そんな優しくて熱い愛。
邦画豊作年の中で、ぶっちぎりベスト!
『湯を沸かすほどの熱い愛』

~あらすじ~
1年前、あるじの一浩(オダギリジョー)が家を出て行って以来銭湯・幸の湯は閉まったままだったが、双葉(宮沢りえ)と安澄(杉咲花)母娘は二人で頑張ってきた。だがある日、いつも元気な双葉がパート先で急に倒れ、精密検査の結果末期ガンを告知される。気丈な彼女は残された時間を使い、生きているうちにやるべきことを着実にやり遂げようとする。
(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆(90/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
東京国際映画祭で大量の映画を鑑賞し、面白い映画って何だろ...ってよく分からなくなっているモードの中で鑑賞。
面白い映画はやはり面白かった!!(何当たり前の事言ってんだって感じですが...)
これだから映画はやめられない。
『チチを撮りに』などの中野量太が、商業映画デビューにして監督と脚本を担当。
家族や人の繋がりを自らのテーマとする、今最注目すべき監督だと、今作を見て確信しました。
そして、宮沢りえや杉咲花、オダギリジョー、松坂桃李らによるアンサンブルも必見です。
「闘病と家族の絆」
あらすじやポスターから感じる印象だけでは、普段ならスルーをしている類の映画です。
あまりの好評に吊られて鑑賞してみたが最後、ありふれた「闘病と家族の絆」モノに一線を画する熱さに、見終えた後も数日は心地よくてたまりませんでした。
この映画には、いわゆるなこういう映画の大半を占める、主人公が病気と戦うその裏で家族が再生していく要素は、ごく僅かでしかありません。
主軸は、病気になっても尚の母としての強さ(そしてその奥に見え隠れする弱さ...)です。
いくつかのショートストーリーの組み合わせから出来ています。
宮沢りえ演じる母の双葉は、ある日末期癌により余命僅かの宣告を受けます。
学校で受ける嫌がらせに対して、優しすぎるゆえ反抗できない娘の安澄。
昔の愛人が子供を授かっていた事がわかり、育てる為に家を出た人でなし、夫の一浩。
その一浩と他の男の元に逃げ出した元愛人の子供で、居場所のない9歳の鮎子。
母・双葉は、休業中の温泉を再開し、彼らと向き合いながら、母としての最後の役割を全うしていきます。
一人一人と向き合うため、一見すると詰め込み過ぎにも感じるのですが、それら一つ一つが本当に丁寧に人物像を作っていきます。
そして、向き合う事で明らかになっていく事実が更に加わって重なり合う事で、何重もの熱い熱い愛情が最後に作品中を覆っていきます。
125分という上映時間の中で、何度泣いた事が...
その場その場の、彼らの悲しさをそのまま伝えて泣かしにくる訳ではありません。
その時々の映像はきっかけにすぎず、それらが何気ない過去のシーン...何ならその時の登場人物の感情すらも含めて思いおこされ、つい...思わず泣いてしまう。
死の悲しさではなく、彼女の生きた証や願いに泣かされるように。
各所に細かい伏線を張り巡らし、それらを見事に複雑に絡めながら巻き取る圧巻の脚本。
絡まって、絡まって、絡まって、泣けてしまう...
思えば、冒頭から気の利かせ方が秀逸です。
『湯気のごとく店主が蒸発したため、休業中です』という絶妙の掴み。
極め付けは、エンディング。
タイトルの意味がようやくわかるあるシーンは、普通ならモラル的に物議をかもす...というか完全アウトな展開なんですが、これまでの熱い愛があったからこそ強烈な愛に対するアンサーとして、更に熱くぶつかってきます。
冒頭との対比的な見せ方で締められる締め方含め、脚本の妙と丁寧な演出は、何度泣かせるつもりなんだろう...
少し中盤で違和感を感じてしまったのが、立ち向かう事の押しつけが、ある意味「正しさによる暴力」と言えなくもない所。
確かに、「逃げない選択肢は与えない」事によるその先の転末は結果オーライかもしれない。
しかし、余命僅かだからこその必死さとして受け取れるし、むしら人間臭さ、弱さに感じ取れる。
また、後半で明らかになるある展開で、「それなのに...!」と更に愛を強烈に感じさせる結果になる為、最終的にはその違和感など全く気になりませんでした。
本当にこういう映画が売れてほしい...
劇押しの一本です。
是非、絶対映画館で見てください!!
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