新世代の子育て映画!!
『チャッピー』

~あらすじ~
舞台は南アフリカ ヨハネスブルク。警察は頻発する強盗や殺人に対抗すべく、自律型警察ロボのスカウトロボを投入し、効果が出つつあった。しかし、スカウトロボの開発者ディオン(デーヴ・バテル)は満足せず、更にロボットに意識を持たせる研究を自宅で密かに進めていた。そんな中、彼はついに意識の元の「想像的現象」をもたらすプログラムを完成させる。
会社からロボットに意識を持たせる事を反対された上、地元のチンビラ集団に誘拐される。そこでニンジャ(ニンジャ)とヨーランディ(ヨーランディ)の前で、スカウトロボにプログラムを埋め込む事に....
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(70/100)
《冒頭とエンディングの熱量、テンション最高!!》
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
~ヨハネスブルクに帰ってきた男~
監督は、『第9地区』や『エリジウム』でおなじみ、ヨハネスブルク出身のニール・ブロムカンプ。
第9地区では、「差別」の本質をとんでもない角度から映し出し、容赦ないエグい描写やPOV映像を交えて、けた外れの驚きを与え、
2作目のエリジウムではハリウッドのバジェット感の中にとブロムカンプ節を交えて、しっかりとしたエンターテイメントを見せてくれた。
そんなニール・ブロムカンプ監督の魅力のひとつが、
キャラクターの置き方やガジェット感!
特に第9地区で出てきた、エビ。
趣味悪すぎでしょ。(褒めてます)
今作もやはりニール・ブロムカンプ。
サイコーなんです。
今回抜群の存在感を放つのが、チャッピーのパパになるニンジャとママになるヨーランディ。
発言からしてとにかく民度が低く、ヒップホップを鳴らして誘拐ばかりしては、ほんまもんの悪に金かえさねぇとぶっ殺すと脅されたり、自律型のロボットもテレビと同じだー!とリモコンを奪いに誘拐にいったり、テンションと書いたダブダブズボンを履いていたりと、バカなヤンキーカップルっぷりがたまらない。
なんとそんな彼ら、実は南アフリカの現役のヒップホップアーティスト。
本作見終えた後に調べると、チン◯ンに「なにみてんだ!」というタトゥー彫ってたりと
どうやら、本当にそんな奴らみたい。(言い過ぎ!?)
ただ、劇中で流れる彼らの音楽はサイコーで、チャッピーが暴走するのと相まって、これはまじで上がります!!
また、ガジェット的な楽しさも最高。
チャッピーの発展途上感と先進感の融合した、ダサ活かすフォルムは言うまでもなく、
序盤のスカウトロボの初戦闘シーンがたまらん!
上から集団で登場!からのギャング団に一斉射撃は、そこだけでお腹いっぱい。
それに明らかに『ロボコップ』を意識した、MOOSEの見せ方もわかってるー!
~子育て映画~
チャッピーが、ママとパパの元に来た時、言い換えると、スタウトロボに意識が芽生えた時は、全く言葉も話せず、見るもの全てに怯えている。人間の赤ちゃん、更に言えば捨てられた仔犬のよう。純粋無垢そのもの。
そこから、母親の愛と、父親の弱肉強食精神の元、人の真似をする所から、文字通りムクムクと成長していく。
そんな中で強盗ロボにしたいニンジャがチャッピーに与える試練たるや....まじでひどい。ひどすぎる。
その後訪れる、
母親の愛に甘える幼少時代。
そして、悪に憧れる中二時代。
どんどん悪びれていくチャッピーは、反抗期に悪い近所のお兄さんに憧れる、あの感じ。
見終わった後にふつふつと湧いてくる、「あの頃のあいつ、まじサイコーだったな!!!」感がたまらない。
そして、そんな家族関係がもたらす物語の結末。
論理など飛び越えた、第9地区とかぶる胸熱で最高なハイテンションな展開は是非劇場で観て欲しい。
~生きたい~
父の言動を真似し、悪びれていくチャッピーだが、
創造主のディオンは、産まれてきたばかりのチャッピーに言う。
「絶対に犯罪だけは犯すな」
父親のニンジャには
「生きるためには強くならなければならない、生きる為に強盗をする。」
と教えられていたチャッピーだが、創造主の教えは破れない。
成長するにつれて強くなる人間らしい「生きたい」という気持ち。
しかし、チャッピーは「数日しか生きられない」事を知る....
最初はニンジャに騙されて窃盗に手を貸すチャッピーも、生きたいという人間らしい気持ちが暴力へのハードルを下げていく....
絶対にダメという犯罪。しかし、生きる為に現実がそれを許さなければ?
ましてや、その環境が産まれながらの当たり前であれば?
さらりと、生きたいが生む現実を突きつけられる。
恐ろしや....
~突き放した視点~
上で感じた点もそうだが、この監督の突き放した視点が憎い。
人工知能に対する知見もそう。
過去の科学技術がそうであったように、人工知能が完成すると恩恵を受ける一方で、必ずしも世の中ぎ良い方向に進むとは限らない。
ブロンカンプの映画には、この良し悪しは度外視する。良し悪しに関わらず、「科学技術は発展していく」という、善悪を突き放した視点で描かれるのが実に品が良い。
社会的に見ると明らかに悪である、ニンジャとヨーランド。しかし、彼らは悪としては描かれない。
そんな「こういう状態になれば、こうなるよね」という善悪を突き放した視点だからこそ、自ずとその先にある、もっと普遍的な何かが見えてくる。
~ちょっとした不満点~
冒頭からの熱量が最高だったのに関わらず、「意識」の開発や暴力に戸惑うチャッピー、暴力への否定を疑問に思い始める辺りは、熱量がトーンダウンする。ハンスジマーの壮大な感動的な音楽も乗ってきたりする。
そうすると、この無理矢理運んでいる展開を、どういう理論で...と頭で考えてしまう。より頭で考えてはいけない所で。もう、少し振り切って欲しかったなって印象。
また、急に変化(成長)するチャッピーも、人間味を感じさせかどうかという意味では残念。
徐々にかつ、滑らかで迅速に変化していく映像的な気持ち良さを感じさせて欲しかった。
後、最後の街放置....
ただ、こんな不満も見終わっては、「あの頃のあいつ最高だったなー!!」で全て忘れる!
しかも舞台は来年。急に誰かが人工知能を開発しちゃった世界。妙にリアルな世界観。
是非、熱量抜群の冒頭と結末、突き放した世界観、あの頃のあいつ萌えを劇場で観るべし!
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