『ボーダーライン』

~あらすじ~
優秀なFBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は、メキシコ麻薬カルテルの全滅を目的とした部隊に入り、特別捜査官(ジョシュ・ブローリン)のもとで極秘任務に就く。ケイトは早速、謎めいたコロンビア人(ベニチオ・デル・トロ)と共に国境付近の捜査を開始。人が次々と亡くなる現実を突きつけられたケイトは……。
(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆☆(75/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『プリズナーズ』『灼熱の塊』、『複製された男』
驚くほど様々な手法で、いずれも人間の内面のおどろおどろしさを描き出してきた、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の最新作!
という事でめちゃくちゃ楽しみにしていたのですが...
これが、やはり期待を裏切らず、サスペンスフルで人間の不穏さに満ちた、素晴らしい作品でした!
原題はsicario。スペイン語で殺し屋。
この意味は作品の終盤で明らかに。
放題の「ボーダーライン」ですが、こちらの方がより作品のテーマをストレートに言い当てています。
誘拐事件の捜査をしていたエミリー・ブラント演じる優秀なFBI捜査官のケイト。
人質が大量に殺害されている残虐な現場での捜査中、追い打ちをかけるように現場で爆発が起こり捜査員を失います。
リーガルな正義を信じるケイトですが、無力を突きつけられ...
そんな中、誘拐事件を首謀した麻薬カルテルの全滅を試みるグループに抜擢され、物語が動き出します。
行き来するメキシコとの国境。
眼前に広がるのは暴力と死。
高架にぶら下がる、身体の一部を切り取られた無数の死体。
サッカーをする少年達の近くで鳴る、日常の銃声。
こんな地獄のような現実。
これがこの映画の背景に過ぎないのです。
麻薬カルテル対策チームに合流したケイトですが、自分の役割が分からないまま作戦が進行していきます。
もちろん分からないのは我々、観客も同じ。
そんな中、明らかにこちら側の正義に属さないオーラを放つ、ベニチオ・デル・トロ演じる謎の男。(彼の存在感だけで、お腹いっぱい!)
彼が何者で、このチームの本当の所の作戦は何なのか...
作品の進んでいる方向が分からなければ、どうでも良くなっていくものですが、
今作はむしろ逆なんです。
突如何が起こっても、おかしくない。
突如どんな行動をとってもおかしくない。
そんな状況に放り投げられます。
舞台の背景や、分からなさ、そして絶妙な音響効果が、サスペンスフルに緊張感を持続させます。
そしてこの映画の最大の魅力は、良質なフィルム・ノワールである事です。
ある運命の人物(ファム・ファタール)との出会いで、知らなければよかった社会の闇を知り...
踏み入れたが最後、ずぶずぶと足を進めてしまいます。
彼女が信じるリーガルな正義。
しかしアメリカとメキシコのボーダーライン(国境)で、目にするのは死と隣り合わせの違法な捜査。
明らかになっていく事実は、彼女の正義とは相反する正義。
あってないような交戦規定。
途方も無い現実を前に、自分の「正義」や「信念」なんて脆いもの。
貫きたくても、貫けない物かもしれません...
彼女が自ら超えたのはどの瞬間なんでしょうか?
そして、ある人物にとっての正義に、誰もが決して否定など出来ないはず...
人生を尽くしてきた、
「これが俺の正義だ!!!」
一緒に見た人と語りたくなる事は間違いなし。
それでいて、エンターテイメントとして普通に面白いので、是非劇場で見て下さい!
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