天才映画人 グサヴィエ・ドラン監督最新作。
『たかが世界の終わり』

~あらすじ~
劇作家として成功したルイ(ギャスパー・ウリエル)は、家族に自分の死が近いことを伝えるために12年ぶりに里帰りする。母マルティーヌ(ナタリー・バイ)は息子の好物をテーブルに並べ、幼少期に会ったきりの兄の顔が浮かばない妹シュザンヌ(レア・セドゥ)もソワソワして待っていた。さらに兄アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)とその妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)も同席していて……。
(シネマトゥデイ 引用)
☆☆☆☆☆☆☆(75/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
20歳で『マイ・マザー』を製作、監督、脚本、主演を務めて世界デビュー。
23歳で『わたしはロランス』がカンヌある視点部門でクィア・パルムを受賞。
25歳で『mommy』がカンヌ審査員賞を受賞。
そしてついに27歳にして、今作でカンヌで二番目の賞に当たるグランプリを受賞した、グサディエ・ドラン!
今、この人を差し置いて天才と呼べる映画人はいないのではないでしょうか...
前衛的に見える映像や音楽、ストーリー設定をたかが手段として活用し、普遍的な本質をあぶり出してくるのがグサディエ・ドラン流。
しかし、今作は過去のひねり技は一切封印。
家族の物語として一点突破を仕掛けてきます。
いやだからこそ、シンプル化した手法の中で余計に、凝縮したドラン監督のスキルと経験が垣間見れる、そんな新鋭監督集大成の作品になっています!
12年ぶりに故郷に帰る、劇作家のルイ。
目的は「自らの死を告げる」こと。
こんな衝撃的な内容なんですが、この映画はとにかく語らない。
何故ルイは家を飛び出したのか。
13年も空白を生むまでには、相当なストーリーがあるはず。
そして、13年間をどのように過ごし、何故死に至る状態になったのか...
それらへの「説明」は一切ありません。
あるのは会話の応酬、ぶつかり合い、ぎこちない空気...
空白を鑑賞者に埋めさせる、過不足ない...いや若干不足する情報量。
アップ多様なカメラワークで捉えられる、僅かな表情の変化さえも、観る者は拾い上げます。
この想像で埋める空白と、空間を圧迫するカメラワークが、なんとも言えない「いや~な感じ」を作り出します。
冒頭に、一点突破だなんて書きましたが、その「家族」の中には無数のテーマがあるはずです。
情緒の安定しない母、すぐに突っかかる兄、愛情と恨みを持つ妹。
彼らとの物語は明確には語られないのだから、文字になど到底起こしきれない。
ですが、一人一人のやりきれなさは、生々しい人間のそれで、十二分に伝わってきます。
対立が顕著な兄にしても、辛うじて辛うじてある絆を、どこか信じていたり...
だからこそ....ああ、苦しい...
甘えも厳しさも、他人に対する物とはまるっきし違う..
家族という枠組みの特殊さを、見終えた後にはどうしても考えてしまいます。
過去作に比べると...なんて言われる事もありますが、十二分に見応えがあります!
オススメ!
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