人気漫画の実写映画化。
『3月のライオン 前編』

~あらすじ~
幼少期に交通事故で両親と妹を亡くした17歳のプロ棋士、桐山零(神木隆之介)。父の友人である棋士・幸田柾近(豊川悦司)に引き取られるが、そこから離れざるを得なくなってしまう。以来、東京の下町で一人暮らしをする彼だったが、川向こうに暮らす川本家の3姉妹のもとで一緒に食事をするように。彼女たちとの触れ合いを支えにする桐山だったが……。
(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆(75/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
マンガ大賞など、数々の賞を受賞している羽海野チカさん原作漫画の実写映画化。
の、前編!
漫画の6巻付近までの映像化になります。
原作は、映画鑑賞後にこの付近まで読んでみましたが、軽いタッチなんだけど、心理描写に重きを置いている、非常に面白い将棋青春漫画でした。
近年の、マイナースポーツ?×青春物といえば、『ちはやふる』に『ウォーターボーイズ』、『書道ガールズ』、『ピンポン』と邦画の1大ジャンルになっている感はありますが、今回はなんたって『将棋』。
流石にちょっと地味なんでは?と感じていましたが、決してそんな事はない。
監督が画力に定評のある『るろうに剣心』や『ミュージアム』の大友啓史監督だけあって、
その対局シーンこそが最高で、間違いなく今作最大の魅力になっています。
将棋の知識に関係なく、対局シーンの、一戦の重み、緊迫感と臨場感に誰しもが大満足と断言できます!
主人公の零を演じる神木隆之介はもちろん、越えるべき壁となる伊藤英明や佐々木蔵之介、奥野瑛太らの顔力、そしてそれらをダイナミックに捉える大友監督の画力に、圧倒されます。
そしてその対局シーンが単発で終わらずにキャラクターの深みを作り、ドラマパートの質をぐっと押し上げています。
幼くして両親を失い、将棋一家の養子になった主人公の零。
しかしある事情から家出。何もない部屋で、将棋に打ち込む日々。
そんな彼が、養父であり師匠の幸田とリーグ戦で対局するシーンから物語は動き出します。
きっつい状況なのは、想像するに容易いのですが、後からその重みをどんどん膨らませていくのが、この映画の特殊さ。
「将棋しか俺にはない...」
零がそう感じるようになった理由が、ストーリーに重ねて回想が少しずつ出くる事で、途方もない孤独さや、父親への勝利の意味が幾重にも膨れ上がります。
まるで親を、そして自分の居場所を刺し殺しているような...
この構成は全編にわたって見受けられ、ステレオタイプ過ぎるだろと思っていたライバルの二階堂(染谷将太)や最低野郎の後藤(伊藤英明)も後からキャラクターの深みが浮き彫りになります。
「誰しもに対局の向こうに人生がある。」
そんな零の気づき、成長を追体験しているように。
原作では、近所に住む川本家でのコミカルなやり取りや、セリフの応酬がなんとも温かく、「でも...」という思考が深みを与えていた上、孤独な零の成長物語としてのロジックになっていました。
しかし、今作はコメディ要素は結構控えめになっています。
その部分での物足りなさはあるのですが、漫画では出せない重厚な対局シーンが「キャラクターを語る」という点で機能している為、下手にコミカルな要素は入れなくて良かったのかもしれません。
原作に比べるとかなり重めな青春映画になっていますが、これはこれで全然良い!
だからこそ...
染谷将太演じる二階堂の...特に後半の対局裏でのシーンは...テンションからかなり浮いてしまっていて、勿体無い....
また、棋士としての、人間としての成長が「心の声」とは、あまりに漫画的で、少しやってしまったなと。
「将棋しか俺にはない...けど、後ろには!!」というのを、観ている観客だけでなく、零本人にも伝わる映画的なシーケンスがあれば、何も文句無く楽しめたかもしれません...
ともあれ、対局シーンを中心に据えた、見応え充分な青春将棋映画、オススメです!!
是非劇場で!!
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