9年ぶりのシリーズ最新作。
『ジェイソン・ボーン』

~あらすじ~
ひっそりと暮らしていたジェイソン・ボーン(マット・デイモン)の前に、CIAの同僚だったニッキー(ジュリア・スタイルズ)が姿を現す。彼女はCIAが世界中を監視・操作するための極秘プログラムを立ち上げたことと、ボーンの過去にまつわるある真実を告げる。これをきっかけに、再び動き始めたボーンの追跡を任されたCIAエージェントのリー(アリシア・ヴィキャンデル)は、彼を組織に取り込もうとするが……。
(シネマトゥデイ 引用)
☆☆☆☆☆☆☆(75/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
ボーン三部作『ボーン・アイデンティティ』、『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』から9年。
ついに帰ってきた、ジェイソン・ボーンことマットデイモン。
そして監督には、シリーズを加速度的に面白くした『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』で、監督を務めたポール・グリーングラス。
こちらも、待ってました!
近年のアクション映画の在り方を良い意味でも、悪い意味でも変えたのが、このグリーングラス以後のボーンシリーズ。
その最たる特徴が、カメラワークとカット数。
それまでのアクション映画は、1000カット程度が普通とされていた中、『ボーン・スプレマシー』では数える事なんと4000カット以上...
手持ちカメラとハイテンポなカットで、映像を目まぐるしく変化させ、作品の中にある意味ドキュメンタリーチックにも見える程の臨場感や不安感を作り出します。
この手法は、96時間を始めとする、その後のハリウッドやヨーロッパ発のアクション映画に多大な影響を及ぼしましたが、実はこの手法は諸刃の剣。
臨場感を作り出しやすい一方で、チャカチャカアクションなんて揶揄されるように、整理して見せないと何が起こっているのかさっぱりに...
状況把握が出来ない上、映像アクションがもつ本来の動的なかっこよさすらも取り逃がしてしまいます。
グリーングラス自身もグリーンゾーンでは失敗してますし、96時間の続編なんかは何が何だか分からない映像ばかり見せられます。
しかし!
今作はやはりグリーングラス!
体調次第では酔ってしまうくらい、映像が動くのですが、しっかりと見やすく整理されています。
アクションの内容も多彩。
まさしく、ボーンシリーズのフルコース。
かといって、情報てんこ盛りの食べ放題アクションではありません。
アクションの連続がストーリーを紡いでいる事。
それらの要素一つ一つが、しっかりと楽しい要素を含んでいる事。
これら良質なアクション映画である必要条件が完璧に抑えられているからこそ、緊迫感が持続...いやいや、どんどん高揚し引き込まれて行きます。
ベルリンからラストまでの1時間は、ほとんどがアクションなのに、その多様な連続性にやられてしまいました。
これぞボーンシリーズ!なアクション満載ですが、現代の技術背景を含み、9年ぶりだからこそ出来る見事なアップデートがなされています。
ボーンシリーズお馴染み、待ってました!の、すれ違いアクションや人混みを活かした逃走劇。
ラストのカーチェイスの一部も、『ボーン・スプレマシー』の伝説シーンからの引用。
ああ、やっばりこの人分かってるな!
そして極めつけは、笑っちゃうくらいフレッシュなアクションもあります。
SWATハンパねぇ。
もちろんアクションだけではありません。
人物同士の対立軸がちゃんと立っているからこそ、見応えも。
特に今回のCIAが送り込む殺し屋(ヴァンサン・カッセル!)は、ボーンシリーズ過去最高最恐クラス。
それでいて、ボーンとは因縁が...
どちらかは死なないと決して終わらない予感。
こんな男臭全開の軸がたまりませんでした。
アリシア・ヴィキャンデルの役どころも素晴らしいかったです。
(というより、最高にかわいい。。。)
単なるヒロインに終わらない含み。
次作もあるとすれば、ラストに見せた決して語りすぎない彼女のそれが、ポイントになってくるはずです。
「CIAが世界中の情報を監視し、裏で操作することを目的とした恐ろしいプログラムが始動した」
新たな立ち向かう問題が始まる。
そういう意味での、今作は新章と位置づけられているのでしょう。
今作は、格段に進歩した科学技術はもちろん、移民問題やギリシャ危機、そして最も明らさまなスノーデンの告発など、様々な現代社会の問題をバックグラウンドになっています。
アクションの巧みさもさる事ながら、こっちこそがグリーングラスの作家性。
現代社会の影をテーマとしながら、エンターテイメントに仕上げるのが抜群なのです!
アクション映画としては、めちゃくちゃ面白い。
しかし、見終えた後では旧三部作の蛇足という印象だけが残っていました。
今までのボーンシリーズの最大の魅力、分からない事だらけだけど追われている...逆に懲らしめてやった物としては...
この話、正直必要でしょうか??
ボーンの新たに判明した過去が、どう見ても後から付けたものにしか見えません。
そもそも、今回の最大の問題とボーンの目的が直線上にありません。
少なくとも過去作は、自身の過去を探る事が、CIAの「自身の過去に関わる」非人道的な面を掘り起こしていました。
今作のジェイソン・ボーンの目的は復讐。
しかし、物語の一番の問題は、現実社会でも起こりうる、情報操作や行き過ぎたナショナリズム。
ボーンの復讐とは一致しない故に、お話がどこに向かってるかわからなくなっています。
ボーンがとってつけた過去を追うと、全然関係ない問題が解決した...
一体何の話を見てたのだろうと。
とはいえ、自身の謎を追い、自由を手に入れるという旧三部作のボーンの目的、シリーズの魅力を含めつつ、新たな問題に舵を切る為には、必要な繋ぎだったのかもしれません。
立ち向かう新たな目的が次作以降生まれさえすれば、アクションの気持ちよさをストーリーが更に加速してくれるはずです!
少なくとも、アクション映画としては間違いのないクオリティなので、是非劇場へ行ってください!
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