『ノマドランド』

~あらすじ~
アメリカ・ネバダ州に暮らす60代の女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)は、リーマンショックによる企業の倒産で住み慣れた家を失ってしまう。彼女はキャンピングカーに荷物を積み込み、車上生活をしながら過酷な季節労働の現場を渡り歩くことを余儀なくされる。現代の「ノマド(遊牧民)」として一日一日を必死に乗り越え、その過程で出会うノマドたちと苦楽を共にし、ファーンは広大な西部をさすらう。
(シネマトゥデイ引用)
7/10★★★★★☆☆
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
アカデミー賞受賞最有力、いや決定的となっている作品。監督は『ザ・ライダー』で一躍注目を浴びたクロエ・ジャオ。次作はMCUの『エターナルズ』を監督する、今ハリウッドで最も注目される監督です。主人公となるノマドの女性ファーンを演じるのはフランシス・マグドーマンド。この時点で絶対面白い。こちらも、アカデミー賞主演女優賞有力視されていますね。また、実際にノマドとして生活する人たちが出演するなど、かなりドキュメンタリー寄りの実験的作品でもあります。
オスカー最有力も大納得の傑作!
ノマド=車生活をおくる放浪者となったフランシス・マグドーマン演じるファーン。本作は雄大な大地の中で自らの人生を見つめ直す彼女が、同じくノマドである他者との会話や触れ合いを通して、様々な事が見えてくる作品になっています。
その一つが、ノマドを生むアメリカ社会の現状です。
ファーンが様々な人物と交流する中で、会話ややり取りから彼らの人物像が見えてくるんだけど、その奥にアメリカや現代消費社会が抱える様々な背景がうっすら見えてくる構図になってます。彼らノマドのバックグラウンドは一概には定義できないんですよね。ベトナム戦争、リーマンショック、競争社会での心の傷、明確な背景のない人もいる。また帰る家がある人もいればない人もいる。そんな様々な人生と現実を、悠々と広がる大地の美しさと対比しながら、見守るような視点で描かれていきます。
そしてまた他者とのを通して見えてくる、ファーン自身のノマドになった経緯と心の奥底に抱える感情も、とてつもなく心に染み渡るものになっています。作品を通して彼女へは寄りのショットが多用されており、そこでの表情の変化ってのが本当印象的で、語らずしも彼女の内心が伝わる事で、彼女の人生全体をどしっと受け止めるような心持ちになり、その上でのラストの感情の吐露に涙が止まりませんでした。
この映画は、都会部は殆ど映らずに、壮大な自然の中でのみ描かれていきます。そんな風景はあまりに美しく、ノマドの人達の「さよならは言わない。この生活を続けるといつかまた会えるから」という人生観であり死生観とも重なって、風景を観るだけで涙が出てきます。
自然と表情から、人生が重量感を持ってが伝わり心に染みる。
オスカーとっても、当然の大納得です!!
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