『コードネーム U.N.C.L.E.』

~あらすじ~
舞台は東西冷戦の真っただ中の1960年代前半。米中央情報局(CIA)エージェントのソロと、ソ連国家保安委員会(KGB)エージェントのクリヤキンは、長年の敵対感情をひとまず忘れ、謎の国際犯罪組織撲滅の合同任務に乗り出す。
その組織は、核兵器と技術の拡散によって、世界の勢力バランスを揺るがし、破壊へと導こうと企んでいた。ふたりにとっての手がかりは、犯罪組織に潜入するための鍵となる失踪したドイツ人科学者の娘だけ。彼女を守りながら、彼らは時間切れになる前に科学者本人を捜しださなければならない。考え方もやり方も何もかも正反対の2人。果たして彼らは核爆弾大量生産の危機から世界を救えるのか!?
〈filmarks引用〉
☆☆☆☆☆☆☆(80/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
待ってました!『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』、『スナッチ』『シャーロックホームズ』のガイリッチー監督最新作。しかも今作は古き良きスパイ映画ときたもんだから....
スパイ映画といえば、近年、特に今年はリバイバルブームの流れが到来中。
大人気シリーズの『007』や『ミッションインポッシブル』は当然の事ながら、公開済みの激作『キングスマン』や日本では来年公開だが本国では賞レースに食い込む勢いの『ブリッジ・オブ・スパイ』、日本公開未定のトンデモコメディ物の『SPY』など、次々と違ったタイプのスパイ映画が押し寄せ中。
そんな中、今作と『キングスマン』は切っても切り離せない。
両者とも「俺たちの楽しいスバイ映画を取り戻せ!」の意気込みで、60、70年代テイストの良い意味でバカっぼいなスバイ映画を見事現代に甦らせてくれる。
「60年代イギリス風の現代」を舞台にしたキングスマンに対して、こちらは「時代設定を60年代に残したまま」描いている点(後述するが、しっかりとした理由がある)で多少の違いはある物の、シリアス化しているアクション映画の流れに一石を投じている点も含めて共通点が多い。
そして、キングスマンの監督マシュー・ボーンは、今作の監督ガイリッチーの元で、元々は製作を担当していたのだからさらに驚き...
「偶然」、元同僚が、同じようなタイミングで、同じような志の元、スバイ映画を世に送り出したという事になる。
今作の元ネタとなるのは、60年代スバイ映画の代表格である、『0011 ナポレオン・ソロ』。
残念ながら、拝見した事はないが、今でもオールドファンの多い名作シリーズ。物語の中心にいるのは、正反対の二人。
米CIAのプレイボーイで悪知恵がとびっきり働くナポレオン・ソロ。
旧ソKGBの短気で真面目な筋肉君の、イリア・クリヤキン。
米と旧ソ。冒頭からこんな立場の彼らが、東ベルリンで同じ女性を奪い合うのだから、激突は必死に。
しかし、彼らの目的は同じだという事が分かり、上司の命令で協力することになる。米と旧ソの協力なんて当時としたらアリエナイ事な上、ぶつかり合った二人だからこそ、序盤から二人の空気は最悪...もちろん性格の相性も最悪...
この「そもそも正反対の性格な上、ペアを組む事に納得の言っていない二人」のゴタゴタ感が映画の中心にあり、終始ニヤニヤが止まらない。
でも実は...
全く違うという事は、足し合わせると最強だという事。
噛み合わないながらも、噛み合わないからこそ自然と、前に進んでいく様の心地よさたるや。
最初から二人はお互いを補う合う最高のパートナーだった。
いがみ合いながらイチャイチャする。このブロマンスが中心にあるタッグ物は、『シャーロックホームズ』でも描いたガイリッチーの最近のお気に入り。
そこにキーとなる女性ギャビーを間に挟む事で『シャーロックホームズ』とはまた違った味を出す。
ブロマンス物としてニヤニヤする魅力がある一方で、その奥に漂う米ソ関係ならではの結末へ向けた「が、しかし....」という生々しさが見え隠れする。
ここが60年代を背景に残した所以で、現実ではどうしようもないしがらみがあるからこそ、今作の魅力「表面上とは異なる内の絆」がより強調され、終盤に向かっていくにつれ楽しさが加速するのと同調して、「さぁどうする!?」と心が熱く燃え上がっていく。
そして、彼らの下した結末。
そうだよな!!スバイ映画はそうでなきゃ!?という現実を吹き飛ばす程の清々しさに、もうなんともいえない楽しさが充満する。
もちろん、ブロマンス物としての魅力だけでなく、カッコよい...だけど少し間抜けにも見える!という、古き良きスパイ映画の空気感もニヤニヤを途切れさせない要因に。
異常医学者の拷問シーンや、カッコよいはずのクラシック音楽の使い方といい、とにかく楽しいシーンが目白押し。
とはいえアクション映画な訳で、「笑かしに行く事で話を止める」なんてのは絶対にダメ。
この点ガイリッチーの、楽しいというのを大前提にした上で、緊迫感のあるシーンとニヤニヤするシーンを織り交ぜて、テンポよく見せるバランス感覚はもはや職人の域...というか、画作りも含めて、もはや一つの音楽。
本当にこの極上のテンポがたまらないんだよな...
また今作ではガイリッチー節の、キーとなるシーンを飛ばして、後からその伏線を回収していく作りは、これまでのやり方と少し異なる。
とにかく回収するまでのスパンが短い。
とってつけたよう...って批判もあるが、自分はこの作品の、漫画的なまでのシャカシャカしたテンポの良さを増幅する効果を生んでいるようで、全く嫌いじゃない。
他にも、あのカット割り楽しいー!とか、カーチェイスの見せ方サイコー!とかまだまだ魅力が沢山。
もう少しキャラクターを対比化させる見せ場があっても...そもそも外見が似すぎてないか...?
とか、ガイリッチーのもう一つの魅力である緻密な脚本の再構築という点はなりを潜めてるな...
とか少し言いたいことはあるけれど、
こんなにもライトでポップで、楽しさに満ち溢れたスパイ映画を、スバイyearの今見ずにいつ見る!?
劇場で憂さ晴らしを!!
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