
~あらすじ~
ヒーローチームが不在となった地球で、人類の行動が新たな脅威を呼び起こしてしまう。そんな中、7,000年にもわたって宇宙的規模の脅威から人類を見守ってきたエターナルズと呼ばれる10人の守護者たちが、数千年の時を経て次々と姿を現す。散り散りになっていた彼らは、人類滅亡まで7日しかないと知って再結集する。
9/10★★★★★☆☆☆☆
以下 レビュー(ネタバレなしです!!)
【作品背景】
『アベンジャーズ』シリーズなどマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の26作目になる本作。
7,000年にもわたってある脅威から人類を守って来た、「エターナルズ」つまりは永遠の者達を描く映画で、これまでのMCUシリーズの中で最も壮大で、今後の展開にも大きく関わってくる作品になります。
監督を務めるのは、『ノマドランド』で本年度のアカデミー賞を受賞した、クロエ・ジャオ。ノマドランドの公開前に本作の監督が決まっていたとはいえ、オスカーを受賞した直後の旬の監督がヒーロー映画を撮るのは異例中の異例だし、MCUの先見の明には脱帽です。
MCUがここまで成功している理由として、シリーズ全体の大きな流れを作りながらも、其々の単体映画の特徴に適した監督を選定しする事で、映画の特徴を見事に立たせてきた所があるので、クロエ・ジャオがMCUの中でどんなアイデンティティを見せて、それがどうシリーズと融合するのか、めちゃくちゃ楽しみですね。
また、クロエ・ジャオ自身がキャスティングに入ってる事もあって、かなり渋い面々を揃えています。
エターナルズメンバーの中でも、かなり主演に近いポジションの「セルシ」には『クレイジー・リッチ!』などのジェンマ・チャン、「イカロス」にはその彼女とプライベートでも親交のあるリチャード・マッデンを大抜擢。
その他、アンジェリーナ・ジョリーやバリー・コーガン、マ・ドンソクなど非常に個性的で多様なメンバーが脇を固めます。
【感想(ネタバレなし)】
結論から言うと、完成度と言う意味ではより優れた作品が他にあると思いますが、MCUの中で最大級に大好きな作品でした。
本作は、これまでのMCU世界観を内包しながらも、より壮大な「時間」と「空間」の中で物語を紡いく。
その為、あまりに壮大な世界を描き過ぎると、これまで描いて来たシリーズがちっぽけで意味のないものに見えかねないという懸念が観る前にあったのですが、全くそんな事はなく、これからのシリーズがめちゃくちゃ楽しみになる作品になってました。
特に上手いな、素晴らしいなと思ったのが、10人登場するエターナルズのキャラクターの描き方です。
起きている事件とそこに対する人類ベースの視点ではなく、彼ら「エターナルズ」の其々のパーソナリティに焦点を当ててて、寄り添いつつ見守るような視点が、素晴らしかったです。
我々人類にとっては高次の存在であり、彼らの人間を見守る視点自体は僕たちが持ち得ない視点なんですが、人間を俯瞰視した時に生じる多種多様なリアクションが10人のキャラクターを語っていて、そこでの彼らの多種多様な考え方はどれも神々視点での人間味を感じ腑に落ちるし、それを真っ向から否定せず見守るような視点が本当心地良かったですね。
観終えた後に本当に10人もいた?ってなるくらい、非人間の浮世離れしたキャラクターを描いてるのに、キャラクター全員に血が流れてちゃんと個性が立ってて、冗談抜きで全キャラクターが好きになりました。
そんな多様な個性と、連動するように練り上げらたアクションも素晴らしかったですよね。
日本のアニメの影響を確実に受けたであろうアクションも多々あって、クロエ・ジャオ監督のオタク心に驚きつつも、それぞれの戦い方や能力が個性を引き立てて、キャラクターの魅力を引き上げていました。
前作の『シャン・チー』でも感じたけど、VFX全盛とは言え、「アクションのパターンはもう限界でしょ」なんて思ってたら、余裕でそんな事なくて、今回もフレッシュで最高でした。
この点だけでも、MCUは突き抜けてるし、追う価値はあると再確認できました。
そんなエターナルズの面々を描く中で、彼らの視点から観た「人類」の姿と、そこに感じる多様な印象も同時に伝わってきます。
「愚か」で「美しい」、相反するような要素を併せ持つ多層多様で豊かな人間の姿がエターナルズの視点で見えてきて、彼ら同様に心が揺さぶられるのも素晴らしかったです。
本作、原爆投下の残酷な様子が「ある意味」を持って描かれるのですが、その「ある意味」をハリウッドで初めてちゃんと描いたのではないかな?と思い、めちゃくちゃ感心しました。
もう一つ、懸念としてあった「なぜエターナルズが、これまでの人類の危機に干渉してこならかった?」に対しても、納得の理由が語られてるのかなと思います。
それでいてその理由となる「人類とのギャップ」が、本作のエターナルズの成長や変化に活かされていくってのも、しっかり出来てるなと思いました。
クロエ・ジャオ監督の特徴としても、被写体の生き方を見守る距離感に作家性を感じる他、自然光を活かした雄大な映像もめちゃくちゃ効いてました。
一方で語り口はしっかり劇映画でモキュメンタリーっぽさは全くないので、劇映画として程よいチューニングで、クロエ・ジャオの入門編としても非常に良いのかなと思います。
一点だけ上げるなら、劇映画としての物語の終わらせ方には、本来その必要性がない映画を撮ってる監督という事もあり、強引さが出ちゃってるなってのだけ、惜しいなって感じた所です。
ただ、めちゃくちゃ大好きな作品で、何度も見返したくなるし、今後のMCUがさらに楽しみになりました。
オススメです!!!

