『ブラック・スキャンダル』

~あらすじ~
1970年代、サウス・ボストン。FBI捜査官コナリー(ジョエル・エドガートン)はアイルランド系マフィアのボスであるホワイティ(ジョニー・デップ)に、共通の敵であるイタリア系マフィアを協力して排除しようと持ちかける。
しかし徐々に歯止めのきかなくなったホワイティは法の網をかいくぐって絶大な権力を握るようになり、ボストンで最も危険なギャングへとのし上がっていく...
(映画.com 引用)
☆☆☆☆☆☆(65/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
私の大好きな、「常人には理解出来ない倫理観(本人は変だとは一切思っていない)物」でございます!
監督は「ファーナス/訣別の朝」のスコット・クーパー。
あちらは重厚な男のドラマを描いたカッコ渋い秀作でしたので、男三人の関係がピックアップされてる今作もきっとやってくれるだろうと期待せずにいられなかった訳です。
さてその三人というのが、個性の塊。
残酷なマフィアのトップ、ホワイティを演じるのが、今や個性派俳優の代表格となったジョニー・デップ。近年はキャラクター化された役ばかりでしたが、今作では全く違う側面のキャラクターを見せてくれます。
ホワイティに憧れ、手を組むよう提案するFBI捜査官コナリーには、「華麗なるギャツビー」のジョエル・エドガートン。ストーリーを前に進める役割を担います。
そして、ホワイティの弟で政治家のビリー・バルジャーを演じるのは、個性派演技派俳優として完全に定着した、ベネディクト・カンバーバッチ。しかしながら、宣伝から受ける印象とは異なり、ゲスト出演といってもいいような立ち位置です。
今作の最大の肝は、ジョニーデップ演じるホワイティのキャラクターでしょう。
冒頭から、組織の裏切り者はいとも簡単に、しかも普通の会話の延長線上にあるかのごとく、罪悪感皆無で殺す冷酷さを持つ一方で、母や愛人には異常に優しく気さくだったり...
全く持って常人の感覚では理解できません。「情のあるいい人では!?」と思った5分後には、その言葉を飲み込んでいるのです。
彼の良い人ぶりの、たった一つの根源は、人に対する「信頼」や「絆」です。
しかしある出来事によって、彼の大切にしている何かが崩壊した時、かろうじて人間性を感じられた部分まで、消滅が始まります。
背後で鳴る不穏な低音。彼の表面上だけの笑顔に言葉。なんども繰り返される描写ですが、確実に怒りのトリガーとなる要因のハードルは、時間と共にジリジリと下がっていきます。
この不穏な空気の後に確実に起こる何か...ここのゾクゾク感のインフレがたまりません。
もう一人の主役である、捜査官のコナリーはというと、ホワイティとは対照的な人間味のあるクソ野郎です。
手段を問わず結果だけを追い求めていた彼は、まがいなりにも優秀なFBI捜査官でした。
しかし、子供の頃に助けられ憧れを持っていたホワイティと手を組みだしてからは、そこにさらに「絆」という盲目的な要素が加わりだします。
ホワイティに良いように扱われているにも関わらず、自ら深みにはまっていき...
優秀な手腕で、周りの目をうまく「成果」へと誘導していたのですが....
ホワイティの存在感と同期しているように、乾燥してる空気感。この辺りが監督の得意としているところで、やはり...たまらなく好物でした。
しかしながら、この映画には奥行きというものが、全く感じられませんでした。
その一番の要因が、組織の大きさや、立場に変化があるように見えない事だと考えます。
最初から全く'地元の有力なチンピラ'程度には全く見えません。
ある出来事毎には内面的な変化は見えるのだが、それがストーリーの変化にはつながっていかないように見えるのが、本当に残念...
もう一つ乗り切れなかったのは、登場人物が多い、あっさり退場、後から名前だけ登場するという場面が何度かあり、話について行けませんでした...
しかしながら、ホワイティのキャラクターと乾いた質感は、劇場で観るのに十分すぎる価値があります!
ぜひ劇場で翻弄されるべし!
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