
~あらすじ~
1920年代のアメリカ・モンタナ州。周囲の人々に畏怖されている大牧場主のフィル(ベネディクト・カンバーバッチ)は、夫を亡くしたローズ(キルステン・ダンスト)とその息子ピーター(コディ・スミット=マクフィー)と出会う。ローズに心を奪われるフィルだったが、弟のジョージ(ジェシー・プレモンス)が彼女と心を通わせるようになって結婚してしまう。二人の結婚に納得できないフィルは弟夫婦に対して残忍な仕打ちを執拗(しつよう)に続けるが、ある事件を機に彼の胸中に変化が訪れる。
(シネマトゥデイ引用)
7/10★★★★★☆☆
以下 レビュー(ネタバレなしです!!)
【作品背景】
Netflixオリジナル映画、12月1日より配信が始まった作品ですが、一部劇場でも限定公開されています。
この作品、netflixオリジナル映画の中でもかなり早い段階から注目されていた作品になります。
というのも、ヴェネツィア国際映画祭で監督賞を受賞したり、トロント国際映画祭で最高賞である観客賞において次点に選ばれたり、来年のアカデミー賞においてnetflixオリジナル映画の中では最も作品賞に違いと言われています。
ただ、実際はそのトロントで最高賞を受賞した『ベルファスト』って映画が大本命なんですが、その作品に次ぐぐらいの期待値を持たれてる作品でもあります。
監督を勤めるのは、『ピアノ・レッスン』で脚本賞を受賞した、ニュージーランド出身の女性監督ジェーン・カンピオンさん。
本作で、アカデミー監督賞は取るんじゃないかなんて言われています。
主演を演じるのは、『ドクター・ストレンジ』や『イミテーション・ゲーム』のベネディクト・カンバーバッチ。
個性的な佇まいと演技力、両方を併せ持つ素晴らしい俳優で、彼もアカデミー賞の主演男優賞の有力候補だと言われています。
そんな本作、ベネディクト・カンバーバッチ演じる大牧場主のフィルが、同居する弟の再婚相手やその連れ子に冷たく残忍に接するんだけど、次第に彼の内面やバックグラウンドが露わになっていく...というストーリーになっています。
【感想(ネタバレなし)】
大胆で、繊細な、流石オスカー有力作という作品になってました。
まず、大胆な所。
本作、この映画はどういうジャンルの映画で、どこに主観があるのか...を問われると、めちゃくちゃ難しい作りになっています。
序盤、田舎町でレストラン兼宿泊所を営む女性と、彼女にアタックする大牧場主フィルの弟の視点をベースに、フィルによる無茶苦茶な仕打ちを受ける立場の視点がベースになっていて、印象としてはホラーのような印象を受けます。
それが次第に、フィル側の視点にいつの間にかシフトしていて、彼のバックグラウンドに触れる映画になっていく。
で、そういう映画だという風に観ていると...「ある人物」に視点が移り変わっていき...クライマックスではこの映画全体が別の映画に見えるような仕掛けがされてる。
その中でうまいなと思ったのが、ジャンルが変わる事を別に強調してる訳ではなくて、そういう手法を取ることによって、気づけるような一貫したテーマ、つまりは「罪、そして絶対的な断罪」というテーマが、浮かび上がってくるようになっています。
その中で凄く繊細に扱われているのが、大牧場主フィルの捉え方、描き方です。
彼を描くのに、決してダイレクトにバックグラウンドを語るなんて野暮な事はせずに、彼の発する言葉の積み重ねや、「誰にどう接しているか」という所から、観客が結びつける事でバックグラウンドや心情変化が浮かび上がる描き方をしてて、非常に映画的に描かれていきます。
なので、しっかり集中して映画と向き合って観ないと、ジャンルや視点が変わる中で入り切れるかや、フィルの心情やバックグラウンドを解釈出来るかって所に、ついていけない可能性は高いのかなと思います。
実は私自身は2回観てて、1回目は序盤の女性と弟の視点をひきづったまま見ていて、段々女性と弟のアクションが語られないまま話が転換していく為、それに強引さを感じてしまい乗れなかったんですが...
2回目は、しっかりフィルの視点に入り込めて、彼の内面を理解するという所に楽しみを見つけられたかなと思います。
かなり観る人を選ぶ映画なのかなと思いますが、間違いなく上質な映画であり、来年のアカデミー賞の主役になり得る作品ですので、是非観てほしいなと思います。
オススメです!

