族のこれからを言い当てている、そんな結末が素晴らしかったです。

この映画の素晴らしさは分かる反面、日本人感覚だと、少しこの映画の人物の動機(農業に夢を見たり、そこについていく家族の感覚とか)が飲み込みずらいかなとは感じました。


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  1. 2021/03/29(月) 00:57:03|
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