
~あらすじ~
犯罪組織を率いる父親(トニー・レオン)に幼いころから鍛え上げられ、最強の力を持ったシャン・チー(シム・リウ)は、組織の後継者とみなされていた。だが、彼は自らの力を封印し、過去の自分と決別してサンフランシスコでホテルマンとして平凡に暮らそうとする。だが、伝説の腕輪"テン・リングス"を操る父親が世界を恐怖に陥れようとしたため、シャン・チーはついに封印していた力を解き放つ。
(シネマトゥデイ引用)
8/10★★★★★☆☆☆
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『アベンジャーズ』シリーズなどマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の25作目。久しぶりの新たなヒーローの誕生譚を描く作品であり、シリーズ初めてメインでアジア人ヒーローを描く作品でもあります。
監督を務めるのは『黒い司法 0%からの奇跡』『ショート・ターム』などのデスティン・ダニエル・クレットン。ポジティブな面とネガティブな面の背反二律的な側面をもつ主人公が、ヒーロー的行動を取るドラマ作品を撮る監督で、そんな主人公の側面を物語上で表現するのに長けた監督なのかなと思います。
また、主人公には中国系カナダ人で、ホームコメディドラマなどに出ていたシム・リウを大抜擢。脇を固める面子が豪華で、『インファナル・アフェア』『HERO』などのトニー・レオン、『クレイジー・リッチ!』などのミシェル・ヨー、『フェアウェル』などのオークワフィナが共演します。
MCU作品の中で最大級に好き!
まず何が素晴らしかったって、MCU作品の中でも頭抜けるんじゃないかと思うアクションシーン。
基本的には中国武術を魅せる方向に進化させた武侠映画、いわゆるカンフー映画の系譜にあるアクションがベースなんですが、そのアクションの中でも様々なベクトルでの現代アップデート版をしっかり見せてくれています。
少林拳に代表される剛拳と、太極拳に代表される柔拳がしっかり分けて描かれていたり、もろにジャッキーアクション的なドタバタアクションがあったと思えば、チャウ・シンチーの『カンフーハッスル』やチャン・イーモウ『HERO』のようなカンフーアクションをVFXによってファンタジーに拡張したアクションがあったり、いわゆるカンフーアクション映画のあらゆる旨みをアップデートしてくれています。
更にそのアクション自体が楽しいってのもありつつ、それを決してサービスとして展開してるのではなく、ストーリー上の必然として多様性が必然的に発生しているように描かれてるのが、本当に素晴らしい。しかも、それが派手になっていく方向にドライブしていく為、テンションもずっと上がって行く方向に動くんですよね。
人物造形や配置、そこから展開されるストーリーが、盛り上がる順番でカンフーアクションの歴史をオマージュしながら回収していく...そりゃ面白いわ!
そんな中に出てくるのが、「テン・リングス」という武器。
いやまじ、この武器の使い方考えた人天才!?
この武器の登場頻度が、カンフーアクションのドライブしていく感じと重なって、テンション爆上げ。使い方が使う人によって変わるって言うのも、フレッシュさが持続するって意味でも、キャラクター性を強めるって意味でも、抜群に効いています。
そんなアクションに燃えながらも、実は今作で最も心が揺れたのが、ドラマと内面描写なんですよね。
本作は「家族」を描いた話で、その中で「ヒーローサイド」と「ヴィランサイド」に分かれてしまうって所が、物語背景になっているんですが、どちらサイドも凄い納得できる様な描き方をされているんです。何故「ヴィランサイド」の彼が盲信するのかも、その理由が凄い納得できるんでよすね。
そこには、キャラクター造形の描き方が秀逸だってのがあるんですが、序盤はあえて表面上の事しかわからなかったって所から、絶妙なタイミングで次第に過去を含めて背景が紐解かれて行く事で、ヒーローとヴィラン全方位的に共感を隠し得ない。
クライマックスはアクションのドライブと重なって、全員の目線で感情が入っちゃって、思わず泣いてしまいました。
後は、シャン・チー自身もキャラクター性もすごい良くて、「自己顕示欲」などの社会的欲求は全く無く、「善」と「悪」の要素を自分の中に持ってる事を認識している...真の強さを持つ等身大な人物造形が大好き。
新しく推しのヒーローが出てきましたよ。
そんなキャラクター性による、オフビートな抜けた展開も好きだし、トニーレオンやミシェル・ヨーはめちゃくちゃカッコ良く、オークワフィナのシャンチーとの掛け合いも最高。
これからのMCUが更に楽しみになりました!
オススメ!!

