シネマ・ジャンプストリート

劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

☆9 『tick, tick...BOOM! :チック、チック...ブーン!』

『tick, tick...BOOM! :チック、チック...ブーン!』



~あらすじ~
1990年、アメリカ・ニューヨーク。30歳を目前にしたジョナサン(アンドリュー・ガーフィールド)はダイナーでウェイターとして働きながら、ミュージカル作曲家になることを夢見ていた。ロックミュージカルの楽曲に何年も取り組んできたが、恋人のスーザン(アレクサンドラ・シップ)は新たな夢のためにニューヨークを離れることを願い、ほかの仲間たちも夢を諦めようとしていた。(シネマトゥデイ引用)






9/10★★★★★☆☆☆☆

以下 レビュー(ネタバレなしです!!)

【作品背景】

今尚、世界中で上映され、映画化もされた名作ミュージカル『RENT/レント』。

その生みの親で、『RENT』公開前夜に35歳で悲劇の死をとげた天才ミュージカル作家ジョナサン・ラーソンが、自伝ミュージカルとして30歳で公開したミュージカル『tick, tick...BOOM! 』の映画化作品になります。

本作で監督を手掛けるのが、ジョナサン・ラーソンが現代で生きていたら...を地で行くような、『イン・ザ・ハイツ 』『ハミルトン』の天才ミュージカル作家のリン=マニュエル・ミランダ。

天才ミュージカル作家の長編映画監督デビューという事に加えて、彼自身ジョナサン・ラーソンがきっかけでミュージカル作家を目指し、大きく影響を受けていたり、『tick, tick...BOOM! 』の再演でジョナサン・ラーソンを演じたりするなど、かなり繋がりの強い人物で、この背景にも注目です。

ジョナサン・ラーソンを演じるのが、『アメージング・スパイダーマン』や『ハクソー・リッジ』のアンドリュー・ガーフィールド。
舞台出身でトニー賞を受賞するなど評価されてきた彼が、ミュージカル映画でどのようにジョナサン・ラーソンを体現するのか楽しみです。



【感想(ネタバレなし)】


ミュージカル映画としての楽しさを堪能しつつ、メタ的多層的に複雑に感情を揺さぶられる、超大傑作でした!!


本作はミュージカル『tick, tick...BOOM! 』を映画化するにあたり、ユニークなアプローチが取られています。

そのミュージカル自体は、ジョナサン・ラーソンが30歳目前に迫った中で、夢への挑戦のタイムリミットを感じながら、「恋人」や「友人」との距離の変化、それによるジョナサン自身の葛藤を描いていきます。

本作はそう言った30歳目前のミュージカルの内容をベースに膨らませて映像化しつつ、その元になったミュージカルを演じる30歳以後のジョナサン自身まで、切り替えながら映し出していきます。

そのため、ミュージカルの中身であり「時間」に焦る30歳目前の姿と、自身の過去を俯瞰する形でミュージカルを演じる30歳後の姿を同時に見ることになり、それが斬新で面白いんですし、その二つが合流する形になるラストはめちゃくちゃエモーショナルに上がりました。


そして、そこに更に効いてくるのが、「RENT」の成功を見守る事なく、「35歳で彼は亡くなる」という、観る側が知る現実。

劇中では、「時間」に対する捉え方の変化を描いているのに対して、私たちが知っているその現実はそれを否定するかのように働きかけていて、それから矛盾した「時間」に対する感情が沸いてくる為、めちゃくちゃ複雑で掻き乱されました。

人生は長いし短い。それがストンと入って為、「本当に豊かな映画を見たな」って、気持ちにさせられるんです。


また、元のミュージカルの中身の部分も、やはり素晴らしいなと思いました。

「夢」と「大切な人々」の扱い方が凄く良い。

必ずしも「大切な人々」と同じ道を歩める訳ではないが、ジョナサンが自分の進むべき道へ覚悟を決め歩み出す時は、必ず「大切な人々」と向き合った時だし、「大切な人々」はきっかけとして記憶に残り続ける。

まるで『ラ・ラ・ランド』のようなロマンチックさを併せ持つ映画だなと思いました。


また、楽曲も最高ですよね。

本作は映画の多層的な構造上、ミュージカル『tick, tick...BOOM! 』の楽曲、ジョナサンがその中で取り組む劇中劇の楽曲、そしてオリジナル楽曲が混ざりながら推進していくのですが、どれもジョナサン・ラーソンのポップでロックでキャッチーな楽曲センスわ感じられて最高でした。

多層的な構造と絡めながら、楽曲をどう見せて、どう当てはめるかは、監督リン=マニュエル・ミランダさんのセンスの良さが、全面に出ていて最高でした。


主演のアンドリュー・ガーフィールドはオスカー取ってもおかしくない公演でしたし、彼の仲間達もジョナサン・ラーソンの特徴の一つである多様性を感じさせてくれて、凄い良かったです。


年間ベストに間違いなく入れたいですし、超多層的に刹那に生きた彼を描く、最高の映画だと思います。

めちゃくちゃオススメです!!


  1. 2021/11/26(金) 12:11:39|
  2. 2021年公開映画
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